不動産トピックス

クローズアップ 置き配編

2023.01.23 10:27

 コロナ禍による宅配の利用拡大、配達員不足による配達日時指定サービスの停止などが、「宅配ボックス」や「置き配」の普及を推し進めている。特に住宅物件では、ソフト・ハード両面での対応が必須だ。

「スマート置き配」申込み棟数、一都三県で4000棟突破 必須の物流サービスへ
 不動産ソリューションを展開するライナフ(東京都文京区)は、同社のサービス「スマート置き配」の申込み棟数が一都三県で4000棟を突破したと1月10日、発表した。
 「スマート置き配」はオートロック付きマンションのエントランスに、専用のスマートロック「NinjaEntrance(ニンジャエントランス)」を設置することで、配達員が部屋の前など、受取側があらかじめ指定した場所に荷物を届けることができるというもの。認証された配達員のみが入館できる仕組みで、「スマート置き配」のエントランスの解錠履歴は全て記録される。
 オーナーや管理組合、管理会社は、初期費用から工事費用、月額費用など無料で導入できる。理由は、同社が配送会社と提携することで可能となる。サービスを手掛けた背景は、再配達の削減や誤配、宅配ボックスへの無理な詰め込みなどトラブルの削減対策だという。
 ネットショッピングの利用率が高まる中、宅配物は増加の一途をたどっており、国土交通省「宅配便取扱実績」によると、2021年の宅配便個数は、前年比2・4%増の49・5億万個に及ぶ。しかし、宅配ボックスを導入するためには費用や設置スペースが必要なことから進まないケースが多い。滝沢潔社長は「ECサイトの利用は今後さらに増加すると見込まれている。しかし荷物を受け取る側も忙しく、再配達が避けられないのが現状だ。再配達という、無駄があらゆるコストを押し上げている。そのため置き配は社会に必須の物流サービスになると確信している」と述べる。
 一方、「スマート置き配」を導入した管理会社、合人社計画研究所(広島市)は「『置き配』は、コロナ禍で常識となり、老若男女問わず幅広い層のマンション居住者からニーズがある。管理組合としても設備投資の伴うハード面を検討する前に、『置き配』を導入することが居住者の顧客満足度向上に繋がると感じている」とコメントしている。また、東急住宅リース(東京都新宿区)は「設置の問題や、コスト負担もないため付加価値向上策の一つとして、オーナーへ提案する機会が増えている。導入物件の入居者様からは、宅配ボックスに関する問い合わせが少なくなった」と話す。
 スマートロックで一世風靡したライナフは、不動産管理システムなどAI、IoT技術を活用したサービスを展開している。これまでVCなどから10億円以上資金調達している。

冷凍・冷蔵品無人受け取りの実証実験 地場の生産者・小売業者の新たな販売機会にも
 パナソニック産機システムズ(東京都墨田区)は2022年10月3日から、神奈川県藤沢市の「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン」をはじめとした3カ所で、「受け取り用冷凍・冷蔵ロッカー」を用いた、既築のマンション・住宅団地向けの無人受け取りサービスの実証実験を実施している。
 実験では、生産業事業者や小売事業者が扱う地産の新鮮な農作物・海産物を直接ロッカーへ届けるサービスと、宅配事業者が再配達時にロッカーに届けるサービスの2種類を提供。利用者は24時間、配達員と非対面で冷凍・冷蔵品を受け取ることが可能になる。設置後の再配達率や居住者の満足度などを調査し、サービスの利便性を検証する予定。
 ロッカーの設置場所は、パナソニックグループが代表幹事を務める「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」、「Tsunashima サスティナブル・スマートタウン」内の「プラウド綱島SST」、「プラウドシティ日吉」の3カ所。理解を深め、魅力を伝える機会として参加事業者によるマルシェの開催も予定している。
 今回の実証実験には、神奈川県の生産事業者や全国の食料品小売事業者など計49社が賛同・協力している。冷凍・冷蔵ロッカーで受け取り可能な事業者として各地域の居住者に紹介することで、一次産業事業者の新たな販売機会の創出と生産品の売り残しによる食品廃棄ロス低減に貢献することも目的の一つ。マルシェでは事業者と地域住民とを繋げ、商品の魅力を居住者にリアルに伝えるとともに、ロッカーの利用促進に繋げていく。

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