不動産トピックス
【7/20号・今週の最終面特集】不動産オーナーに付加価値をもたらす管理手法新機軸
2026.07.20 10:28
不動産オーナーに付加価値をもたらす管理手法新機軸
ビルメンが手掛ける「まちづくり」きっかけは商業施設の管理から
不動産管理や建物メンテナンス業務において、物件のバリューを維持し続けるだけでは十分とはいえなくなりつつある。その価値を最大化し競争に勝てる物件を構築するためには新たな施策が必要になってくる。業界でも珍しい、ビルメン企業主導のまちづくりと、快適な室内空間を構築する空調機器の長期保証サービスを紹介する。
まちづくりに乗り出した2つのきっかけとは
オフィスビルや商業施設のビルメンテナンスを手掛ける新日本ビルサービス(さいたま市見沼区)の「まちづくり型ビルメンテナンス」が、日本生産性本部が主催する「日本のサービスイノベーション2025」に選出されるなど注目を集めている。業界でも珍しいビルメン企業のまちづくり。その取り組みはビルオーナーにとってもメリットの大きいものとなっている。
NPO法人の彩の国地域活性化協会(さいたま市大宮区)が各地で開催している「彩の国マルシェ」。埼玉県内の商業施設から始まり行政施設などでも開催。いまでは「彩の国」を超えて都内のオフィスビルなどでも開催される。年間の開催数は70日前後におよび、出店を希望する事業者等は1600を超える。
新日本ビルサービスはこの「彩の国マルシェ」やNPO法人を資金面や人材面など多角的に支援する。マルシェの企画や運営には多くの社員が参加。マルシェ当日も運営しながら出店者とともに盛り上げる。地域活性や集客力向上を目指す物件オーナーがマルシェについて問い合わせてくるケースも少なくない。
こうした「まちづくり」を積極的に行うビルメンテナンス会社は業界内でも稀有な存在。新日本ビルサービスが取り組みを始めたきっかけは何だったのだろうか。
同社は1993年に清掃専門の事業者として創業。その後に総合ビルメンテナンスへ事業を発展させて今日に至っている。管理物件は埼玉県内を中心とした首都圏の商業施設やオフィスビル、行政施設など幅広い。
取締役の照井洋輔氏によると、同社が「まちづくり型ビルメンテナンス」に乗り出したきっかけは2つあった。ひとつは2003年に同社初となるショッピングセンターのPM業務を受託したことだった。このSCでのPM業務はひとつ独特なことがあった。それはPM会社からSCの支配人を出すことだった。同社はPM業務を受託しながら、さらにSCの支配人としてテナントの売上や施設への集客状況などPMを超えた役割をこなしていった。
もうひとつのきっかけは「リーマンショック」だった。日本経済にも波及して景気が後退するなかで、SCに入居するテナントも苦戦していた。「どのようにして集客していくか」。これが喫緊の課題となった。
「こうしたなかで、SC敷地内の広場を活用して費用を掛けずイベントを行うことができないかと考えました。地域の人たちが集まるようなイベントを検討するなかで、『マルシェ』という案が出たのです。そうして実現したのが、2010年に開催した『ファーマーズマーケット』でした」(照井氏)
ファーマーズマーケットから始まり、そして2020年12月には現在の「彩の国マルシェ」として発展的にリニューアル。こうした取り組みは、ECの台頭による消費者行動の変化やコロナ禍などのハードルを乗り越えるのにも功を奏した。いずれも商業施設への来客数にも影響を及ぼしたものの、新日本ビルサービスが管理する物件では「ファーマーズマーケット」や「彩の国マルシェ」を通じて一定の集客に成功するに至っている。
先述の通り、この「彩の国マルシェ」には現在、1600以上の事業者などの出店希望が集まっている。各施設でのマルシェ開催予定に合わせて出展を募っている。
