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日本ユニシス IoTで設備点検・管理を効率化 ビルメン業界の人材不足問題解消に

2019.10.15 14:32

 日本全体で人材不足が問題となっているが、不動産業界においてはビル・マンション管理の分野でその傾向が顕著となっている。ビル・マンション管理の現場では作業スタッフの高齢化が進行しており、若い人材の獲得や育成は各社にとって大きな課題である。また、ビル・マンション管理業界は労働集約型の産業といわれ、経費の大半は人件費で構成される。若く有望な人材の確保・育成と同時に、企業は業務効率化によるコスト削減といった課題も突きつけられているのが現状だ。
 日本ユニシス(東京都江東区)では、設備点検を効率化してコスト削減や人材育成などにも寄与するクラウドサービス「まるっと点検」の提供を今年4月より開始した。この新サービスはIoT機器を用いて設備点検の作業をスマート化し、作業効率を高めるとともに作業スキルの継承を容易にするというもの。従来の設備点検は作業スタッフが点検個所を実際に訪れ、計器を目視で確認して手書きで数値を記入。その後、事務所に戻り報告書に再度手書きで数値を記入してレポーティングを行っていた。従来の手法では場面によっては作業スタッフが危険を伴うことがあったほか、設備の劣化状況などの判断基準が作業スタッフ個々の経験やスキルに委ねられている部分が大きかった。「まるっと点検」に搭載されているサービスメニューのうち、「まるっと点検モニター」は設備にセンサーを設置して安全に遠隔監視を実施。機器の状態を正確に把握するとともに、故障時期の予測機能により故障前の対応を可能にする。
 危険を伴う場面が少ない点検箇所においては、タブレットを用いて点検結果を入力する「まるっと点検リポーター」が効果を発揮する。点検結果はタップ入力または音声入力で入力作業を行い、撮影した写真とともにタブレット上で報告書を自動で作成することが可能。入力作業に誤りがあっても、過去の点検履歴と照らし合わせて異常値が入力されれば知らせてくれる。これにより点検内容の入力時におけるミスを大幅に削減できるのだ。
 設備点検業務は熟練のスタッフが若手を帯同させ、現場での作業を通じてノウハウを教える現任訓練が一般的だ。しかし前述のように人材不足の環境下では人材育成もより効率化を図る必要がある。「まるっと点検コミュニケーター」は、現場で作業スタッフがカメラやディスプレイ、音声スピーカーを搭載したスマートグラスを装着。作業員の視界は遠隔地のパソコン画面上で共有することができ、ベテランのスタッフが遠隔地から現場のスタッフを指導することが可能だ。作業に不慣れた若手のスタッフが一人で点検作業の現地を訪れても、安心して確実な作業を行うことができる。
 日本ユニシスによれば、年間4回実施していた定期点検を「まるっと点検モニター」を導入することにより年間1回程度に削減。月100時間程度を要していた点検結果の確認・承認作業が「まるっと点検リポーター」を導入することで月20時間程度に、設備機器の故障時に2名で行っていた現場対応を「まるっと点検コミュニケーター」を導入し一名に削減。ビル・マンションの設備点検業務全体では50%以上の作業工数の削減を実現するという。「まるっと点検」を通じ、同社はビル・マンション管理会社の働き方改革や人材育成に寄与する考えだ。

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