不動産トピックス
【今週号の最終面特集】リーシングに効果発揮 VR・CGの活用事例
2022.11.28 11:35
VRをHPに掲載 保有ビルのアピールに 現地内覧と同等のクオリティ実現
オフィスでも内覧用のVRが浸透してきた。住居ほどではないが、緩やかに普及が進んでいる。清和綜合建物はコロナ禍前から注目しており、360pictと協力して開始。後にHPへの掲載に繋がり、現在はビルへの問い合わせに対してHPのVR画像を案内する。
現在VRは7物件 内覧者からも好評
清和綜合建物(東京都千代田区)は自社HPにて、保有物件の外観・室内の様子を疑似体験できる「VR画像」を掲載している。同サービスが、ビルの認知度向上やアピール等に貢献した。
これまでビルや住宅などでの不動産賃貸のほか、ビル管理の受託や不動産活用に関するソリューションの提供等を展開してきた。東京・大阪を中心に展開し、保有棟数も70棟を超える。そんな同社がVR画像を導入したきっかけは、長年入居していた大口テナントが退去したこと。2018年に同社の保有ビルで既存テナントが退去。退去が決まってから、直ぐに新規募集へ取り掛かる。しかし長期にわたって高稼働であったこともあり、手元にはビル竣工時の紙のパンフレットしかなかった。
そこで着目したのがVR。従前から付き合いのあった仲介会社より360pict(東京都渋谷区、旧社名レキシ)を紹介されて、同年2月頃から検討開始。本格的に導入開始したのは8~9月頃。「お客さま(テナント候補先さま)」へURLを送信し、クリックするとVR画像のページに繋がる仕組みを活用した。
その後、空室率が低下してテナント退去・空室発生は殆どなかったことから、活用頻度は減っていった。しかし、コロナ禍を迎えると都内の空室率は緩やかに上昇。今後、発生するかもしれないテナントの入れ替えやテレワーク採用に伴うオンライン需要の高まりなども意識して、HPへの掲載に繋がっていく。
理事 事業部門 リーシング統括の宮本雅典氏は「弊社のHPに常時掲載し始めたのは、2021年7月頃から。VRを保有ビルのアピールに生かすことができると思い、開始しました。ビルへの問い合わせ等はHPのVR画像を案内すれば、現地に直接足を運ばなくても遠方からリアルに近い内覧体験が可能です。当社にとってはスピーディーな営業活動や物件案内に役立ち、また内覧したお客さまにとっては現地内覧ができなかった上席への提案ツール等に活用できます」と語った。
これまで同社では、内覧するお客さまに対しては、案内の際に撮影画像を貼り付けて資料を渡していた。これら手間が大きく解消され、内覧したいお客さまは自由に好きな時間・場所からビルの内覧体験ができる。解像度も高いため、現地内覧と同等のクオリティを実現。利便性の高さから同社だけでなく、内覧したお客さまからも好評だ。現在VR画像は7物件が使用。エントランスや専有部内、外観、エレベーターホール、中には屋上からの眺望や駅直結の出入口も内覧体験ができる。
気になった人は、一度同社HPからVRを利用しては如何か。自社リーシングの参考になると思われる。
掲載棟数800棟以上 高画質なVRで差別化
オフィスバンクの100%子会社である360pict(東京都渋谷区、サブロクピクト)。VR画像を提供しており、現在取引のあるビルオーナー・ビル管理会社は150社以上。掲載したビルの棟数は800棟以上に及ぶ。
360pictのVRは、プロのカメラマンが一眼レフで撮影したデータを使用し作成。VRといえば簡易的な360度カメラの印象があるかもしれないが、360pictは一眼レフならではの高画質なVRで差別化、肉眼に近いクオリティで現場の開放感や雰囲気を伝えている。昨今は自社オフィスのブランディングや新卒採用のツールとしても使用。ウェブ面接の定着が影響し、スマホやPCからいつでも気軽にオフィス見学を行う人が増えた。入社後のイメージが湧きやすく、企業側は優秀な人材の確保や応募増加に繋げやすくなった。
VRはオフィスリーシングにおいても機能している。企業が移転先を探す場合、候補となるオフィスの絞り込みに効果を発揮。現地まで足を運ばなくとも内見ができ、オーナーや仲介側も立ち会いの回数が格段に解消される。社内での会議や上席への報告・確認が素早くでき、移転における企業の検討スピードが早くなることも魅力。最近ではVRで撮影した空き区画に什器などをCGで表現する事例も増えている。専有部内に柱がある場合や、貸室の形状が複雑でも対応可能だ。
営業部の田中真衣子氏は「プランは2つ。1つは制作費+毎月の利用料1万円のプラン。空室があるときだけ費用が発生します。当社では一般的なプランとなり、利用者の多くが当プランでの契約です。もう1つは、初回費4・5万円のコンパクトなプランです。VR画像は3カットで、手軽かつ格安プランです。CG作成費用は都度見積りです」と説明する。
実際、依頼する企業8割は綺麗に写る「実写」での作成を行っている。一方、新築ビルでのCGVRの導入も増えている。物件が建つ2年以上前からリーシングに活用できるのも魅力だ。実写だけなら最短で2週間程度。CGであれば数量にも影響されるが、平均で1~2カ月程で納品可能。昨今は店舗やホテルでの導入も増えており、営業ツールとしても機能している。清和綜合建物のHPように、自社ウェブサイトへの埋め込みも可能。専有部が同じ造りであれば流用もできる。開始当初は大規模オフィスビルからの依頼が多かったが、昨今は中小規模でも増えている。
田中氏は「実写VR以外にもCGが普及し、オフィスや建物のリーシングにも役立てることができるようになりました。中小ビルオーナーからオフィス仲介会社、リーシング業務も行うPM会社まで波及しています。扱うオーナー・仲介側、利用するテナント側の双方に使いやすい・分かりやすいことが大きな特長だと思います」と語った。今後も順調に件数を伸ばしていくと思われる。