不動産トピックス

【今週号の最終面特集】住まいに求められる機能検証

2024.02.26 10:34

済む人の属性や暮らしに合わせた物件開発 ライフスタイルの多様化に合わせ設備充実
 生活の基盤となる住宅は、暮らしに求められる機能だけでなく、業務や地域交流の拠点としての役割も担うようになっている。性能も日増しに向上しており、投資商品としての価値も高まっているようだ。

学生マンションブランド第1号物件を東京・金町に
 サンケイビル(東京都千代田区)は1月31日、学生レジデンスブランド「LEFOND ETUDE(ルフォンエチュード)」の第1号物件となる「ルフォンエチュード金町」を竣工させた。
 総合不動産会社のサンケイビルは住宅事業において「ルフォン」を冠したマンション・レジデンスの企画・開発を展開。基幹ブランドの分譲マンションシリーズ「ルフォン」は、最寄り駅から徒歩9分以内の優れた利便性と整った生活環境を両立させた高品質な住まいが特徴であり、ブランド名称はフランス語で「本質」を意味しており、住まうことの喜びを提供したいという思いが込められている。今回、第一号物件が竣工した「ルフォンエチュード」は、「ルフォン」ブランドのDNAを受け継ぎつつも入居者が学生であるという特性を考慮し、「安心・安全」、「社会」、「環境」の3項目の取り組みを基軸に企画・開発が行われている。
 葛飾区金町に立地する「ルフォンエチュード金町」は地上14階建てで、全113室。最寄り駅の京成金町線「京成金町」駅からは徒歩11分、隣接するJR「金町」駅からは徒歩12分となっている。間取りはワンルームとなっており、面積は約17㎡。コンパクトなサイズながらバス・トイレは別で、玄関は高級感のあるタイル貼り。また家具・家電は備え付けとなっており、身の回りの物を持ち込むだけですぐに新生活をスタートさせることができる。このほか室内用Wi―Fiを設置しており、オンライン授業にも対応可能である。
 建物1階の共用部にはカフェテリアが設けられており、食事つきの入居プランでは管理栄養士考案の3種類のメニューから好きな食事を選ぶことができ、単身生活における食生活の栄養バランスをサポート。このカフェテリアは食事以外の時間帯でも開放されており、PCやタブレット端末での作業・自習スペース、入居者同士の交流スペースとしても活用ができる。物件の開発に携わったサンケイビル事業本部住宅企画部の細田真未氏は「現在7割程度の部屋が成約済みとなっており、3月から入居開始となります。金町エリアには東京理科大学のキャンパスがあり、当物件の入居者も東京理科大学の学生が中心で、そのほか京成線の利用で15分ほどの千葉商科大学や、都心の大学に通う学生入居者も一部ではおります」と話す。「ルフォンエチュード」は金町を皮切りに、亀有、国分寺と、今年3月までに3棟が竣工を予定している。同社では今後も立地の特性や需要などを見極めながら「ルフォン」ブランドの開発を積極的に行っていく構えだ。

湘南エリア最高層タワマン 低層部にはワークラウンジ
 総合不動産会社のリスト(横浜市中区)の連結子会社であるリストデベロップメント(横浜市中区)は、神奈川県藤沢市のJR「辻堂」駅前で商業施設と分譲マンションが一体になった複合タワー「THE TOWER 湘南辻堂」を建設中である。
 同物件は「辻堂」駅の東改札から広がるペデストリアンデッキで直結し、徒歩2分の良好なアクセスが特徴。建物は地上29階建てで、最高高さ約98・90mは湘南エリアで最高層の建築物となる。一般販売対象の住戸は172戸。間取りはワンルームから4LDKと幅広く用意し、各住戸の専有面積は34・90㎡~92・83㎡となっている。高層棟の1~3階部分と隣接する低層棟は商業施設として機能する予定で、利便性の高い暮らしを入居者に提供する。
 建物の外観やエントランスなどのデザインは、「東急プラザ渋谷」の商環境デザインなどを手掛けたグラマラス(東京都港区)の森田恭通氏が担当。「シンプルでナチュラルなモダン」を意識し、ロビーにはナチュラルウッドと陶板を床や壁の一部に使用することで素材感を強調している。エントランスからホールへの導線については、ドレープカーテンを抜けるようなイメージでデザインされ、ウッドカーテンを使用。自然の世界観を体感できるデザインとなっている。
 また同物件では入居者の多様なライフスタイルに合わせて、3階フロアにワークラウンジやゲストルームなど多彩な施設を用意している。ワークラウンジ内にはウェブ会議に適した個室スペースも用意している。住戸は南側に相模湾と江の島といった湘南の景色を楽しめるほか、西側には富士山を眺望することも可能である。リストデベロップメントの鈴木篤氏は「昨年暮れの物件エントリー開始から多くのお問い合わせを頂戴し、これまでに頂いた約4000件のお問い合わせのうち、約1000件が都内在住者の方より頂きました。都心へのアクセス性と海辺に近い自然環境が共存した当物件への関心の高さがうかがえます」と述べている。物件は2025年9月の竣工、同年11月の引き渡しを予定している。

キッチンのレンジフード使い室内の気密を簡単に測定
 高温多湿の日本では古来より、日本家屋は内部の通気性をよくすることで室内の湿気を抑制し、快適な住環境を実現してきた。一方、現代では室内に設置する冷暖房機器の性能が向上していることから、隙間を極力なくして高い気密性を保持する方が、冷暖房の性能を効果的に発揮できる状況にある。
 一般的に、気密の測定には大掛かりな専用機材を用いて実施されるため、準備作業から測定完了までは多くの時間を要する。また高額な専用機材一式を保有する工務店や専門業者は限られているのが現状だ。主に住宅の断熱や防音、気密、換気等を手掛けるマツナガ(東京都練馬区)では、一般住宅のキッチンに設置されているレンジフードを活用した簡易気密測定器「シーチア」を開発。コストや手間を大幅に削減できる測定法として、住宅のリフォームやリノベーション等で積極的な提案を行っている。
 この「シーチア」は、温度や湿度、換気などといった建物内の環境に関わる研究を行う、ものつくり大学建築環境デザイン研究室の松岡大介教授の発案によって生まれた測定法。キッチンのレンジフードに専用機材を取り付けるだけで測定が可能となる。マツナガの松永潤一郎社長は「従来の機材は大型ケース複数個を持ち運びしなければならなかったところ、『シーチア』はキャスター付きバッグ1個に機材を収めることができ、現地での準備作業は従来の3分の1にまで短縮することができます」と話す。
 測定に際しては、レンジフードに測定器がついたビニールのフードカバーをマグネットや養生テープで取り付けるだけで済み、設置時間は従来の約3分の1以下。重量は1~2kg程度、総重量7kg程度でバッグ一つに納まるコンパクトさとなっている。また、測定にはスマホの専用アプリを使い、画面の指示通りに建物情報や測定数値を入力するとC値(住宅における相当隙間面積のことで、気密性能の指標として用いられる)や通気率などが表示されるので簡単に測定が可能。「初心者でも扱えるように簡単に、しかし漏れがないように」(松永社長)と工夫した。価格は49万8000円と従来品の約半分以下であることも大きなポイントだ。同社では気密に注力するビルダー・工務店を中心に「シーチア」の訴求を広めていくとのこと。

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