不動産トピックス

【今週号の最終面特集】公示価格 マーケットへの影響は

2021.04.05 10:28

地方圏の主要4市では上昇 再開発による都市の活性化に期待
 国土交通省は先月23日、令和3年1月1日時点の公示地価を発表した。住宅地・商業地ともに対前年比でマイナスの地点が多い中、今後の不動産市場に与える影響を専門家の意見をもとに考える。

不動産売買市場では物件の選別進み二極化
 今年1月1日時点の公示地価は、全用途の全国平均で6年ぶりに下落に転じた。訪日外国人観光客数が堅調な伸びを続けてきたこの数年は、三大都市圏の商業地を中心に地価が上昇傾向にあった。しかし、昨年からのコロナ禍の影響で観光や宿泊などの需要が急減し、公示地価も主に三大都市圏での経済の失速を表すような数値となった。中でも大阪随一の繁華街であるミナミの地価下落は顕著で、道頓堀川にかかる戎橋周辺は前年比でマイナス20%を超える下落幅を記録した地点も少なくない。
 対照的に全用途で地価の上昇がみられたのは、三大都市圏に続く地方圏の主要4市(札幌、仙台、広島、福岡)である。特に福岡市の商業地は全国上昇率上位10地点のうち8地点を占める状況。これは訪日客に限らず地域経済が盤石であることに加え、行政と民間が協力し博多の中心地・天神で展開されている大規模な再開発プロジェクト「天神ビッグバン」への期待感の大きさも伺うことができる。
 局所的な地価上昇は観測されたものの、全国平均ではコロナ禍に起因する影響を受けた形となった最新の公示地価。不動産市場にはどのような影響が考えられるのか。投資市場の展望に関して専門家は「選ばれるエリア」と「選ばれないエリア」の二極化が加速すると予測する。フローク・アドバイザリー(東京都港区)の成田隆一氏は「『駅近』や『高い繁華性』といった普遍的な価値基準は残りつつ、コロナ禍で新しい生活様式が定着しつつある中、不動産投資に対する新しい価値基準も生まれています」と話す。また、難波不動産鑑定(大阪市西区)の難波里美氏は、不動産売買市場は買い手優位の局面への移行を示唆しながら、「立地と物件の選別は進み、不動産の二極化がますます進むでしょう」と述べる。不動産に対する投資意欲は国内・外資問わず依然として高く、通年でみればマイナス基調であるものの昨年後半から地価が上昇に転じていることからも、売買市場に関しては「選ばれるエリア」への需要がより高まることが予測される。
 また公示地価の急激な変動は相続にも影響を及ぼす可能性があると前出の成田氏は指摘する。相続する資産が不動産を含む場合、公示地価の急激な変動は財産の分配にバランスを欠いてしまう恐れがある。現在あるいは今後相続のシミュレーションを行う際には、不動産価格の変動を逐次観察し、次の世代で「争族」が起きないような財産分配を想定すべきだろう。

コロナ禍で新しい価値観生まれる
フローク・アドバイザリー 代表取締役社長 成田隆一氏
 不動産価格はインバウンド効果などで押し上げられてきましたが、新型コロナの影響が多い地点ほど下落幅が大きく、まさに今が転換点にあるのだと感じます。ここ数年は都市部の商業地などで異常なまでに不動産価格が高騰してきました。新型コロナウイルスの感染拡大から地価公示に至る一連の流れは、この異常な状態に気づくきっかけになったともいえます。今回の地価公示で特徴的といえるのが軽井沢や熱海といったリゾート地や別荘地での地価上昇です。リモートワークの普及で富裕層を中心にセカンドハウス需要が高まっていることが背景にあるとみられますが、同じ熱海でも駅前立地の不動産価格は上昇している一方で、それ以外の立地では価格が下落している例があります。同様に、千葉県内では市川市など東京都心により近いエリアの住宅地で地価が上昇しています。このことから、生活利便性が高い都市部や街の中心部へ人が集まり、それに伴って不動産価格が上昇する傾向は今も続いていると考えられます。不動産に対する従前までの価値観は引き続き存在しながら、新しい生活様式の中で新しい価値観も生まれています。価値観の多様化や進化の過程で、アフターコロナの時代でも投資対象となるエリアの峻別が進むものと考えています。

売買市場は買い手優勢の状況に
難波不動産鑑定 代表取締役 難波里美氏
 インバウンドバブルは東京、大阪、名古屋の都心部に特に集中していたため、令和3年公示地価ではその反動減が大きかったようです。2020年はコロナ禍により投資家は価格の下落を想定していましたが、金融機関の元本払いの猶予により売り主は強気姿勢を崩さず、売買の成約件数は少ない状況でした。しかし、地価公示の発表により商業地のみならず住宅地にも地価下落が及んでいることが明らかになり、金融機関も融資姿勢が変わること並びにコロナ禍の長期化の影響を受け、2021年の売買市場は買い手優勢になると予測されます。オフイスはリモートワークが常態化していき、余剰オフイスの見直しが本格化し賃料が下がるでしょう。住宅はコロナ失業もしくは収入減により賃料の安いところへ住み替えする生活防衛型住み替えと、余剰宿泊施設の賃貸化による供給過剰から賃料は下がると予測します。一方、外資の日本市場の不動産に対する投資意欲は衰えておりません。ただし、立地と物件の選別は進むため不動産の二極化がますます進むでしょう。新駅の設置、再開発事業によるインフラ整備などで地価が上昇する地域はあるものの、全般的に地価が上がることはないと予測します。

20年下期からは回復基調に
浅井佐知子不動産鑑定士事務所 代表 浅井佐知子氏
 公示地価が発表となり、全体でマイナス、特に商業圏では新型コロナウイルスの影響が色濃く出たものとなりました。ただ昨年1年間の変動を追いますと、上期は下落基調にあったのに対し、下期はプラス基調と持ち直しました。コロナ禍や緊急事態宣言は「リーマンショック」を想起させたこと、また一時的に融資の面談がストップしたことが影響しました。一方で金融機能へのダメージが少ないことが明確になったこと、また不動産の投資・購入ニーズが売却を大きく上回っているなどの堅調さが下期の回復につながりました。この回復ペースは継続していくものと見ています。現状ではリスクは少ないものと考えます。投資用不動産の価格を見ていますが、都心物件は高値で安定し、競売や任売物件が出ても再販業者が買い、一般の投資家に回るのはごくわずかです。ただオフィスや店舗など、ワークスタイルやライフスタイルの変化で影響を受けているものもあり、商業地への影響などは注意が必要だと感じます。


全て見る


PAGE TOPへ