不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2020.05.11 16:00

 新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、苦境に陥っている宿泊施設をサポートしていこうという同業者の動きが活発化してきた。昨今の新型コロナウイルス感染拡大によるホテル業界への影響は過去に例を見ないほど甚大であり、現状のままでは事業継続が難しくなる運営会社が急増しかねない。実際、先日にはファーストキャビン、WBFホテル&リゾーツと新興ホテル会社が相次いで倒産するなど、その傾向は顕著になってきている。盛り上がってきたホテル業界が、再び浮上するためには今が正念場だ。

「苦境の宿泊施設を救え」支援サービス続々 WROは集客ノウハウ無償提供、ナインアワーズは再生事業
6月末まで期間限定 最大30施設サポート
 「期間限定の提供となりますが、今からコロナが終息した際に集客が何の問題もなくできるように、宿泊施設の売り場環境作りをお手伝いできればと考えています」。
 こう話すのはリゾートホテル・旅館の再生事業を手掛けるワールドリゾートオペレーション(WRO 東京都新宿区)の田村佳克社長だ。
 同社では、新型コロナ感染症拡大で苦境に立っている宿泊施設向けに集客のノウハウの無償提供サービスを開始した。
 同社が培ってきたノウハウを提供することにより、休館のためOTAのメンテナンスがままならない施設に対し、対象・諸条件はあるものの「緊急事態宣言」が解除された際に、スムーズに集客ができる販売環境作りをサポートする。
 期間は4月22日から6月末まで。最大30施設まで先着順。
 主な支援内容は、「ホームページ・OTAサイトページの状況確認及び課題の洗い出し」、「施設及び周辺マーケット状況を踏まえた上での販売戦術」、「共有在庫システムの導入及び運用主要サイト決定」、「OTAサイトページの作成」、「料金設定」、「販売プラン基本方針」、「マーケット状況を踏まえた上での販売プラン及び料金設定に関する提案」、「共有在庫システムを基にした在庫・料金管理業務」、「各OTAサイトページの情報及び画像に関するアップデート」。
 同社は、全国に約30施設以上ものリゾートホテルや旅館の運営・支援業務を行い、1000万人規模の会員ネットワークと、これまで培ってきたノウハウを活かしたホテル・旅館の集客支援サービス、収益改善策を提供してきた。具体的には「支配人派遣」、「保証」といったコンサルティングから、「予約業務代行」、「自社サイト集客拡大プログラム」、「リノベーション・ブランド提案・支援」など、オーナーの意向に合わせた再生メニューを用意。こうした施策を駆使し、90日間での黒字化に成功させている。
盤石な財務を背景にカプセルホテル中心
 一方、新たな取り組みとして、本格的に宿泊再生事業の展開拡大に乗り出したのがナインアワーズ(東京都千代田区)だ。
 同社は都市生活者に向けたトランジットサービスを提供するカプセルホテル「ナインアワーズ」を、全国15店舗のほか、ホテル5店舗を運営する。これまで従来型のカプセルホテルやビジネスホテルの再生・コンサル事業を6店手掛け、売上を2倍超にするなどの実績を持つ。
 同社は昨年末の増資による盤石な財務状況と、今まで培ってきた企画力・運営力を背景に、今回の再生事業をスタートさせるもの。
 第1号案件として、5月1日より部屋数426室と都内最大規模の1987年オープンのカプセルホテル「新宿区役所前カプセルホテル」の再生案件から始動する。旧運営会社からの依頼に従業員も一部受け入れて運営を行う予定だ。
 同社では、既存ブランドを維持しながら、ナインアワーズ事業で開発したシステムやマーケティングノウハウ、ミニマルなオペレーションを駆使して事業収益最大化を目指していきたいという。
OYOは加盟店対象に資金援助プログラム
 OYO Hotels Japan(東京都千代田区)が提供しているのは、全国のホテルや旅館に対して資金援助する「OYO Partner Support Program(オヨ・パートナー・サポート・プログラム)」だ。
 これはOYO加盟時にOYO Hotelsが加盟後一定期間、支援金を支払いするもの。支援の可否や金額は、各施設の状況や加盟時期によってそれぞれ決定される。同プログラムにより提供された資金の返金は必要ない。
 2020年3月13日以降にOYOへ加盟する日本国内のホテルや旅館に対し、OYO Hotelsが3カ月間、前年の売上額の一定割合を支払う。支払額の返金は必要ないが、通常のOYO加盟の条件に則り、ブランドロイヤリティが発生する。支払う割合は各施設やタイミングにより異なる。
 現在、全国の観光関連産業は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、訪日外国人旅行客や日本人旅行客の減少、国内イベントの中止などにより、大変厳しい経営状況に置かれている。宿泊業でも、深刻化した2月末頃から宿泊予約のキャンセルが続出。資金繰りが悪化し、倒産や一時的な休業を余儀なくされる施設も出てきた。終息が未だに見えないだけに、業界全体を地盤沈下させないためには、まだまだ同業他社のサポートも必要になってくる。

