不動産トピックス

【今週号の最終面特集】不動産オーナー・NPO団体が実践 地域の空き家・空き室問題

2022.11.07 10:34

空室改善可能な「としま居住支援バンク」住宅確保配慮者と空き家・空き室マッチング
民間による空き家・空き室対策 地域のブランディングにも直結
 今年の「不動産ソリューションフェア」開催地は豊島区の池袋。同区では従前から空き家・空き室を持つ不動産オーナーと、住宅確保が難しい人のマッチング及び支援活動が活発に行われている。行政ではなく民間企業が活動の中心にいることも特徴的。着実に成果を上げており、空き家・空き室の改善が進んでいる。同ケースが地域のブランディングにも効果を持つ。

耐震・法令適合確認無くても登録可能
 豊島区居住支援協議会は2012年7月、区内の居住支援関係団体と不動産関係団体、豊島区等が連携して設立された。以後、区内の空き家・空き室のマッチング「としま居住支援バンク」等を中心に活動している。
 協議会は区内の低額所得者や被災者、高齢者、障害者、シングルマザー、外国人など、住宅確保に配慮を要する者(以下、住宅確保要配慮者)に対して情報提供や支援活動等を展開してきた。住宅確保要配慮者は民間賃貸住宅への円滑な入居が難しく、年々改善傾向とはいえ未だハードルは高い。一方区内には経年劣化などを理由に、入居者確保で苦労する賃貸物件がある。双方の課題をマッチングできれば、より快適な住環境を区内に整備できる。前述の想いからスタートした制度が「としま居住支援バンク」だ。
 同制度に登録可能な物件は、耐震・法令適合確認がなくとも可能。登録を希望するオーナーは物件情報シート等に記載し、豊島区住宅課へ郵送。面談や現地確認を経て、登録の可否が伝えられる。その後は協議会や区内の居住支援関係団体(登録団体)と連携しながら、入居者をマッチング。登録団体を通じてマッチングしない場合は、HPに掲載して募集する。一方入居者からの依頼は主に区の福祉総務課入居相談窓口へ寄せられる。福祉総務課と協議会で依頼内容から最適な登録団体へ案内。「高齢者からの住居確保や支援依頼、更に就労支援までも想定した依頼であると、居住支援団体の○○が好ましい」といった流れだ。

登録物件数は23件 オーナーの協力進む
 協議会に参加・協力する、としまNPO推進協議会の柳田好史代表理事は「不動産オーナーから見れば、物件の耐震補強性能や法令適合確認が求められない点は大きな魅力でしょう。自身の年齢や資金面から建替え・大規模なバリューアップを行うことは難しい。とは言え、空室を放置することも好ましくありません。空き家・空室を抱えるオーナーはとしま居住支援バンクを活用し、空室改善に繋げては如何でしょうか。現在登録物件は23件。少しずつですがオーナーや不動産事業社にも認知・協力を得られています。行政と民間が協力・連携して展開する居住支援のマッチング制度は、全国でも極めて稀。豊島区の魅力も一緒にアピールすれば地域のブランディングにもなり、物件の資産価値向上にも寄与できます」と語った。
 以前から不動産オーナー・事業者向けの居住支援セミナーや相談会といった、業界との顔合わせの機会を創出してきた。同制度に賛同するオーナーは着実に増えつつあるが、未だハードルは高いまま。それでも昨年7月には、としま居住支援バンクに上池袋1丁目の物件4件が登録された。
 柳田氏は「住宅セーフティーネット制度では登録できない物件、例えば屋上の増築などを行った築古住居等を登録し、かつ仲介業者とも協力して、より社会貢献性の高い内容に整えていくことが重要です。様々な視点から双方を繋げるマッチングを広めていき、更なる機会創出に貢献できればと思います」とのこと。
 入居前の支援内容であれば、不動産店への同行、身元保証人の代行や緊急連絡先の提供、住まいの提供など。入居後の支援としては、見守り・安否確認、日常の生活支援、入院手続きの代行や死後整理の手配、などが範囲。これら支援の充実を図ることで、住宅確保要配慮者に優しい区や街の形成に繋げていく。「としま居住支援バンク」は、東京都宅地建物取引業協会豊島区支部、全日本不動産協会豊島文京支部会員の事業者で12月からオンラインでの直接登録が可能となる。

「空地・空家の窓口」看板設置で啓蒙活動
 大阪府泉佐野市を中心に、不動産の仲介・売買・保有運営・管理・再生事業等を手掛けている情報都市。先月から空地や空き家に関する相談窓口の看板を設置。地域に根ざした空地・空き家対策に取り組む。
 ビルオーナーでもある情報都市は、民間業者として日本で初めてUR都市機構から賃貸住宅団地を取得。取得後の「佐野湊団地」を建物管理や再生のノウハウを生かして改善。当時(2017年)58%であった入居率は、現在90%以上の高稼働へ繋がった。同団地以外にも様々な再生事例を持ち、不動産事業を通じて地域への社会貢献や活性化等も展開している。新たに開始した空地・空き家対策も同様の想いから開始。空地・空き家に関するオーナーの悩みをワンストップで解決する「空地空家の窓口」を設置した。

空地・空き家の悩みワンストップで対応
 同窓口は、オーナーから寄せられた空地・空き家の売却や賃貸・駐車場活用、解体などの最適な提案と提案後のサポートを行う。相続後の活用方法に苦慮するオーナーや解体を望むケース、放置している人などが対象。課題のヒアリングから提案、同社での売却や買い取り提案、提携士業や解体業者の紹介、補助金の無料アドバイスなど、ワンストップで相談に対応できる。
 広報企画室の河島光佑氏は「総務省による住宅・土地統計調査によれば、全国の空き家の総数は820万戸。448万戸から820万戸と、この20年で1・8倍に増加しています。泉佐野市でも空き家数は6970戸と言われ、空き家率は15・1%。全国平均の13・5%を上回っています。当社は市内の空き家の実態を図るべく、目視での物件調査、登記調査、現地の調査や住民・行政への聞き込みを行ってきました。独自に町ごとに空き家率を算出。所有者不明の土地や相続未登記物件等の把握も行っています。地域の実態を把握することで、より地域に根ざした商品開発や提供を行うことが可能です」と語った。
 空き家率の高いエリアでは、看板設置等による啓蒙活動を行う。情報都市が窓口として様々なサポートが可能であることを周知させ、同地域での空地・空き家改善を進める。

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