不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2024.01.01 10:51

ソラナリゾート トレーラーハウス活用のペット同宿ホテル「Solana」シリーズが最大利回り20%に
 ソラナリゾート(東京都千代田区)は、トレーラーを活用したリゾート施設「Solana」シリーズを展開している。
 不動産管理、仲介、リノベーション等を手掛けるコンスピリート(東京都目黒区)が、2022年4月に第一拠点となる「Solana鴨川」を開業。同年7月にトレーラー事業を独立、ソラナリゾートを立ち上げた。
 コンスピリートの役員でソラナリゾート 代表取締役の佐竹彩氏は「コロナ禍で仲介事業も大きな影響を受けました。そうした中で出会ったのがトレーラーハウス。減価償却が4年、中古で2年と短く、固定資産税がかからないなど、投資商品として優れていることに着目しました。加えてコンスピリートには私も含めペットを飼っている社員が多く、『ペットと泊まれたら楽しいのではないか』という発想が、新規事業の立ち上げにつながっています」と話す。
 投資家は、同社が借りた土地を1区画200㎡から購入可能。トレーラーハウスと土地代(ドッグラン含む)、内装費用等で初期投資は2000万円前後となる。運営・管理はすべてソラナリゾートが行い、5年間の修繕保証が付帯することから、投資家の運用負担はほぼない。
 「Solana」ではファミリー層やグループ宿泊をターゲットとした。トレーラーハウスは29~48㎡、5~6名定員。各部屋にはテーブルやソファ、ベッド、キッチン、テラスが設営。皿や調理器具も一式揃っているほか、地元の一流レストランと提携してコース料理を届ける「ソラナプラン」も提供している。食材だけ持参してバーベキューをするのも良し、手ぶらで楽しむのもOK。宿にはすべてプライベートドッグランを併設。周りの環境を気にすることなく、自然の中で愛犬と戯れることができる。
 現在は鴨川、日光、山中湖の拠点が稼働しているほか、今年には軽井沢、千葉白浜、九十九里で開業予定。全拠点、相場より20~30%ほど安い宿泊料金を設定している。まずは稼働率を高め、安定した収益を出す方針を徹底。その戦略と土地の目利き、リノベのノウハウが功を奏し、鴨川の拠点は利回り20%を達成。ほかの拠点も10%以上と安定した状況が続いている。
 「内装の見た目だけではなく、サービスにもこだわりました。犬が滑らない床材の使用し、『歯磨き』から『目やに取り』まで犬用のアメニティも充実させています。今後はカップルで宿泊できる施設も整える予定です。トレーラーハウスの販売市場も伸びているので、宿泊施設の運営と両軸で進めていきたいと思います」(佐竹氏)。
 昨今は、災害時のトレーラーハウス活用を推進する自治体も増えてきた。社会貢献に役立つことから、投資家目線での期待値も高い。ソラナリゾートでは今後、年間60台のトレーラーハウス販売、3カ月に1拠点のリゾート施設開業を目指していくとしている。

金乃竹 インバウンド連泊向け新プラン 旅館+バカンス=「リョカンス」始動
 金乃竹(神奈川県箱根町)は、10周年を迎えた同社運営の旅館「金乃竹 塔ノ澤」で、新プラン「リョカンス(Ryocance)」の提供を1月5日から開始する。
 「リョカンス」とは、バカンス(長期の休暇)のように旅館で過ごすという意味の造語で、「和」の体験アクティビティや新設した館内設備などによって連泊需要を創出するもの。滞在時間を増やして顧客満足度の向上を図ることで、新たな収益の創出やチェックイン・チェックアウト、清掃の減少などの業務効率化を目的としている。連泊需要を創出する収益モデルを確立し、箱根の観光需要や日本の宿泊業界・観光業界の発展に寄与する狙いがある。
 「金乃竹 塔ノ澤」では、甲冑や着物を着用して箱根を散策したり、英語ガイドが箱根の自然や観光地を案内する終日観光、書道体験や茶道体験などを提供する。また、3月にはプールやジム、サウナなどの設備もオープンする予定。
 2022年度の神奈川県観光客実態調査では、県内の平均宿泊日数は1・5泊。うちインバウンド旅行客は「8泊以上」が37・0%と最も多く、平均宿泊日数は11・0泊と長期滞在の傾向があるという。金乃竹グループのインバウンド旅行客の平均宿泊日数は「1・87泊」で、なかでも最も平均宿泊日数が短い「金乃竹 塔ノ澤」で「リョカンス」プロジェクトを始動することとした。
 今後はインバウンド旅行客の平均滞在目標を2日以上として、他施設でも順次導入する。また、異なるエリアにあるグループの施設での分泊などにも対応するなど、インバウンドの高付加価値旅行客の連泊需要を招致し地域経済へ貢献する方針。
 金乃竹は1947年、箱根・仙石原で開業した8室の旅館「冨士荘」が前身。現在は箱根エリアで旅館5店舗、飲食店2店舗を運営する。

