不動産トピックス

日本橋特集 街を彩る名店探訪 喜代川

2020.02.10 16:18

小網町 うなぎ「喜代川」 登録有形文化財の店内でウナギ料理に舌鼓

 証券会社が建ち並ぶ日本橋小網町。東京証券取引所から鎧橋を渡り、2本目の路を左に折れると風格ある日本家屋が目に入る。そこが、1874年(明治7年)創業の「うなぎ 喜代川」だ。1927年に建てられた建物は、2018年に文部科学省から登録有形文化財に認定された。昭和の趣が色濃く残る店内で、145年以上にわたって受け継がれた伝統の味を楽しむことができる。これまでも多くの著名人が通い、渡辺淳一の小説「化身」の舞台となったことでもよく知られている。
 現在、5代目の渡辺昌宏氏が若女将と共に店を切り盛りしている。「背開きにした鰻を白焼きして30分以上蒸します。昔の武家社会では、腹からさばくと切腹に通じるので背開きです」と同氏。蒸した後に、創業時から注ぎ足す秘伝のタレを付け、備長炭で素早く焼き上げる。やや辛めの、すっきりした伝統のタレが、鰻のほくほく感にマッチしている。
 同氏によると、「この辺りは東京大空襲の際に不発弾が多く、戦火を逃れたそうです。当店も幸いにしてその一軒」だという。だからこそ、この建物を大切に考え、登録有形文化財への登録申請も行った。また、「日本橋は人と人との繋がりを大事にするところ。私もそう考え飲食業組合での活動に参加しています。小網町ではまだ大規模な再開発の予定はありませんが、開発するにしても、老舗との共存を大切にしてほしいですね」と語る。
 30年ほど前に2階の座敷だけだった店舗を改装し、1階にテーブル席を設け気軽に食べられる単品メニューも追加した。最近は、法人の利用以外に鰻好きの個人客が増加。海外からの予約客も全体の2割ほどに増えているという。日本橋エリアではホテルや様々な形態の宿泊施設が増え、「鮨」以外の日本食に対する関心も高まっているからだろう。
 登録有形文化財である貴重な建物と伝統の鰻料理は、そうした人々からますます注目されるに違いない。「喜代川」のような名店が日本橋に多くの人を集め、その発展を支えていく。

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