不動産トピックス

今週の一冊

2023.06.05 10:41

古くからの農耕文化に深い関わり

なぜ、日本には碁盤目の土地が多いのか
著者:金田 章裕
出版:日経BP
発行:2023年1月10日
価格:990円(税込)

 国内外から多くの観光客が訪れる京都の中心市街地は、街路が南北方向と東西方向に整然と整備された碁盤目の区画を形成している。このような街区構成は現在地や目的地が分かりやすいという利点があり、大阪や名古屋といった大都市の多くで碁盤目の土地区画がみられる。東京は皇居(江戸城)を中心として街が形成され、一見するとこの法則に当てはまらないように感じるが、例えば銀座や日本橋といった街は碁盤目の区画で土地が構成されている。
 一方、海外に目を向けると、例えばフランス・パリは凱旋門を中心として放射状に街路が伸びており、土地の形状は湾曲しているものや、三角形となっているものが多い。日本で暮らす我々にとって、都市形成を語る上で土地の区画は碁盤目状につくられることが当たり前のように感じるが、海外では発展の歴史や地域の形状によって都市計画は柔軟に展開されてきた。
 農耕民族として発展を遂げ、田畑を長方形や正方形で区分し、碁盤目状の土地利用を志向してきた日本人にとって、都市をつくるために碁盤目状の土地利用を基本としてきたことは自然なことといえる。本書は日本および世界の都市づくりで採用されてきた碁盤目状の土地利用の歴史を振り返るとともに、その利点や課題を解説する。類似した土地区画の整備は街の没個性化を招きやすい。都市間競争が激しさを増す現代において、魅力ある街を形成するためのヒントが本書には記されている。

PAGE TOPへ