不動産トピックス

【今週号の最終面特集】テナントの移転をサポート オフィス構築最新動向

2023.06.05 10:45

新品家具家電のサブスクリプションサービス セットアップオフィスを中心に需要増加
 オーナーがオフィスリーシングの戦略を練る場合に、仲介会社や内装業者と協力することは多い。中でもサービスオフィスやセットアップオフィスが普及し出してからの双方の影響力は、増していると言える。しかしセットアップもハードルは高い。どの様な企業と組むか、実績や知見を持ち合わせた企業の選択が吉と出る。

販売価格の約9割 12/24カ月で支払い
 2016年11月設立のソーシャルインテリア(東京都港区、旧subsclife)は、新品家具・家電のサブスクリプションサービス「サブスクライフ」や家具・家電のオフプライスマーケット「サブスクライフ オフプライス」等を中心に展開してきた。
 オフィス向けでは、執務環境の構築、空間提案、新品家具・家電のサブスクリプションサービス「ソーシャルインテリア オフィス構築支援」を提供している。オフィス家具・什器のサブスクリプションサービスで、月額で必要な時に必要な分だけ必要なモノを所有せずに利用できる。レンタルは使い続けると商品価格を超えてしまうが、「ソーシャルインテリア オフィス構築支援」は商品価格を超えない月額料金を設定した。金額は、利用商品の販売価格の約9割を12カ月もしくは24カ月で支払う。利用商品によって月額料金が変化する。利用期間終了後、残り約1割の支払いで購入。または無償で返却(送料不要)を選択できる。
 昨今では、什器のサブスクリプションを利用する企業が増えている。背景には、同サービスのメリットでもある「執務環境をアップデートしやすいこと」が挙げられる。利用企業の中には、成長スピードの早い会社や積極的に社員雇用を行う企業、また社内の執務環境が定期的に変わる企業もある。これら執務環境が変化しやすい企業にとっては、レイアウト変更や座席の増減等に柔軟かつ迅速に対応できることは魅力的だ。また新品を購入するよりもコストは大分安く抑えることができる。

セットアップでの賃貸 中小規模サイズに最適
 ビル業界で普及の進む要因に、セットアップオフィスも挙げられる。セットアップとは、専有部内に事前に什器が備わった貸し方やオフィスのこと。100坪以上のオフィスよりも中小規模サイズに適しており、デベロッパーが保有する中小ビルで実施されている事例もある。実際、100坪以上になると会議室や席数、社員用リラクゼーションスペースの大きさ等が企業によって違いが大きくなる。中小オフィスの場合が効率的で、サイズや設備内容にも合致しやすい。
 しかしセットアップを始めると、リーシングやテナントの入れ替えのタイミングでアップデートや改善が必要になる。この執務環境を変更する際に同社のサブスクリプションが生きてくる。CX推進責任者の直井洋文氏は「エンドユーザーから見て、対応の早さが高評価の要因と思われます。セットアップならばテナントは、移転に関わる初期費用を圧縮できます。一方オーナーは当社の『ソーシャルインテリア オフィス構築支援』を利用すれば、早めにテナントを確保でき、賃料も周辺相場より多少値上げして貸すことができるでしょう」と語った。
 単にセットアップを始めるのではなく、計画的にアップデートが可能なことを視野に入れて始めることが良い。同社はオーナーが抱える移転に関連する悩みやテナント側から見た不安・気になる情報にも応えることができるサポート体制を構築した。それが、CX部。移転などの情報を提供し続ける「プリセールス」と、既存のクライアントに応える「カスタマーサクセス」を提供している。今後は前述のソフトサービスを拡充させながら、利便性向上を図っていく。

契約実績6000社以上 成長戦略に合った移転
 47ホールディングス(東京都渋谷区、ヨンナナ)は、ワークプレイスの総合コンサルティングを行っている。傘下の47では、借主の仲介手数料無料のオフィス検索サイト「officee(オフィシー)」を運営。その他、グループ会社を通じて内装工事やオフィス家具の手配も請け負う。
 officeeは首都圏をはじめ北は札幌、南は福岡まで対応した、全国のオフィスエリア対象の検索サイト。契約実績は6000社以上。リピーターも多い。需要の背景は、移転目的をしっかりと自社オフィスに落とし込む重要性が増しているため。なぜ移転するのか。どの程度の面積が必要なのか。新しいオフィスにはどの様な役割や機能・効果を期待しているのか。といった内容まで掘り下げてヒアリング。「社員が行きたくなるオフィス」を求める企業には必須の項目となった。同社では前述のニーズに応えつつ、企業の成長戦略に合った坪数や環境を提示している。
 これまでに多く見られたケースが、企業側が移転先の適正な坪数を把握できていないこと。現状の賃貸面積から見て「これくらいかな」との算段で探していることは意外と多い。同社では移転検討中の段階で社長や担当者と直接話し合い、成長戦略や拡張ビジョンとも照らし合わせてオフィスを探す。社員数が増加しても対応できるオフィスを見つけ、一緒に現地内覧も実施。移転先となる「スペースの最適化」へ、企業と伴走するようなイメージで取り組む。
 また移転後の運営面のサポートも実施。オフィス環境が社員へ正しく機能しているかなどは把握しにくい。単にテレワークも意識したオフィスを造るのでなく、目的や効果の具現化に繋がるような環境づくりも行う。
 グループ会社には、移転時における内装工事等を請け負う47内装がある。会議室の新設や床・壁紙の張り替えといった部分的な変更やメンテナンスにも対応。企業の求める設備環境や室内デザインを、イニシャルコストも踏まえて構築する。

スタートアップ20坪から大型の500坪も対応
 47内装 取締役の隅中至誠氏は「移転先のビルやオフィスの設備環境等によっては、できない内装やデザインがあります。契約後にそのことが発覚し『こんなはずではなかった』や『使いにくいならば、このオフィスに移転しなければよかった』と不満を抱えることも考えられます。一緒に現地内覧を行うこと、移転におけるビジョンを共有することで、移転でのミスマッチや不満を解消。加えて入居後のメンテナンスも想定した、3カ月、6カ月用のアフターフォローも行っています。使用しながら改善点を洗い出し、ブラッシュアップしていくことが可能です」と語った。
 直近では、産業廃棄物の収集運搬やリサイクル関連業務を行う企業の移転に協力。物件探しから移転まで、1年以上かけた大型プロジェクト。新規オフィスは約200坪。複数拠点からの集約移転となった。しかし元は何から始めれば良いか分からず、適正な面積も掴めていない手探りの状態。何が必要なのかキャッチアップし、PMとして進行。2022年12月に完了。様々な箇所にリユース品やリサイクル品を採用し、テナントの事業を表現。エントランスにはモニュメントの設置を提案。事業への注目と話すきっかけも造った形だ。
 スタートアップの20坪から、大型の500坪も対応する。今後移転先を探す場合は内装業者も一緒に協力する姿勢が主流になってくるだろう。

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