不動産トピックス

クローズアップ メタバース編

2022.04.18 11:22

 エンターテインメントからビジネスでも活用の可能性が取りざたされているメタバース。海外では様々な取り組みが進む中で、日本でも大手企業などがプロジェクトを発表している。不動産業界での事例は少数であるものの、今後ジワリと広がりそうだ。

メタバーススクール「アカデミア」入学式を開催 不動産業界内外から約30名参加、高い関心集まる<
 国際不動産カレッジ(東京都港区)は12日、メタバーススクール「アカデミア」の2022年4月度入学式を開催した。
 同カレッジは日米不動産協力機構(JARECO)の教育部門として、不動産に関わるグローバル資格の取得や不動産英語の習得講座の開講、ネットワーキングなどを支援している。ガイアリンク(長野県)が提供するメタバース空間「GAIA TOWN」にて「アカデミア」を開講した。今年2月には最短30日間でメタバースについての知識やスキルを習得することができる「メタバースマスター検定」をスタートしている。検定を通じてメタバース空間に受け身で参加するのではなく、自らの得意分野を空間内で生かしていくことを促す。
 今回の入学式には異業種の人も参加。メタバースマスター検定発表と同時期にイベント企画の充実などに向けてクラウドファンディングを実施。メタバースに関心を持った人が支援。その支援者が多く参加していた。
 「アカデミア」内では「国際不動産カレッジ(GREC)」、不動産以外の幅広い学びができる「METASTUDY」、そして趣味の部活動などができる「META Entertainment」の3つから構成される。イベントなどには相互参加することも可能だ。GRECでは通常の講義ゼミや不動産業界を目指す人を対象とした宅建塾、不動産エージェントスクールといったこれまでの定番講座を用意。一方、METASTUDYではメタバースなどを学んでいくテクノロジー研究会や現物不動産だけでなくリートや株式の投資手法を学べるグローバルインベストメントクラブを展開。META Entertainmentでは洋楽に限定したカラオケ部などで楽しみながら学び交流を深めることができる。
 国際不動産カレッジ代表の杉浦隼城氏は「グローバルではメタバースを利用するか否かの見極めの段階は終わっていて、どのように活用していくかに議論は移っています」と指摘し、「日本での活用は遅れを取っていますが、企業は続々と活用に向けた取り組みを発表しています。数年以内にはメタバースでのビジネス活動は当たり前になっている可能性が高い」と話す。早期に学びを進めていくことで、ビジネスにおける活用でもチャンスを手に入れられる機会が増えそうだ。
 なお4月18日には「アカデミア」内でCBREリサーチの大久保寛エグゼクティブディレクターが「Work Beyond COVID」と題するセミナーを開催する。不動産業界の識者がメタバース空間内で講演するのは1月のニッセイ基礎研究所・佐久間氏以来2度目。不動産業界の情報収集やネットワーキングの場もメタバースに移っていく可能性がありそうだ。

テンアップ メタバース空間での業務を実証実験 不動産賃貸仲介で「顕著な効果」
 バーチャルタウン「DXタウン」を展開する、テンアップ(横浜市西区)はメタバース空間で仕事を実際に行うことが可能か調べるために業界初の「メタバースお仕事100個挑戦プロジェクト」を開始している。そのなかでVRが普及している不動産賃貸業界での実証実験にて顕著な効果があると発表した。  同社ではメタバース空間でビジネスを行うことができるのか否かの実証実験を実施。実際の顧客対応を実証実験で行うことで、リアルな対面のみの営業活用、オンラインコミュニケーションツールを使用した営業活動、またVRを使った営業活動などと比較。顧客目線、サービス提供者目線、技術目線、営業数値の観点から分析した。
 「平日のオンライン商談が増えた」、「土日の1組あたりの営業時間が減った」等の結果が得られた。具体的には、これまでの土日に集中していた初回の面談が平日に分散。平日は2・7倍ほど件数が増加。また時間帯も午前・午後に分散。オンラインでの物件仮申し込みも受注したようだ。土日についても1組当たりの物件案内が3・4件から1・8件に減少したほか、1組あたりの営業時間が減少する結果となった。ほかにもメタバースを楽しんでもらうコミュニケーションをすることで、営業機会の確保にも成功したようだ。
 今後は更なる実証実験を重ねていくとともに、企業の社宅ニーズにも対応できる仮説が出たことから、新たな不動産案内の実証実験も開始していく予定だ。

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