mode-Duo DX化を推進するサービス「トマリエ」 高稼働につなげる利用状況分析と不動産の目利き
 mode-Duo(東京都渋谷区)は、DXを活用したホテル運営代行サービス「トマリエ」を展開し、東京、大阪、京都、福岡、金沢、沖縄などの全国主要観光地で900室以上の運営実績を持つ。
 mode-Duoは2006年、システム開発事業を主軸に尾島康仁氏が設立。「多様性を以てより良い世界を創る」をテーマにホテル事業、保育園の経営、不動産事業、ウェディング事業、飲食事業など、国外を含めて20業種以上の多様な事業展開を組み合わせることで独自の成長を遂げた。
 「トマリエ」の運営開始は2016年。宿泊予約サイト(OTA)である「Booking.com」、「Expedia」、「じゃらん」、「楽天トラベル」、「Airbnb」などの予約状況の分析や集客、ならびにホテル運営全体を担う中で、ホテルのオーナーから「新しいホテル用の物件を探してほしい」との要望を受ける。それに応える形で、観光地や都市を中心に全国の物件を発掘。のちに不動産会社の「Kant」を立ち上げ、物件購入からホテル運営まで一貫して対応できる体制を整えた。
 仕入れた物件をオーナーや投資家に紹介し、ホテルの運営や集客は同社が担い、売上に応じた運営代行費用を徴収する。ホテル運営事業部で事業推進を務める河合氏は「2014年に尾島が海外で『たい焼き』の事業を企画し、2年に渡りヨーロッパ数十カ国を転々とする生活を送っていました。たい焼き事業は失敗しましたが、そこで出会ったのが個人宅に旅人が宿泊できるAirbnb(エアビーアンドビー)という仕組みです。現地で出会った人たちと寝食をともにし、とてもお世話になった方々との出会いと思い出が、尾島にとって貴重な経験となりました。そこからヒントを得て、日本で宿泊事業を開始。当社のITノウハウを取り入れたのが、今の『トマリエ』です」と話す。
 「トマリエ」では、都道府県、物件、収容力別で売り上げや稼働率(予約率)、物件数、日別単価の実績を分析。綿密な収益計算をしたうえでホテルが創出する売上や利益、実質的な利回りを精度高く予測している。
 コロナ禍前は収支予測の精度は前後10%の範囲に8割の管理ホテルが該当し、運営コストも通常50%前後と言われる中、セルフチェックインなどのDX化をすることで、コストを売上の20~35%に抑えるなどの実績がある。
 韓国や中国、アメリカ、マレーシア、インドなどで従業員を現地採用。完全リモートの体制で、365日24時間の多言語接客対応を可能とした。これらの戦略とインバウンド需要が功を奏し、多くの物件で15~20%の高利回りを実現している。
「各種予約サイトの上位に表示されるように、SEO対策は徹底しています。また、アメニティを充実させること、高低差のない寝室を整えるなどの快適性もリピーターの獲得においては不可欠。宿泊施設は都市部でしか流行らないとは限らず、『辺鄙だけれどリモートワーカーが使いやすい』等のポテンシャルを持つ立地もある。都内はもちろんこれからも伸びると考えますので、積極的に物件は仕入れていきたいと思います」(ホテル事業部 宮山氏)。
 2019年6月時点で運営実績は全国578拠点に上る。昨今、インバウンド観光客の姿を至る所で見かけるようになった。日本政府観光局のデータによれば、2023年8月の訪日外国客は215万6900人。コロナ前の2019年同月比から8割超えと、インバウンド需要は着実に回復している。日本の観光資源の活用は、国際的な競争力の向上においても急務の課題。外国人スタッフの雇用機会にもつながる同社の運営体制は、今後の社会情勢を鑑みても、重要な役割を担っているのではないか。

東急が「手間いらず」とシステム連携
 手間いらず(東京都渋谷区)が提供する、複数のオンライン宿泊予約サイトを一元管理できるサービス「TEMAIRAZU」が、東急(東京都渋谷区)が運営する定額制回遊型宿泊サービス「TsugiTsugi」とのシステム連携を開始した。
 「TsugiTsugi」は、全国140以上の宿泊施設から好きな場所を選び、定額で宿泊可能なサブスクリプションサービス。利用頻度に合わせて宿泊数の異なるプランを選択可能。ChatGPTを活用した宿泊施設選びなどの相談ができる、独自のAIコンシェルジュ機能も備える。東急グループのホテル以外の宿泊施設も多く参画している。
 今回の連携で「TEMAIRAZU」を利用している宿泊施設が「TsugiTsugi」でも利用可能になる。宿泊施設は販路拡大による収益の増加を図ることができる。

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