不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2022.05.16 10:59

Tabist DX支援で加盟店売上24%増収に貢献 非対面・省人化で業務スリムに、OTA施策で客単価上昇
北海道ホテルで成果 テクノロジー活用
 観光・宿泊産業のDXを推進しているTabist(東京都港区)は、加盟店パートナーの小樽グリーンホテル(北海道小樽市)とDX推進で業務連携した。
 両社は事業の収益化や業務の最適化に向け、施設のDXを推進する。同ホテルは従業員の業務工程を棚卸し、可視化することで、作業ごとの所要時間や従業員の体制の見直しを図り、テクノロジーが活用できる領域の選定を実施。USEN―NEXT GROUPのアルメックス製の自動精算機である「KIOSK(キオスク)」や宿泊管理システム「innto (イントゥ)」、非接触式カード錠システム「パピット」を導入することで、チェックイン業務の自動化や客室に関する情報の一元管理を実現させた。
 チェックイン時のカスタマーサポート業務である「予約確認」、「宿泊名簿記入」、「支払い対応」、「領収書の発行」、「鍵受け渡し」などを非対面・省人化を推進することで、大幅に業務のスリム化した。
 自動精算機とICカード錠「パピット」の導入により、宿泊名簿記入や支払い、領収書発行、鍵の受け渡し業務を無人化するほか、宿泊管理システム「innto」により予約情報のシステム連携をする事で、全てのチェックインプロセスを一元的に管理できるよう、自動化・省人化。これにより、DX導入前は1日あたり4名体制、合計45・5時間を要していたオペレーション業務が、提供するサービス価値は変わらないまま、DX導入後は2名体制・21時間で行う体制が構築され、2名の人的リソースの削減、24・5時間分の労働時間短縮に繋がるなど、およそ50%の業務最適化ができたという。
 一方、テクノロジーの導入により創出された余剰時間は、宿泊客への対応へのフォーカス、顧客満足度の向上に向けた食を含めたサービスの強化や、従業員のホスピタリティ研修を実施するほか、他領域での事業展開に向けて社内プロジェクトを発足するなど、有効に活用している。 
 Tabistのパートナシッププログラムを通して、ダイナミックプライシングとOTAマネジメントを実施したことで、従業員のホテル勤務時間を削減したものの、単価の上昇に寄与し、小樽グリーンホテルの2022年度第3四半期(2022年1月~3月)の売上は24%の増収を達成したという。
 同ホテルは、「今後もダイナミックプライシング、Tabist独自の集客チャネルの活用、キャンペーンによる売上向上に期待するとともに、ゲストに喜ばれる施設へと常にリニューアルを重ねていけるのではないかと期待しています。コロナ後に大きく変化したマーケットに対応できるよう、DX推進による生産性の向上によって、強い推進力を持って進んでいきたいと考えています」と話す。

5億円の資金調達 事業成長を加速
 Tabistはまた、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ(東京都港区)が運営する、JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合から5億円の資金調達を実施した。今後は、Tabist独自のプロダクト開発に注力するとともに、全国47都道府県のホテルや旅館などの宿泊施設の加盟店への契約促進や、ミレニアル世代を中心とした宿泊利用者拡大に向けた訴求の強化を図り、さらに事業成長に向け加速させていきたいという。
 Tabistとしての初調達となる。JICベンチャー・グロース・インベストメンツはこう話す。「コロナ禍の長期化も相俟って、我が国の観光・宿泊産業は、世界的評価が高いサービス品質の維持向上と収益性の両立が喫緊の課題となっています。当社は、投資支援活動を通じて、当社が開発提供するグローバル水準のテクノロジー導入と、地域の特色を生かし、地域に寄り沿った地道なサポート活動が加速し、観光・宿泊産業のさらなる成長と地域経済の活性化に貢献できることを期待しています」。
 中小の旅館・ホテルは長期化するコロナの影響から著しい稼働率の低下に直面し、同時に、有利子負債も未曾有の規模に達している。また、客室の生産性に関しては、コロナ前でも小規模施設は非常に低いのが現状だ。こうした中同社は、「宿泊施設の個性を活かす、新たな仕組みをつくる」をミッションに、2022年4月1日に社名変更、ならびに新しいTabistブランドを立ち上げ、日本の宿泊施設にあった宿泊管理システムや、ダイナミック・プライシングの仕組みを提供することで、観光・宿泊産業のDXを推進しており、現在、43都道府県で235施設の国内のホテルや旅館が加盟している。

