不動産トピックス

今週の一冊

2022.01.24 10:15

建物や町を大切にする心を育む

建築を愛する人の十三章
著者:香山 壽夫
発行日:2021年11月1日
発行所:左右社
価格:1700円(税別)

 「広く一般の人に、建築の面白さを知ってもらい、皆で、私たちの住む建物や町を大切にする心を育てていきたい」思いで書かれた本書から感じるのは建築への優しさ、建築を取り囲む自然や人々への愛だ。彩の国さいたま芸術劇場、福島県の三春桜中学校、可児市文化創造センター、新潟県の曽我・平沢記念館など著者の13作品のほか世界の素晴らしい建築物の写真と共に、各章は「大地に根ざして立つ」、「窓は建築の目」、「空間をつくる光」、壁、門、ほか、建築を構成するあらゆる要素への丁寧な解説はまるで文学を読んでいるようだ。放送大学のテキストから企画された本書は、歴史や宗教、広く深い見識が土台となった名著。じっくり読み込み、知識を蓄え考え想像する力を養う各章は、既に要望はあるそうだが、ぜひ国語の教科書に採用してほしいものだ。
 建築だけでなく自然も街もすべて尊重し、建築を「形の言葉」と考える著者はあとがきでこう述べており、心に刺さる。「都市の巨大化は世界中でますます進行し、落ち着いた平安な生活は失われつつある。建築を、お祭り騒ぎの飾りとして消費していく態度も、日常の生活の秩序を失った巨大都市が生み出す妄動にほかならない」

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