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千歳コーポレーション/東洋不動産の共同事業 7月竣工予定の「ミレーネT仙台ビル」

2021.07.12 10:55

 今月末に竣工を迎えるオフィスビル「Millene―T Sendai Building(以後、ミレーネT仙台ビル)」は、千歳コーポレーション(東京都千代田区)と東洋不動産(東京都港区)の共同事業である。仙台エリアにおける数年ぶりの新規オフィス供給とのことから、地元では注目度が高い。
 同ビルはJR仙石線「あおば通」駅及び地下鉄南北線・東西線「仙台」駅から徒歩3分、JR「仙台」駅からは徒歩5分の南町通り沿いに位置する。複数路線が利用でき、最寄り駅からのアクセス性と大通りに面した視認性が特長だ。元々同地には宮城第一信用金庫(仙台市青葉区)の本店ビルがあったものの、築年数の経過等により売却を決定。千歳コーポレーションと東洋不動産がビル跡地を取得し、同地に地上10階地下1階の新築オフィスビルを建設する。1~2階の一部は宮城第一信用金庫の入居が決まっており、リーシングは空中階が対象。既に8割が内定済みと、満室稼働ももう間もなくだ。
 東洋不動産不動産投資部の神田正樹副部長は「東北地方及び仙台においては、東日本大震災の被災地でもあることからビルには『災害に強い』ことが要求されます。『ミレーネT仙台ビル』は最新免震構造の採用、強度、BCP対策等に特に注力しており、入居テナントの安心・安全と事業継続を確保しました。例えば、送電線に事故があった場合でも継続して受電できるように異系統の2回線受電システムを採用。かつ停電しても72時間対応可能な非常用発電機を備えています。また大臣認定の免震構造は、官公庁施設の耐震安全性1.類以上の性能を有しており、東日本大震災クラスの地震でも人命と施設機能を守ります」と語った。
 他にもエレベーターは、地震管制運転と停電時・火災時に自動着床機能付き。4カ国語非常アナウンス、地震自動診断/仮復旧運転も持っている。また同ビルの敷地は広瀬川による洪水の心配がなく、頑強で安定した地盤。降雨による内水氾濫レベルもクリアした建物断面計画としている。
 またオフィスは南向きのL字型で、1フロア約200坪。仙台市内にオフィスを構える地元企業の新たな本社拠点、都内や大阪等に本社を持つ企業の仙台支店や営業所のニーズ等に応える。オフィスは非接触型ICカードによる24時間入室管理、警備連動省エネ制御等の機能を持つ。中でも全ての開口部に自然換気窓を兼ねた排煙窓を採用しており、貸室内の空気の入替えが必要な時に、自然換気を行うことが可能となっている。ちなみに環境性能では、CASBEE―新築のAランク取得、CASBEE―ウェルネスオフィスのAランク取得、DBJ Green Building認証(Plan★★★)も付与された。昨今重要視される環境配慮に応えた形と、環境等を重視したい企業への入居にも適している。
 更に共用部への充実も特長だ。まずはビルの顔ともいえるエントランスホールは、仙台の焼き物である堤焼の素材(土)をモチーフにしたタイルを使用。外壁にも取り入れて統一感を持たせつつ、内外装において「温かみ」のある仕上がりとなった。加えてエントランスにアロマディフューザーとJAZZによるBGMを採用し、来館者を香りと音でも迎える。照明はサーカディアンリズムにより、生体リズムに合わせて調色・調光を実施。エントランス内における居心地の良さを表現した。またテナント向けに屋上テラスは開放する計画だ。眺望の良さや開放感等も加わり、リフレッシュにも最適である。
 神田氏は「これからのビルでは、ダイバーシティやLGBTの意識も重要です。全てのワーカーが快適に働けるオフィスとして、各階のトイレをダイバーシティ対応としました。多目的トイレを設置すると共に、小便器隔て板、フィッティングボード、小物入れ、チャームボックスを採用しています。多様なニーズに応えられる機能性が当ビルの持ち味です」と語った。ここ数年間は新規オフィスの供給がなかった仙台エリアであるが、昨年・今年と新築ビルが建ったことでオフィスに動きが出てきた。災害対策や環境配慮、ダイバーシティ等の注目度が高まるからこそ、「ミレーネT仙台ビル」の存在感も増していくだろう。

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