不動産トピックス

【今週号の最終面特集】地域密着を強みにシリーズ展開 中小新築ビルの戦略

2024.04.15 10:33

シリーズ5棟目「Sreed EBISU +C」竣工
セットアップオフィスはレイアウト2パターン用意
 サッポロ不動産開発(東京都渋谷区)は2018年から、恵比寿エリアで中小規模のオフィスブランド「Sreed(スリード)」シリーズを展開している。2023年12月26日に5棟目の「Sreed EBISU +C(スリードエビスプラスシー)」が竣工した。

恵比寿にベンチャー集積 成長移転のオフィス開始
 Sreedシリーズは、「発芽するワークプレイス」をコンセプトとしたビルブランド。新しいことへ挑戦する企業・チーム・個人にビジネスの種を芽吹かせ、成長していく場を提供したいとの想いから立ち上げた。創造性を活性化させる室内デザインや執務環境を設え、高いセキュリティでテナントの安全・安心も確保。テナント及び就業者と、街とのつながり・交流も意識して提供している。昨今の多様化が進む働き方にも対応できる。
 開始は1994年。ヱビスビール工場跡地の再開発事業で、大規模複合施設「恵比寿ガーデンプレイス」が竣工した。この施設を起点に、街の魅力を高めて人を呼ぶ。人と人とのネットワークを繋ぎながら、総合的・全体的に恵比寿の魅力を向上させる取り組みを始めた。2017年に恵比寿まちづくり部を設け、恵比寿で働くワーカーと、街の店や住民を繋ぐコミュニティ形成にもなる活動を本格的に開始した。
 ソフトと一緒にハード面の強化も図った。竣工時の「恵比寿ガーデンプレイスタワー」の主なテナントは、大手企業や外資系など。リーマンショック以降はIT系が増加。IT系から人気の街となり、ここ数年はベンチャー企業やスタートアップの集積も進んでいる。しかし恵比寿エリアにはベンチャー企業がシェアオフィスからのステップアップに適した、手頃なサイズで精錬されたコンパクトオフィスは少なかった。小ぶりのオフィスビルは多いが築古ビルが目立つ。これら企業の成長移転に適したハイスペックなビルが必要と認識。立地環境や周辺ニーズも加味した、次世代のオフィスモデルを造ることにした。
 1棟目の「Sreed EBISU」は、建設中の新築オフィスビルを取得。2019年4月に竣工済み。他にも改修等のバリューアップを前提に取得した「Sreed EBISU 2」。S造と一部木造で建てられた「Sreed EBISU +t」。2018年11月に取得し、23年2月に外装やエントランスの大幅バリューアップを図った「Sreed EBISU EAST」などがある。

共用スペース設けないダイレクトインを採用
 新たに竣工した「Sreed EBISU +C」はJR「恵比寿」駅徒歩4分、東京メトロ「恵比寿」駅からは徒歩6分に立地。規模は地上9階。延床面積は1077・40㎡。1~2階が店舗仕様、3~8階がオフィス仕様の小規模複合ビル。1フロアの貸室面積は124・98㎡(37・80坪)。コンパクトサイズ故に、共用スペースをフロア内に設けないダイレクトインを採用。その分、セキュリティは強化。顔認証の入退出管理システムを採用している。また空調の遠隔コントロール、非接触ボタンのエレベーター、調光調色照明、入居テナント専用のWi―Fiなど多彩なIoT設備も強み。宅配ボックスや各フロアに設けたキッチンカウンター、テレカンブース(パーソナルブース)、防災備蓄倉庫も用意している。
 投資運用事業本部 アセットソリューション部 アシスタントマネージャーの吉川晴樹氏は「特徴は、オフィスの開設・移転がしやすいセットアップオフィスを採用したこと。レイアウトプランを2パターン用意し、3~8階の全フロアに会議室やキッチンカウンター、テレカンブースを造作しました。3、7、8階はフルセットアップフロアで、机や椅子等の家具がセットされています。4~6階はハーフセットアップ。会議室やキッチンカウンターはありますが、家具はセットされていません。お気に入りの家具を持ち込むことができ、専有部内のレイアウトに自由度を持たせています。また全フロアで、天井は開放感のあるスケルトンに仕上げるなど、シンプルなデザインにしました。床の仕様も2パターンあり、3~5階はモルタル調でスタイリッシュな仕様とし、6~8階は木目調で、カフェ風なお洒落な雰囲気を演出し、温かみが感じられる仕様にしています」と語った。

敷金0カ月の保証採用 原状回復工事も不要
 また同ビルの開発コンセプトは「つながり」を重要視している。単なるオフィスの提供で終わらず、テナントの就業者同士で会話やコミュニケーションが生まれる工夫と居心地の良さを追求。入居者専用の屋上テラスや貸室内に造ったキッチンカウンターなどが該当。特に屋上テラスは、休憩やランチなどコミュニケーションスペースとしても機能。就業者が「オフィスに行きたくなる」視点を大事にし、内装の彩りや植栽にも気を配った。設えの見栄えや第一印象を意識して、「お洒落なオフィスで働きたい」などの要望に応えた。
 同事業本部の山本隆晴氏は「リーシングの反響は良く、主に『恵比寿エリアへ移転したい』や『恵比寿から離れたくない』といった小規模企業が大半です。当地でサイズとデザイン性に適したビルを探していた企業も見られます。ベンチャー企業にも注目されているエリアから、彼ら新興企業の成長を手助けすべく、敷金0カ月の保証サービスを採用しています。テナント内装工事を行わない企業であれば、原状回復工事も不要です。1フロア1テナントで専有したい、自社のステップアップに新たなオフィスを構えたいなどの想いを刺激するビルとなりました」と述べた。
 更に恵比寿全体でのサービス対応力も強み。「Sreed EBISU +C」内の来館者用の打ち合わせスペースだけではなく、「恵比寿ガーデンプレイスタワー」の会議室をテナント割引で使用することができる。恵比寿ガーデンプレイスでは、入居テナントワーカー向けの割引サービスやイベント情報を提供しており、同施設の就業者と同じサービスを同ビル就業者も利用できる。打ち合わせに足を運んだクライアントなどが、飲食店舗の豊富にある「恵比寿ガーデンプレイス」を楽しめることも特徴だ。
 山本氏は「現在、次なるシリーズの開発を検討中です。今後も新築ビルの建設にこだわらず、既存ビルからのバリューアップでも対応していきます」と語った。
 恵比寿はベンチャー・スタートアップから人気の街・渋谷に隣接しており、中小オフィスビルも多い。築年数の経過したビルであると、賃料も周辺相場より多少割安感がある。彼らの成長移転には好ましい環境が整っている。一方ベンチャー・スタートアップの中には、大規模オフィスビルの中にあるシェアオフィスを利用しているケースもある。ハイスペックな施設を利用していると、成長移転先にも高いスペックやグレードのオフィスを求める傾向にある。昨今各デベロッパーが注力する中小ビルのブランド展開も勢いがあることから、既存の中小ビルオーナーはこれら動向を注視する必要がある。

<物件概要>
●名称:「Sreed EBISU +C」
●竣工:2023年12月26日
●延床面積:1077.40㎡
●敷地面積:222.81㎡
●基準階面積:124.98㎡(約37坪)
●規模:地上9階
●用途:店舗(1~2階)、オフィス(3~8階)
●所在地:東京都渋谷区恵比寿1-21-17

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