不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2017.10.09 14:32

アパホテル FC加盟店が増加
 「新都市型ホテル」をコンセプトに、全国展開を進めているアパホテル(東京都港区)は、グループ連結で年間売上高1105億円、経常利益338億円、経常利益率30・5%を突破する日本でもトップクラスのホテルチェーンだ。同社は近年、直営店舗だけでなく、パートナーホテル・フランチャイズ(FC)とネットワークを拡大している。特にFCは2011年9月の開始以来、今年6月までに47ホテル6236室が参加するなど急増しているという。

フランチャイズ説明会10月26日に開催
 去る8月24日、同社セミナー室にて、「第2回アパホテルズ&リゾーツ フランチャイズ説明会」が開催された。
 これは、6月に続くもので、全国から既存ホテルオーナー・新規参入を考えている企業・投資家など約50名が参加した。
 当日は同社の販売戦略・加盟店のメリットの実績・加盟条件・加盟店オーナーインタビュー・個別相談などが行われた。同社では好評を受け、定期的に開催していく計画で、第3回は10月26日(木)を予定している。
 独立系ホテルや投資家など、同社のフランチャイズ事業に関心を持つ事業者は多い。同社のブランド力と運営力に期待が高まっているのだ。
 アパホテルFCのメリットは、なによりもアパホテル自体のブランド力にある。8月現在で提携店含んだ運営中の施設は367施設に及び、年間宿泊者数は約1154万人という実績に加え、会員組織であるアパカード会員は1300万に及ぶ。公式サイトによる宿泊者数は140万人という実績がFC店への送客力を高めていく。
 開業後も定期的な支配人会議による情報の共有化、スーパーバイザーによる経営指南、オリジナルフロントシステムなどハード、ソフト面からもバックアップする。
 ロイヤルティは3%、販売促進負担金は1%が基準。
 FC第一号となった「アパホテル<京急蒲田駅前>」(東京都大田区)は、アオキ(神奈川県川崎市)が運営している「櫻楓ホテル蒲田」(東京都大田区)がリブランドしたもの。同ホテルは2008年4月開業で延床面積784・95坪、客室数92室、収容人数116名。
 「このホテルを運営するに当たり、単独ではなくチェーン店との連携を考えました。そこで様々なチェーン店を調べたところ、丁度アパホテルがネットワーク化を図るということで、加盟することにしたのです。当ホテルは、羽田空港に近い立地にあるということで、地方や外国からの集客が多く見込まれます。その際にはアパという全国ブランドが大きな武器になるでしょうし、何よりもカード会員という顧客は集客には大きな魅力です」(アオキ担当者)
 結果、この5年間で、稼働率34%、売り上げに至っては273%アップに成功したという。アオキはこの成果を受けてFCの多店舗化を進めている。
リブランド5年間で売上273%アップ
 一方、「ビジネスホテルアサノ」から2012年に開業した「「アパホテル<高松瓦町>」(香川県高松市)。同ホテルは運営に当たり、ボイラーやフロント周りを改装したほか、客室階の各階に2室ずつと最上階全室の合計20室に、米国大手ベッドメーカーであるシーリー社と共同開発したオリジナルベッド「クラウドフィット」を導入するなど、約2500万円かけてリニューアルを施した。
 その後、60室を83室に増築し、リブランド以降稼働率24%、売り上げ290%アップしたという。
 同ホテルを運営しているアサノビルの浅野直樹社長は、FCに加盟した理由をこう語る。
 「当ホテルの周辺に大手ホテルチェーンが次々と進出し、独立系である当ホテルは非常に厳しい運営を強いられていました。そのため、アパブランドを使って再スタートすることにしたわけです。やはり全国規模で展開しているホテルのブランド力は高いものがあります。FCの前に加盟したパートナーで非常に稼働率が向上しており、より関係を強固にしていこうというわけです。また、現場に即したアドバイスももらえることも大きいものでした」
 地方都市には近年、大手ホテルチェーンの進出が目覚しく、地元の独立系ホテルはますます苦戦を強いられている。このためリニューアルしたくても資金調達がままならないケースも多い。大手ネットワークに加盟することで銀行からの融資もスムースにいく場合もあるという。
