不動産トピックス

クローズアップ 環境配慮・脱炭素編

2022.11.07 10:22

 環境への配慮は、ビルをはじめとする賃貸経営においても欠かすことができない必須事項となりつつある。コスト削減効果はもちろん、入居者へのアピールにもなり得る施策・サービスを紹介する。

古毛布のリサイクル事業開始 独自の特殊技術で裁断・再生・再販 リネン業者や宿泊施設に提供呼びかけ
 業務用毛布の製造・販売などを手がける丸竹コーポレーション(大阪府泉南市)は、特殊技術を用いた毛布の下取り・再生・再販事業をスタートさせた。「『地球環境にやさしいリサイクル毛布を使用』ということは取引先や消費者への大きなアピール材料になる」として、宿泊施設やリネンサプライ事業者などに古毛布の提供を積極的に呼びかけている。
 同社は1953年の設立。業務用毛布などのテキスタイル事業を中心に、土木・建築用のフェルト資材事業などを手がけている。変わったところでは介護事業も展開しており、サービス付き高齢者向け住宅も運営する。
 業務用毛布は、リネンサプライ事業者を通じて全国の宿泊施設や保養所、病院や介護施設、フェリー運航会社などで使用されている。また、災害用備蓄として全国の自治体に納入されている。
 こうした業務用毛布は、利用頻度にもよるがリネンサプライ事業者の場合、大体5年程度で寿命を迎えるという。古くなったものは発展途上国に送られて引き続き使用されることもあるが、破棄されるケースが少なくなかった。処分にはコストがかかるだけでなく、焼却時にCO2が排出されることも問題になっていた。
 「毛布はリサイクルが困難な製品です。細かく裁断してしまうと、毛布特有のフワフワとした繊維の感触が損なわれてしまうのです。そのため、これまでは靴の中敷きに混ぜるぐらいしか使い道がありませんでした」(同社立花克彦社長)
今回、同社では裁断をしても繊維のフワフワ感が損なわれないオリジナルの技術を開発。これにより古毛布を40%程度使用して、新しい毛布を製造することが可能になった。
 現在「再生した毛布を購入してもらう」ことを条件に、古い毛布を最低100枚からのロットで下取りしている。価格は毛布の状態にもよるが運送料込みで1枚数百円程度。目安として約1カ月半で再生毛布として納品することが可能。
 「再生する際に、要望に応じて『静電気抑制』『難燃』『抗菌・抗カビ』などの様々な機能を新たに付加することもできます。これに加えて引き取った毛布の品質・状態によって再生する毛布の品質も違ってきますので、実質的にはオーダーメイド製品となります。そのため、販売価格もバラバラになりますが、1枚で1万3000円程度がベースになると思います。
 また、買い取りは、油汚れなどの極端な汚れ・劣化が無ければ、毛布以外にも繊維製品全般に対応する。過去には大手紳士服量販チェーンが来店者から下取りしたスーツを毛布に再生し、それを災害備蓄用として購入してもらった例もあるという。
 同社としては、アパレルなど繊維製品を扱う企業の在庫や、一般企業で不要になったユニフォーム類なども再生可能として提供を呼びかけている。
 立花社長は「今年6月に大手ホテル予約サイトのブックキング・ドットコムが発表したデータによると、日本の旅行者の73%が『サステナブルな旅が重要』と回答しているそうです。このように昨今、カーボンニュートラルへの貢献など、SDGsへの取り組みが企業の価値を判断する基準になってきています。『再生毛布を使用している』と謳うことは宿泊施設においては消費者に対する大きなアピール材料になるのではないでしょうか」と、再生毛布利用のメリットを語る。
 同社では、今後もリサイクル技術の開発などに力を入れ、2030年に自社工場でのCO2排出量をゼロに、2035年には化学繊維を使用した新品毛布の販売を終了することを目標に掲げている。

木造ビルのモデルルームを開設 賃貸併用可能な5階建を「普及型純木造ビル」で
 アキュラホーム(東京都新宿区)は5日、川崎住宅公園に日本初となる「5階建て純木造ビル」モデルハウスをオープンする。また、木造建築を日本全国の街並みに復興する「Re:Treeプロジェクト」を本格スタートさせる。
 モデルハウスは延床面積439・53㎡、都市部での資産活用や収益付き住宅となることを想定し、1階が店舗、2階が貸オフィス、3階が賃貸住宅、4~5階がオーナー住居という、都市部で人気の要素で建築。木の現しでつくられた純木造ビルによる資産活用イメージをリアルサイズで見学することが可能。
 同社は、木造建築の普及を目指し、木造ビルを一般化するため「普及型純木造ビル」を開発した。同ビルは一般流通材料と住宅用木材プレカット加工技術により、特殊な技術や資材を使用しないことでコストを抑え実現している。さらに耐震実験や耐風実験、カベワンGP(グランプリ)への参加など実証実験を実施し研究開発を実施。2016年、2017年には特別な金物を一切使用せず一般大工のみで中規模木造を実現した。

国内初の「LCCM賃貸集合住宅」を開発 建物ライフサイクルにおけるCO2排出量をマイナスに
 大東建託(東京都港区)は10月5日から、同社の全国8営業エリアで、ライフ・サイクル・カーボン・マイナス(LCCM)基準を満たす賃貸集合住宅の新商品「NEW RiSE LCCM(ニューライズ エル・シー・シー・エム)」のを販売している。
 LCCM住宅とは、建物の建築から使用時、解体までのライフサイクルにおいて排出されるCO2を、創エネや省エネなどによってマイナスにする住宅のことで、LCCM基準を満たす規格型の賃貸集合住宅商品は国内初となる。
 「NEW RiSE LCCM」は、今年5月に発売した賃貸集合住宅商品「NEW RiSE」をベースに、断熱性能の強化や蓄電池の設置、太陽光発電による創エネ、また、資材の高耐久化により建物修繕サイクルを長期化させ、修繕時に発生するCO2を抑制させるなど、さらなるCO2削減・抑制に向けた仕様・設備を強化し開発されたもの。
 天井、外壁、床は、断熱性能を向上させることで熱の損失を防ぎ、エネルギー消費コストを軽減。屋根形状は片流れ屋根とし、太陽光パネルの搭載容量を最大限まで増やすことで発電効率を向上。太陽光パネルで創出した電力は蓄電し、自家消費率を増加させるとともに、災害などによる停電時には充電した電力を自立型コンセントで利用でき、地域防災にも貢献。
 さらに、リビング・ダイニングと洋室にはそれぞれ高効率型のエアコンを設置。エネルギー効率の高い家電で暮らしの消費エネルギーを削減しつつ、入居者にとっての快適な住まいの実現と両立させている。
 大東建託は、今後も「LCCM賃貸集合住宅」の普及に取り組むことで、建物の資産価値・社会的価値向上と企業活動を通じた脱炭素社会の実現に貢献していくとしている。

PAGE TOPへ