JHAT エッセンシャルワーカーは安価で提供
 「hotel MONday」、「ICI HOTEL(浅草橋・上野新御徒町)」、「RELIEF PREMIUM(羽田空港)」を運営するJHAT(東京都港区)では、薬剤師、保育士、介護士、宅配便の配達員、公共交通の運転手、小売店勤務、ホテル関係者等新型コロナウィルス感染のリスクを負いながらも市民の生活を支えているエッセンシャルワーカーへ支援を拡げる。
 このほど、都営地下鉄・つくばエクスプレス「新御徒町」駅より徒歩2分に位置する「ICI HOTEL 上野新御徒町」の客室を30連泊以上限定で提供することとなった。
 チェックイン時に2枚以上の名刺、もしくは社員証の提示をすれば、5月1日より6月30日のうち30連泊を1室1泊2000円で宿泊することができる。
 同ホテルには、インターネット接続、液晶テレビのほか、加湿空気清浄機、セキュリティボックス、電気ケトル、冷蔵庫、携帯電話充電器、ドライヤーを配置する。 
    同社では現在、寄付を通じてエッセンシャルワーカーの方へのサポートを実施。寄付は宿泊提供を支援することに100%利用される。

エアホスト 無人チェックインシステムでソーシャルディスタンス運営促進
 宿泊施設向けのクラウドサービス「AirHost PMS」を提供するエアホスト(東京都渋谷区)は、ホテル・旅館・民泊など宿泊施設のフロント無人化を支援する「AirHost スマートチェックインキャンペーン」をスタートさせた。
 緊急事態宣言の発令に伴い、これまで以上に宿泊施設の現場では、ゲスト及びスタッフの安全確保のため、ソーシャルディスタンスを考慮した運営が求められている。こうした中、同社はキャンペーンを通して、”法令を遵守したチェックインプロセス”をフロント無人で実現できるスマートホテル運用を促進していく。
 旅館業のフロント設置基準では、ICTを活用した対面と同等の方法での本人確認が求められているため、AirHostチェックインのタブレットに搭載されている「ビデオチャット機能」で遠隔で実施することで、人との接触を削減し、運営の大幅なコストカットにも繋がる。 
 また宿泊者名簿の収集・管理もすべてシステム上で管理可能になるため、24時間365日予約からチェックアウトまでオンライン上で一括管理することが可能になる。 
 既に数多くのユーザーがAirHostチェックインを利用した無人ホテルでの運営を実施しており、運営規制の要請後も安全なチェックインプロセスでゲストからの評価も高いという。
 2015年に創業したエアホストは、ホテル・民泊の運用代行サービスを提供する他、宿泊施設のクラウド型管理ツールを提供している。

トリプラス 「アフターコロナ」に向け本格サービス準備
 訪日外国人旅行者向けに日本の日常体験提供をマッチングするサービス「TRIPLUS」を運営しているTRIPULS(トリプラス 神奈川県横浜市)では、「アフターコロナ」に向け本格的なサービス展開に着手する。
 神奈川県エリアのインバウンド向けの観光振興と、市民の生きがい作りの継続的な地域活性化の基盤構築を目的に、県内の行政や大企業と連携を進めていくもの。
 同社は、「地元案内」、「家庭料理」、「餅つき」、「折り紙」など多彩な「おもてなし」をウェブ上で紹介し、訪日外国人はやりたいものを選ぶ。価格はその体験によって異なり、決済はウェブ上で行う。利用するのは旅行者だけでなく、在日外国人も多い。
 提供する側は、50歳以上に特化しているのが特徴。現在600名の登録者がある。「平均年齢は60歳程度。最高年年齢は89歳です」(秋山智洋社長)。
 今後、県内の個人・法人に対して、広くホストの募集をしていく。随時、説明会などを行いながら県内の体験メニューを拡充し、「アフターコロナの際には、神奈川県や横浜市の協力の元、行政の発信力も活用しつつ、県内のコンテンツを海外へ広く発信していきます。また、相鉄グループと連携した取り組みで、横浜駅周辺や相鉄線沿線の活性化も目指します」(秋山社長)。
 県内での基盤を強化していくために、他の行政・企業、ホテル・旅館等との連携も積極的に行っていく予定だ。
 秋山社長は、海外の大学を卒業後、大手メーカー在籍中に新規事業として現在のビジネスモデルを確立、独立を果たした。
 昨年6月には長崎県の「長崎創生プロジェクト事業」に認定された。今後、同社のビジネスは、長崎市と全面的に連携を図りつつ、長崎市内の出島交流会館を拠点に、長崎エリアにおける更なるサービス展開に取り組んでいきたいという。

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