不動産トピックス

クローズアップ 光触媒編

2013.03.11 17:04

 太陽光(紫外線)と反応することで、有機物の分解と親水性の発揮という作用が発現し、抗菌・脱臭や空気浄化、汚れ防止など様々な効果が確認されている光触媒。ビルにおいては外壁の美観維持や室内環境改善など幅広い応用が可能で、今後はさらなる活用も可能かもしれない。今回は光触媒を活用した製品をクローズアップする。

ケイミュー 美観を維持できる外壁材
 付着した汚れを太陽光の力で落とし、雨で洗い流すことができる光触媒は、外壁に適した技術といっていいだろう。ケイミュー(大阪市中央区)の「光セラ」は、光触媒コーティングを施した外壁材。長期にわたり外壁の美観を維持すことが可能だ。
 光触媒には、太陽に当たると有機物を分解する「分解力」と、水に馴染みやすくなる「超親水性」の二つのはたらきが起きる。この「分解力」が、車の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)や向上の排煙などに含まれる硫黄酸化物(SOx)などの有害物質を無害なイオンに酸化し、雨と一緒に洗い流す。このはたらきを端的にいえば、「光セラ」に付着した汚れの成分はまず「分解力」のはたらきで分解される。そこに雨などが降りかかると、「超親水性」のはたらきによって水が汚れ成分の下に入り込み、浮き上がらせて洗い流される。汚れの成分は分解された時点で中性となるためほとんど無害となっており、そのまま流しても問題はない。「光セラ」は素材・着色層・セラミックコート・光触媒コーティングの4層構造で、さらにUVカット機能をもつため色あせや日焼けも抑えることができる。高い耐久性と分解力・超親水性の両立を実現した素材といえるだろう。
 また汚れの付きにくい外壁材は、新たなデザインを可能にした。建物との調和もあるが、従来の外壁材は比較的地味な色合いが主流。純白や柄ものなどは維持が困難なこともあり敬遠されがちだが、光触媒を活用すればこうした外壁も長期にわたり維持できる。「光セラ」では白のほか、青空に浮かぶ雲を表現した柄やディズニーキャラクターの柄などもラインアップする。建物の表現力向上にも寄与する外壁材といっていいだろう。

荻野塗料 ガラスコーティングでクリアな視界を確保
 光触媒は、ガラス面においても効果を発揮する。荻野塗料(神奈川県藤沢市)の「クリーンなの工法」は、ガラスを長期にわたりクリーンに保つ技術だ。
 ガラス表面に光触媒酸化チタン膜をコーティングすることで有機物を分解作用と親水性作用が発現され、防汚・防滴・防曇効果を発揮する。そのメカニズムは、まず親水性によりガラス表面が水分で薄く覆われるとともに、有機物も分解されるため汚れが付着しにくくなる。そこへ雨が降ると多量の水分が汚れの下に入り込み、流れ落ちるという仕組み。大きな水滴がガラス表面に残りにくくなるため乱反射を防ぎ、また曇りにくくなるため良好な視界を得ることができる。
 耐久性も高く、実験では20年以上の親和性を保つという結果もでているという。ガラス清掃の頻度は約4分の1に減らすことができ、環境にも寄与できる製品といえる。また室内に塗布すれば、光触媒のもつ有機物分解作用によりウイルスや細菌を分解、不活性化させるため、抗菌や脱臭などの効果を発揮する。

盛和工業 光触媒技術を空気清浄機に応用
 盛和工業(横浜市都筑区)が光触媒を応用した分野は、空気清浄機。すでに多くの医療機関や福祉施設、大学などに納入実績のある「プロ仕様」の製品だ。
 一般的には殺菌作用を持つ酸化チタンを活用。同社の製品もこの作用を応用したもの。室内に漂ってアレルギー反応を起こすVOC(揮発性有機化合物)の種類は数百におよぶといわれているが、同社の空気清浄機はこのVOCのみならず臭気や煙草の煙、ダニの死骸、花粉、排ガスからウイルス、細菌まで除去する効果が確認されている。この効果をもたらす光触媒セラミックフィルターは東京大学や科学技術支援機構と共同開発したもので、従来の光触媒フィルターに比べ気孔が入り組んだ構造をしており、より高い性能を実現している。
 空気清浄のメカニズムは3段階で、まずプレフィルターと集塵効率99・7%のHEPAフィルターが煙や臭い、花粉などをキャッチ。続いて光触媒セラミックフィルターが有害物質を分解し、残った汚れや臭いを特殊吸着分解フィルターがカットするというもの。
 ラインアップも幅広く、卓上タイプなどの家庭用から天井はめ込みタイプ、建物全体の処理も可能な大型プラントタイプまで用意。さらに使用状況やニーズに応じたオーダーも可能となっている。さらに現在、これを小型化するための開発が進んでいる。これまで光触媒の反応用には蛍光灯を内蔵していたが、本体サイズはどうしても蛍光管の長さによって決まってしまう。そこで同社では新たにLEDを採用。これによりデザインの自由度は大幅にアップしそうだ。エレベーター内や棚の中、医療用ワゴンなどでの使用が想定されているという。

鯤コーポレーション あらゆる素材に加工できるコーティング技術
 鯤コーポレーション(佐賀県武雄市)が展開する「サガンコート」は、光触媒がもつ「セルフクリーニング機能」、「大気浄化機能」、「脱臭・シックハウス対策機能」、「抗菌・抗カビ・ウイルス力価低下機能」の4つのはたらきを活用したコーティング技術。
 タイルやコンクリート、防音壁やパネル鋼板などあらゆる素材に施工可能で、外壁のみならずクロスや化粧版、アクリルパネル、ガラスなど室内にも施工できる。自動車の車内に施工した例も少なくないという。室内外に施工すれば、外壁の美観を保つとともに室内空間を浄化・脱臭して清浄な空間を実現する。
 コーティング剤は水と酸化チタンを素材としているため皮膚に触れたり口に入ったりしても安全が確認されている。また有機系の溶剤を含んでいないため、安定した下地と適切な条件であれば長期的に機能を発揮する。工期も短期間で、40坪の2階建て家屋であれば、足場等の作業を除き施工は1日で終了する。
 これまでの施工例としては、老人ホームやホテルの室内、ユニバーサル・スタジオジャパンや官公庁の外壁など多数。また大気浄化機能を期待し、秋葉原周辺の歩道に塗布した例もある。

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