新日本ビルサービス地域連携推進部地域創生課で勤務しながら、NPO法人彩の国地域活性化協会監事兼ゼネラルマネージャーの服部遥氏は出展希望者の業種カテゴリについて「フード物販やハンドメイトがそれぞれ3割ずつで、キッチンカーやワークショップがそれぞれ1~2割、農家などの一次産業が1割ほど」と構成を語る。「こうした出店者さんのつながりで初めてマルシェに来てくれる人も多い」という。
最近、新日本ビルサービスではマルシェ出店者や出展希望者との新しい取り組みも始めている。2月4日に同社本社で初めて出店希望の登録事業者を集めた交流会を開催。彩の国マルシェを運営する同社地域創生課社員やマルシェ出店希望者が横のつながりをつくるとともに、様々な情報交換や交流が行われた。
「実際にマルシェ開催日は私たち運営する側も出店者も忙しくて、ゆっくりとコミュニケーションをとることは難しい。そのため、今回初めてこういったコミュニケーションの場をとることになった。このようなコミュニケーションを重ねることで、マルシェの更なる活性化につながるとともに、マルシェ以外でも相互に協力できる関係が構築できると考えている」(服部氏)
「彩の国マルシェ」をきっかけに生まれた縁を深めていくことは、商業施設のPMを受託する新日本ビルサービスにとってもメリットがある。
「当社がPMを受託している物件でも空き区画となっているスペースがありますが、たとえばそうしたスペースをインキュベーションスペースとして期間限定で出店いただくなどの機会につなげることができると考えている。そこで好感触を得ていただければ、テナントになってくれる可能性もあるでしょう」(照井氏)
従来のPMという枠を超えて施設や店舗、地域の活性化を目指す「まちづくり型ビルメンテナンス」。オーナーにとっても付加価値をもたらす管理手法となっている。
空調の保証期間を最大8年に IoTを駆使し費用と管理の負担を軽減
空調の更新工事と併用 24時間の監視体制も構築
野村不動産パートナーズ(東京都港区)は、IoT技術を活用した空調更新工事の長期保証サービス「re:PAir8(リ・ペアエイト)」の本格提供を開始した。
「リ・ペアエイト」は野村不動産パートナーズが管理受託するオフィスビルを対象とした空調更新工事の長期保証サービス。空調機器の保証期間を最大8年間へ延伸し、期間中の故障対応費用を無償化。故障時の見積りや契約手続きが省略されることで迅速な対応と施設運用における管理負担の軽減を実現するという。
一般的な空調機器の保証期間は1年間となっていることが多く、2年目以降に異常が発生した場合には有償の修繕工事が必要になる。「リ・ペアエイト」は空調機器の更新工事を実施することで、最大8年間の機器保証を実現した。空調機圧縮機の修理や空調機インバータの交換など、通常高額となる修繕費用も無償の対象となる。
空調機器の更新工事に際し、常時監視体制を構築するため、遠隔監視センターと空調機器に設置したIoT端末を連携。遠隔監視センターが24時間365日体制で機器の運転状況を監視し、空調機器に設置されたIoT端末が異常を検知した場合にはサービスエンジニアが緊急出動し、現場確認を行う。
野村不動産パートナーズではオフィスビルの空調機器について、室内環境を支える重要なインフラ設備の一つとして働く人々の生産性向上や健康維持、来訪者の快適性確保において欠かすことのできない存在と位置付ける。一方で空調機器の故障は予期せぬタイミングで発生することが多く、突発的な修繕費用が発生する点も大きな課題となっており、事業の資金計画に影響を与える可能性があるとする。特に高額な修繕が必要な場合には資金の確保や他の支出計画の見直しを迫られることもあり、経済的な負担が大きくなるケースもあると分析。また、空調機器に故障が発生した際には現地確認や調査、修理業者との日程調整、契約手続きなど多くの時間と手間を要するケースも少なくない。こうしたことから、同社では顧客に長期的な安心を提供し、ランニングコストと管理負担の軽減を目的として「リ・ペアエイト」を開発したとしている。



