不動産トピックス

【今週号の最終面特集】オーナー必見 貸し菜園でビルに付加価値形成

2023.03.13 10:32

ビル屋上の野菜栽培がより手軽に 木質培地「グロウアース」使用の再演システム
ユニット一式を設置するだけ 利用者負担のビジネスモデル
 これまでの屋上菜園や緑化は、ビルオーナー側から見ると満足度は低かった。背景には初期費用とメンテナンスコスト、メンテナンスの手間も掛かることが挙げられる。一度始めれば撤去費用も発生。屋上スペースの有効活用とはいえ、資金面や維持管理面での課題解決が望まれていた。一方大建工業(大阪市北区)は、実際の土壌よりも軽量な木質培地「グロウアース」を開発。グロウアースを使用した菜園システムの提供を始めた。

木質培地を活用 みんなのエコ菜園
 大建工業は、2021年に木質培地「グロウアース」の販売を開始している。軽量等が強みのグロウアースを使用して現在は「みんなのエコ菜園」の事業化に向けた取り組みを進めている。
 「みんなのエコ菜園」は、オフィスビルや賃貸住宅、商業施設の屋上や空きスペースなどで手軽に野菜栽培ができる菜園システム。未活用になりがちな屋上等のオープンスペースへ簡単に導入でき、貸し菜園としても機能する。対象は主に貸ビル業を行うビルオーナーやデベロッパー、来館者の多い商業施設、自社ビルを保有する企業など。同社がシステム化されたユニットを設置場所と合わせて提案。ユニットはプランターやベンチ、栽培道具、什器、苗などで、設置場所に合わせたプランニングも可能だ。栽培のアドバイスや管理も含めた保守付きのコースも用意している。専門知識がなくとも安心かつ中長期的に利用できる。
 また大規模工事が不要で、既存物件にも短期間で導入できることが強み。一般的な緑化システムであると、新築時での設置を前提とするものが多い。大掛かりな工事が発生し、設置コストも掛かる。工期も従前より延びることが予想される。屋上の耐荷重や防水工事等にも関係してくるため、気軽に導入しにくいことが難点であった。これら課題を大幅に改善したのが「みんなのエコ菜園」で使用されるグロウアースだ。

重さは土壌の2分の1 軽量で持ち運びに便利
 グロウアースは国産の木材(杉)に国内初の特殊処理を施すことで、野菜・花卉などの栽培に適した性能を付与した木質培地。元が木の端材でありながら、実際の土と似た見た目をしている。だが似ていて異なる性質を持つ。最大の特長は軽量性。実際の土壌のおよそ2分の1と軽く、持ち運びに便利。耐荷重での問題が改善され、設置工事は長くみても1週間ほどで済む。また元が木の端材なので、菜園の利用者は手や服が汚れないといったメリットもある。廃棄では燃えるゴミで出すことが可能。繊維形状が絡み合うことで土のように吹き飛ぶこともほとんど無い。雑草も生えにくいので除去作業の負荷も少ない。衛生的でありながら、メンテナンス業務や廃棄・処理にも困らない点が好まれている。
 次世代事業開発部の秋葉裕太氏は「グロウアースを使用しての新たな空きスペース活用方法が『みんなのエコ菜園』です。『都心で手軽に植物を育てる』というコト提案を通して、人が集まる、緑あふれる開放的なコミュニケーションスペースの創出が可能となります。商業施設であれば菜園を利用したい、近くで手軽に植物を育てたい、等の人が集まります。貸し菜園として運営すれば、ビルオーナーの費用面での負担やメンテナンスの手間も低減できます。菜園からのシャワー効果で、ビル内に入居する店舗の顧客増加にも繋がるでしょう。『みんなのエコ菜園』はシステム化されたユニットを設置するだけ。開始、設置場所の変更も手軽にできることも魅力と思います」と語った。

木質資源の有効活用 SDGsへも寄与
 開発の背景には木質資源の有効活用があった。建材事業、素材事業を展開する大建工業は、加工時に発生する木の端材を「何か有効活用できないものか」と長年思案してきた。その一環で2017年に木質の土壌改良材「DWファイバー」を開発。更にDWファイバーで培った木材加工技術を応用し、21年1月に国産材を活用したグロウアースを開発・発売開始した。同年4月には社員から新規事業案を募る「個人提案型ベンチャー制度」を導入。この事業化検討テーマの第一弾として選出されたのが、グロウアースを活用したコト提案となる「みんなのエコ菜園」だ。以降はビルオーナーや事業者を中心に貸し菜園ビジネスとして広まっている。
 港区南麻布に立地する7階建てのシェアオフィス「SNUG MINAMI AZABU」では、屋上約50㎡に同菜園をトライアル導入した。施設を運営・管理するのは、都心を中心にシェアオフィスを展開するリアルゲイト(東京都渋谷区)。サーキュラーエコノミー(循環型経済)に関心があり、その一環として屋上菜園を検討。方法を探った際に大建工業のグロウアースを知った。導入後は菜園運営をプロのマイファーム(京都市下京区)と協力。マイファームは耕作放棄地の再生及び収益化事業、農の体験事業(貸し農園、農業体験・セミナー)などを展開している。屋上菜園実施において課題は多いが、グロウアースにより従前の課題が解決。生育の良さもあり、バジルやミント、ナス、オクラ等を栽培している。
 また菜園はビルの差別化と共に、SDGsへの取り組みにも寄与する。国産木材や間伐材等を活用した木材チップが原料であるため、「みんなのエコ菜園」の設置で脱炭素社会をはじめとするSDGsへの取り組みに寄与。話題性や他の施設との差別化、建物価値の向上なども期待できる。テナントとの触れ合い、利用者同士の繋がりも形成できるため、コミュニティ形成にも役立つ。「みんなのエコ菜園」は、これからの屋上活用や菜園ビジネス、コミュニティ形成の手段として定着してゆくだろう。


商業ビルとの親和性が高い「みんなのエコ菜園」
 これまでの屋上菜園や緑化は、初期費用及びランニングコスト、日常のメンテナンス等の手間も発生していた。これらが「みんなのエコ菜園」では改善。利用料による収益性が見込めるため、オーナー分は軽減される。好ましい設置環境としては、最低50㎡の敷地と水栓。日当たりが良好なことも重要。午前中の日当たりが良いと、野菜の成長に好影響となる。また来館者の多い商業ビルとも親和性が高い。テナントに園芸店が入居していれば、店で購入した商品を使用できるメリットもある。

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