 アパホテルのフランチャイズ事業本部長でもある白山剛氏は話す。
 「国内ホテルチェーンの拡大や海外OTAの台頭、民泊事業の参入、進化するIT技術など、ホテル業界を取り巻く環境は激変しています。この変化に対応していかなければ、独立系ホテルが生き残っていくことは困難です。ところが実際は、売り上げの低迷、常連顧客の囲い込み、労働力の確保などによって苦しい経営を余儀なくされているホテルも多い。こうした背景が当社のネットワーク加盟が増えている要因でしょう」
企業の新規事業案件ホテル進出を後押し
 貸し会議室大手TKP(東京都新宿区)。同社は現在、札幌と東京に3店舗を運営しているが、好調を受けて既に3店舗を計画している。
 TKPの第一号店となった「アパホテル〈TKP札幌駅前〉」(北海道札幌市)は、1973年竣工の「チサンイン札幌」を購入し2014年にリブランドオープンしたもの。外壁と防音、エントランス・フロントはもちろん、客室とほぼ全面改装、会議室併設型の「ハイブリッドホテル」というコンセプトで新たにスタートさせた。
 同ホテルは初年度、稼働率73・3%、売り上げ約4億円を記録、3年目には稼働率89%、売り上げ約6億円へと伸長しているという。
 TKPは全国や海外に1300室の会議室・宴会場を運営しており、会議や説明会、各種パーティーなど、月間1万社の企業が利用している。近年は宿泊を伴う研修の需要も拡大している。
 そこで同社は貸会議室事業で培った法人向けのサービスノウハウを活用し、ホテル運営事業という新たな事業領域へ踏み出した。そのサポートとなるのがアパホテルという訳である。
新築案件相談増えるTKP新たに3店舗
 同社のFCは既存施設のリニューアルのみならず、新築案件も増えているという。
 前述のTKPは、2016年12月に新築として「アパホテル〈TKP日暮里駅前〉」(東京都荒川区)をオープンさせた。ホテル規模は15階建て鉄骨造りで、延床面積4326・57㎡に275室の客室を設ける。主にMICE需要・ビジネス用途を見込む。
 建設にあたり、アパグループが企画、デザイン監修を行い、竣工までを全面的にバックアップする。
 全客室にはアパホテルオリジナルベッド「クラウドフィット」と独自設計の卵形浴槽、サーモスタット付定量止水栓、節水シャワーによるエコと快適性を兼ね備えた「アパホテルオリジナルユニットバス」、無料Wi|Fi、50型以上の大型テレビ、LED照明や複層ガラス、遮熱カーテンを導入した。
 同ホテルは現在までに、平均稼働率94・3%、売り上げ高約5億5000万円、ADR8748円だという。
 「アパブランドの力はもちろん、毎月1回の支配人会議によって他店との情報共有化が図れ、現場レベルでのメリットは多い。また、何かあれば本部にすぐ動いてもらえるなど、意思決定が速いのは他チェーンと違うところでしょう」と、TKPの河野光輝社長は話す。
アパホテルでは現在、FCによる新築物件をTKP含めて8店舗が稼働、計画しているという。
 「これまでは既存店舗のリブランドによるFC加盟が多かったのですが、近年は、FC店舗の好調を受けて2棟目、3棟目を建てる企業や、投資家、有休不動産の活用として建てるFC店も目立っています」(白山部長)という。
 アパグループが2015年4月からスタートさせている「SUMMIT 5|2.(頂上戦略)」は、出店を東京都心から地方中核都市へと拡大し、「新都市型ホテル」のコンセプトに2020年3月までにパートナーホテルを含むネットワーク10万室をめざしている。 フランチャイズ加盟メリット (1)ブランディングによるチェーンホテルの知名度 (2)独自のレベニューマネジメントによる高稼働・高単価販売 (3)年間1億8000万PV実績を持つ公式サイトの活用 (4)スーパーバイザーによる運営サポート (5)支配人養成研修・接客研修や毎月の支配人会議 (6)スケールメリットを活かした仕入れコスト削減 (7)オリジナルフロントシステムによるオペレーション

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