シャトレーゼHD 「シャトレーゼホテル 石和」始動
 長野・山梨・静岡エリアで複合リゾートビジネスを展開する、シャトレーゼリゾート八ヶ岳(長野県南佐久郡)は、シャトレーゼホールディングスが2022年4月1日付で取得する「かんぽの宿 石和」を「シャトレーゼホテル 石和」と屋号を改め運営管理を開始した。
 山梨県が誇る温泉地「石和温泉郷」で同社2件目の運営となる「シャトレーゼホテル 石和」は、全54部屋からなる温泉ホテル。落ち着いた雰囲気に包まれる和室、ビジネスや気ままな一人旅に適した洋室シングル、夫婦・友人同士向けの洋室ツイン、幅広い年齢層の需要を期待する和洋室、露天風呂付き和洋室、バリアフリー部屋や浴室、愛犬と一緒に泊まれる部屋など、バリエーション豊かな客室が特徴だ。 
 駐車場を活用した車中泊サービス「くるまで湯~泊(ゆ~パーク)」を提供し、外来客も利用可能なレストラン、日帰り温泉利用など、幅広いニーズに対応する。
 順次、施設内の改装などリブランディングを進め、新しいコンテンツを拡充予定。車で3分ほどのグループ施設「湯けむりとワインの宿 富士野屋」の他、近隣のグループ施設を横断する新たなプランなども開発し、さらなる体験型リゾートとしてコンテンツを強化していく計画だ。

いちご 独自開発レベニューマネジメント加速 導入施設が前期比2.6倍127棟に
 いちご(東京都港区)の自社開発によるレベニューマネジメントシステム「PROPERA」の導入施設が前期比2・6倍の127棟にまで増加しているという。
 同システムは、AIによりホテル等宿泊施設の顧客満足度向上と収益の最大化を図るもので、所有ホテルはもちろん、全国の施設に対して外部販売に力を入れる。国内には約5万棟の宿泊施設があるが、5年以内に2000棟へとシェア拡大を目指していく計画だ。
 同社がこれまでに培ってきたコンサルティングと業務支援等のノウハウを、アルゴリズム化して搭載。これまで人的作業に頼っていた部分をAIによって、宿泊施設が本来持つポテンシャルを最大限発揮できるよう独自開発した。
 従来から使われてきた過去の複数要因の解析手法に加え、予測能力の高い機械学習を実装することで、365日先までの状況予測を繰り返し、宿泊施設に対し最適な価格を提案する。
 同社では保有するホテルに対し、レベニューマネージャーのノウハウ活用により、年間収益を約10~40%向上させた実績を持つ。このノウハウを結集した同システムは、グループのいちごホテルリート投資法人(3463)が保有するホテルのテスト運用を経て、本格的に外部販売を開始した。全国の宿泊施設に対して、収益の最大化と労働生産性向上を支援し、「課題解決」と「競争力強化」を促す。
 複数の宿泊予約サイトを一元管理するサイトコントローラーの運営会社各社と提携を進めている。最大手の「手間いらず」とは既に連携しているが、今後の提携予定各社の取り扱い宿泊施設数は、約1万8000棟にも及ぶ。一方で、手動操作等や月額による低価格のプロモーション版の提案にも注力し、シェア拡大を目指す。
 同社は、2019年より長期 VISION「いちご 2030」を推進しているが、その一環として、新規事業創出に力を入れている。ホテル業界はコロナ禍によって、施設運営の大変革期に突入している。「PROPERA」は、「不動産×IT×観光」の融合したビジネスとして、同社の期待は大きい。

湘南レーベル ライフスタイルブランドとのコラボ部屋
 DDホールディングスの連結子会社である湘南レーベル(神奈川県藤沢市)は「8HOTEL CHIGASAKI(エイトホテル茅ヶ崎)」(神奈川県茅ケ崎市)にて、アダストリアが展開するライフスタイルブランド「BAYFLOW(ベイフロー)」と、期間限定のコンセプトルーム「HanaLoa ROOM by BAYFLOW」の第三弾をオープンさせる。
 コロナ禍で海外旅行できない日々が続く中、「HanaLoa(ハナロア)」の壁紙やアイテムを散りばめた部屋は、南国リゾートの心地いい風やゆるやかに流れる時間を体感してもらえるような空間に仕上げている。
 同ホテルは、「FEEL OCEAN, FEEL LOCAL, FEEL YOURSELF」をテーマに神奈川県茅ケ崎市に2020年7月オープン。2020年サウナシュランを受賞したプールを臨む男女共有サウナはじめ、毎週日曜日開催のヨガレッスン、トゥクトゥクでのビーチ送迎、近隣飲食店の紹介など、湘南のビーチカルチャーをカジュアルに体験できるホテルとなっている。
 同社は現在、「8HOTEL」のほか、「3S HOTEL」ブランドの確立にも力を入れている。このブランドは平塚の「THE HOURS」を10月にリニューアルオープンしたもので、134室の客室のほか、セルフロウリュができるフィンランド式サウナを設置している。「1年半かけてこのブランドを浸透させ、こちらもフランチャイズチェーン展開していきたい」(藤原大和社長)。
 同社は現在、「8HOTELFUJISAWA」はじめとする既存ホテルの改修も進めていく。古いものは既に10年以上が経過しているため、時代に即した設備やデザインに一新する。また、法人部を新たに設置し、法人の集客にも力を入れていく計画だ。
 湘南レーベルは2007年の創業以来、「湘南を世界のSHONANへ」というスローガンのもと、「湘南の感度の高いビーチカルチャー」をベースとした、人々の暮らしにかかわる事業に注力。ホテル運営事業はじめ、飲食事業、貸コンテナ事業、賃貸事業、戸建て不動産販売事業、貸別荘事業等を展開している。

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