不動産トピックス

【今週号の最終面特集】中小規模の開発事業 新規参入の企業をチェック

2024.05.06 11:41

自社開発のスマートコンパクトオフィス第2弾は「VORT西新宿NEX」
新築開発対象は敷地面積50坪以上 規模は10層以上 延床面積500坪以上を想定
 自社開発の新築ビルや既存ビルを取得後にバリューアップしてシリーズ展開するビルブランドが、都内の主要オフィスエリアで増えている。中には売却も視野に入れて展開しているケースなど、企業によって様々ある。

区分所有オフィスを展開 自社開発の新築ビル増加
 「区分所有オフィス®」を主軸に資産形成コンサルティングを展開しているボルテックス(東京都千代田区)。東京都心部を中心に、大阪・福岡などの主要都市の商業地に立地する既存中規模ビルを取得しているが、昨今は自社開発の新築ビルも増やしている。
 同社の「区分所有オフィス」は、主要都市の商業地及びオフィスエリアに立地するグレードの高い中規模ビルをフロアごと、あるいは部屋ごとに分譲するビジネスモデル。ビル1棟まるごとの購入は難しくても区分所有ならば、6分の1~30分の1程度に費用を抑えられる。小規模ビルを1棟購入した場合と同じ予算で、より好立地・高品質なグレードの高いオフィスを購入することが可能だ。また同社が管理組合を組成し、修繕積立基金を拠出。長期修繕計画に基づき運用するため、突発的なコストは平準化できる。所有者は本業に連動しない収益と流動性の高い売却可能資産を確保でき、企業価値・事業継続性の向上に繋がる。主な顧客は首都圏・地方の企業経営者や投資家、富裕層など。昨今は海外の投資家からも反響の多い事業である。
 取得した物件は「VORTR(ボルト)」と命名し、VORTシリーズとして展開。取得のタイミングで物件の価値を高めるためにバリューアップ工事(リノベーションやリニューアル、昨今はコンバージョンも実施)を行うことが多く、同時にコスト削減や見直し、昨今はセットアップオフィスをつくりテナントニーズも踏まえたリーシングに取り組む。まだ棟数としては多くないが、その土地でのランドマーク的なビルであることや敷地面積100坪超といった中小規模よりも更に大きなオフィスビルになると、「maxim(マキシム)」シリーズとして展開。また区分所有オフィスだけでなく、不動産小口化商品「Vシェア」として販売することもある。同社のこれら取り組みは主に既存ビルでの事例だが、以前から新築ビルの開発も行ってきた。近年では開発物件数を増やしていく方針で、新たなシリーズブランド「NEX(ネクス)」を開始した。
 NEXは高機能なスマートコンパクトオフィスのこと。由来は「New, Next, Neo」+「Executive, Excellent, Extra」。由来となっている「次世代」スペックと「1ランク上の品質」をコンセプトに開始。VORTシリーズならではのハイクオリティな空間と、コンパクトでありながらも使い勝手が良く、様々な企業活動に対応できる構造・空調・通信・セキュリティを持ち合わせた。シリーズ第2弾は2024年1月竣工、自社保有物件として建設を進めてきたオフィスビル「VORT西新宿NEX」。
 開発用地を取得して建設した「VORT西新宿NEX」は、新宿区西新宿8丁目の青梅街道沿いに立地する。東京メトロ丸ノ内線「西新宿」駅から徒歩1分、JR山手線「新宿」駅や都営地下鉄大江戸線「都庁前」駅も徒歩圏内に位置する。規模は鉄骨造・地上9階建てで、延床面積は1259・55㎡。1階は専有面積80・99㎡の店舗、2~9階は専有面積126・70㎡のオフィス仕様となっている。オフィスはシンプルなスペース構造で、ワーカーのビジネス業態や構想などに合わせフレキシブルなレイアウトが可能。天井高は3000mm超と、圧迫感を解消するために天板を外したスケルトン天井。OAフロアやタイルカーペットを備えた清潔感のあるオフィスをつくり、床から天井までガラス面を採用したことで採光も確保している。
 アメニティ機能として、給湯室や化粧室なども充実させた。化粧室には、ライト付属の鏡やプライベートBOX、コンセントなどを設置。コンパクトなオフィスでありながら、給湯室や化粧室は広々と使用できる。また各部屋の扉や一部壁面に木目調を採用。各階エレベーターからダイレクトインのオフィスとなっており、周辺に木目調を採用することで快適な環境でワーカーを迎える。屋上も開放しており、休憩やリフレッシュスペースとして利用できる。
 エントランスには、誰でも使用できるユニバーサルトイレやAEDを設置。また社会貢献活動の一環として、障がい者自立推進機構(東京都港区)が行っている「パラリンアート事業」より、アーティストのキクチユミ氏が描いた作品「真紅の静寂」を採用。エントランスホールに掲出している。既に8階は成約済み。1階店舗やその他空中階にも問い合わせが来ている。近隣ではコンパクトサイズの新築オフィスが希少なこともあり、新築ニーズと交通アクセス性を強みに早期満室を目指す。
 事業統括本部 業務本部の神田康児氏は「開発対象の敷地面積が50坪以上で、規模は10層以上。延床面積は500坪以上を新築ビルの開発基準と想定しています。最寄り駅からは徒歩5分圏内が理想で、視認性の高い大通り沿いや交差点角地、取得した土地の形状も重要です。もちろん、同数値を必ずしもクリアしなければ開発しないことはなく、立地や面積など様々な要因から検討していきます。現在『VORT西新宿NEX』は近隣の小規模企業をはじめ、ベンチャー企業やスタートアップからの問い合わせが多いです。当社もその様な企業を想定していましたが、多種多様な業種・企業から問い合わせが寄せられています」と語った。
 ボルテックスは毎年4~5の土地取得からの開発案件に着手するよう事業を進めている。NEXの開発用地となる場所も含まれるが、自社展開ブランドのどの仕様にするのか検討しながら取得してきた。必ずしも新規開発に拘らず、その場所に合わせた開発・ブランディングができることが同社の強みと言える。


<物件概要>「VORT西新宿 NEX」
●竣工:2024年1月
●延床面積:1259.55㎡
●敷地面積:190.10㎡
●規模:地上9階
●用途:1階(店舗)、2~9階(オフィス)
●所在地:東京都新宿区西新宿8-5-5

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