不動産トピックス

第20回不動産ソリューションフェア 人気セミナー紙上再現

2018.12.17 11:04

耐震パネルディスカッション「政策から考察する今後の不動産経営 フローからストック」へ

耐震診断の報告が義務化 旧耐震・新耐震でも築古の物件はファイナンスは受けづらい

 オフィスビルや商業ビル、戸建て住宅、分譲マンション、賃貸住宅等のどの物件においても耐震改修は重要である。だが不動産業界において中々上手くいかないのも現状大きな課題だ。今回はその様な課題を、土地の有効活用や資産運用などに至るまで話し合った、パネルディスカッションにフォーカスする。

資産ストックをどの様に生かしていけば良いのか
稲本 不動産といってもオフィスビルをはじめ、商業ビル、戸建て住宅、分譲マンション、賃貸住宅等もございます。範囲も広く、いわゆる土地の有効活用や資産運用、また相続まで広範囲に及ぶ言葉です。そこで当パネルディスカッションではテーマとしてフローからストックへと掲げているので、商業用ビルや賃貸住宅にフォーカスして話を進めていきます。
中田 資産ストックをどの様に生かしていけば良いのか、国としてもインフラだけではなく民間のビル、あるいは賃貸住宅の安全建築確認を行いながら、この2、3年取り組んで来ました。一方で不動産業界に置ける重要課題の「空き家」をどうやって生かすのか、経営していただくか、ということが高齢社会ひいては、人口減少社会の中で欠かせない問題です。また不動産オーナーは御存じかもしれませんが、従来までのような机の配置や人の動かし方だと特に若年層は旧型の企業に集まらないです。今のネット社会の中で「職場環境として本当に十分か?」、また共働きの中で「子育ての支援施設・サービスを本当にどう確保しているのか?」ということに目を配りながらでないと事業そのものがまわっていかないという課題も聞いております。働く場所や働く時間が今までの制約から解放された方が生活や仕事で充実したライフスタイルを送れるような環境を提供していくということが大事になっているんだと思っております。
城野 私からは「フラット35」と言う長期固定金利の住宅固定金利について語ります。少し年代の人は昔の住宅金融公庫と申し上げた方がおなじみです。平成19年に現在の組織になり、民間金融機関の資金調達の支援や民間融資の保管をしながら金融という手法で国の住生活の向上に貢献してきました。また「フラット35」の他にも政策上重要で民間金融機関では対応が難しい分野については、直接に融資も行っております。こちらが私どもが融資を行っているもので、特に賃貸融資のメニューになります。ストック活用という観点から申しますと、リフォーム融資ということでそれぞれ政策分野ごとにございます。例えば「サービス付の高齢者向け住宅へのコンバージョン」、「省エネ改修」、「住宅セーフティネット」、あるいは「耐震改修」といったメニューがございます。賃貸住宅の一棟買いについて「融資の対象にならないんですか」とよくお問い合わせ頂くのですが、ストック活用と申しましても一棟買いの場合は直接住宅の質向上に繋がらないので、私どもでは融資の対象にしておりません。また住宅以外の分野。例えば「簡易宿舎」、「グループホーム」については私どもの取扱分野ではないということです。
耐震改修やリノベーション予算に伴う所で提案
阿部 レトロフィットジャパン協会は「建物に関する安全面の確保」、「投資の観点」と両面からオーナーにコンサルティングさせて頂きながら所有している工法も活用して、ベストとまでは言えませんがベターに近い形で「耐震改修」及び「最低限のリフォーム」、更には「リノベーション」をパッケージで予算に伴う所で折り合いを付けながら提案している団体です。法律の背景について少し説明させて頂きます。宅建業法の改正に伴い重要説明事項においては、昭和56年5月末以前に新築に着手、もしくは確認については検査済書で判断する対象でございます。また耐震診断を行った場合に、その内容について説明しなければいけません。昭和56年の建築基準法改正において、新耐震基準が導入され、旧耐震の建物に耐震診断を行うと実は旧基準の該当建物でございますので耐震仕様のIS値で示した場合目標0・6に対して下回る結果が多く出てきます。その中で構造基準が満たされていないことで不動産における売買、交換、賃貸においてマイナス評価になる。そういったものが背景的なものであります。更に「阪神淡路大震災」の時の平成7年に制定された「耐震改修促進法」では、東日本大震災後の平成25年に改正されたものも含めて不特定多数の人や避難弱者の利用する大規模建築物、避難道路の沿道建築物などに対し耐震診断の報告が義務化されて公表されています。これが法的な背景です。耐震改修は費用が掛かる、投資事業の観点を持っているのでそういった面ではファイナンスのところと非常に大きな部分と捉えています。更に建物に関する価値というものは「減価償却法」で定めているような、木造で言えば47年、鉄骨では34年、鉄筋コンクリート構造であると47年と償却法の考え方を金融機関もそれに応じた形で対応しております。ですが旧耐震、更にはそれに近い新耐震の築古物件の場合は、その年数を超過することになると、ファイナンスは受けづらいと言う状況です。耐震診断を行って、意匠を調整した形で耐震改修設計も行って工事予算を定めて融資の申し込みをされることがどの金融機関も考えられると思うのですが、実際には実務的なスケジュールで6カ月以上経過したり、耐震改修案が出た際に意匠面や空調設備もろもろの調整等で、その建物に対する投資基準である設定金額ライン、更には収益関係を悪化させないそういった観点からの耐震改修含めた改修工事が中々備わってないというのが、東京都心を含めた全国的な不動産オーナーが悩んでおられる一番難しい問題と捉えております。ストックの価値を損なわずに、かつ耐震補強を行うことは非常に難しいですが、今後は重要です。

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