不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2020.01.06 16:59

アパホテル 東京23区で82カ所1万9454室稼働 4月から新たな中期計画スタート

「23空は一駅ごとに新規出店の余地がある」
 大都市圏を中心に積極的な新規出店を続けるアパホテル(東京都港区)。昨年は9月に2300室と国内単体では最大級の「アパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉」のほか、12月には全913室と西日本最大級の「アパホテル&リゾート<御堂筋本町駅タワー>」を開業させた。2020年以降も大型案件が控えている同社の最新動向を探る。

 「早急にシェア10%を獲得し、ダントツのナンバーワンを目指していく」。
 グループ代表の元谷外志雄代表は話す。
 同社は今年、東京23区に限れば、4月に1111室の両国、六本木5棟計859室など、大型案件の開業を控える。現在、同社では、23区内では直営とFC含めて82ホテル1万9454室が稼働しているが、今年以降も2021年度中に17ホテル5133室の出店を計画している。
 「大都市圏はまだまだ需要は旺盛で、東京23区に限って言えば、地下鉄の一駅ごとにまだ出店する余地があります」という。
 2010年4月1日より開始したグループ中期5か年計画、「SUMMIT5―2.」は3月31日で一区切りを迎える。
 この間に客室数10万室という目標を掲げてきた。
 昨年11月末時点で9万3600室、今年中には達成しそうな勢いだ。同社では4月からは新たに「SUMMIT5―3.」をスタートさせ、更なる多店舗化を進めていく計画だ。
 「東京だけでなく、大阪・福岡といった大都市圏でのドミナント戦略も進めていく」。
 特に大阪エリアは、2025年に開催予定の大阪万博による需要の拡大を見込み、大型ホテルの開発に注力。2022年には34階建ての「アパホテル&リゾート〈大阪梅田駅タワー〉や、2023年には39階建て2064室の「アパホテル&リゾート〈大阪難波駅タワー〉」を建設中。もちろん、福岡や名古屋を含めた大都市圏は、継続的に出店を進めていく。
 既に国内では最大級のネットワークを構築している同社だが、元谷代表は、「しかし、全宿泊施設数から計算すればシェアはまだ、約4%にすぎません」と話す。
 このシェアを早急に10%にまで拡大させて、20%にまでにしていく。他の業界を見てみると、シェア20%を取る企業が2~3社あると市場の寡占化が進むといわれている。「その中で当社はダントツのシェア獲得を目指していきたいと考えています」(元谷代表)。
「新都市型ホテル」進化 100%以上の稼働も
 同社が標榜している「新都市型ホテル」は、従来のビジネスホテルとは一線を画す。常に設備やオペレーションを進化させているのが特徴だ。
 例えば、昨年9月に開業した「アパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉」は、最新仕様として、全客室に50型以上の大型液晶テレビを設置し、館内案内をテレビ画面上に集約表示した、日本語・英語・繁体字・簡体字・韓国語に対応の「アパデジタルインフォメーション」を導入。大浴場の混雑状況をリアルタイムに把握できるほか、自身のスマホからYouTubeの動画や写真などをテレビ画面に映すことができる「ミラーリング機能」を搭載した。
 他にもベッド下にスーツケース等を収納できるスペースを確保したオリジナルベッドや、空気中の花粉やカビ菌などのウイルスを無効化し、脱臭効果機能を搭載した新型エアコンを設置。
 照明スイッチ類、空調リモコンを枕元のヘッドボードに集約するなど、客室は使い勝手にも配慮した造りとなっている。
 フロント周りでは、日本NCRビジネスソリューション(東京都品川区)と共同開発した全予約経路対応の自動チェックイン機に、フリッカーランプ、紙幣口イルミネーションなど、今回新たな8つの機能を新搭載し、利便性を高めたほか、小型の卓上型自動チェックイン機は、現金対応に代えて、QRコード決済に対応する。  ルームカードキーを投函するとリアルタイムでチェックアウト処理が行われる、エクスプレスチェックアウトポストを導入し、チェックアウト処理の自動化も実現した。
 同ホテルでは開業以来、2300室という規模ながら、直後にラグビーのワールドカップ需要も追い風になるなど好調を維持。日帰り客も含めて稼働率が100%を超える日もあるという。
 今後も増加が見込まれる外国人観光客については、中国は少ないものの、韓国や台湾、アメリカやヨーロッパ客が増加しているという。
 昨年はインバウンド客が約364万人。決算期の1月から11月までの11か月間で13万人の増加した。地方は3万人減少したが、都内では16万人増加した。  団体客を殆ど取らないものの、個人客が強いことが特長。
 「これはアメリカに関しては、現地のホテルチェーンを買収したのも大きい。当社は北米で39ホテルを運営していますが、おかげで知名度も上がり、日本に来るときも当社を選んでいただける。彼らは単価も高く、長く宿泊してもらえる」(元谷代表)と今後もインバウンド集客に力を入れていく考えだ。

ザ・ナハテラス 開業20周年を節目に別館を新設 飲食店等を充実化
 ザ・ナハテラス(沖縄県那覇市)は、開業20周年を迎えた節目に12月12日、新たにアネックス棟(別館)をオープンさせた。
 「ザ・ナハテラス」宿泊ゲストと「ザ・ナハテラス クラブレジデンス」住居者、サービスアパートメント利用者専用ジムを設置したほか、レストランなどの飲食施設を充実させた。
 2階には鉄板焼レストラン「龍潭」、ダイニング用個室。沖縄市・コザの老舗インポートセレクションショップ「ロージャース」が新たに出店。新感覚のライフスタイルショップとして、ファッション、リビングインテリア、グロッサリー、ポップアップスペースの4つのカテゴリーに分けて提案する。
 3階には、大人が気楽に集うカジュアル・ダイニング「La SIMA」をオープン。コンセプトは“New Okinawan Grill”。タパス(小皿料理)をはじめ、スペイン製チャコールオーブンを県内で初めて導入し、島野菜や魚介、肉類を短時間で豪快に焼き上げることで、素材の旨味やジューシーさを最大限に引き出して提供する。それに合わせたスペイン・フランス・イタリア産ワインを豊富に用意する。

オリックス不が箱根に新旅館
 オリックス不動産(東京都港区)では、2020年秋を目途に神奈川県箱根町強羅に、温泉旅館「箱根・強羅 佳ら久(はこね・ごうら からく)」を開業させる計画だ。
 同施設は、敷地面積7200・43㎡、延床面積1万252・34㎡、棟数は4棟で、地上3階地下2階が2棟、地上2階地下1階が1棟、地上4階地下1階が1棟。客室数70室。
 全客室に備えた温泉露天風呂に加え、3種類の貸切風呂、最上階には2種類の大浴場を用意。2つのレストランのほか、水が流れるテラスで箱根・強羅の風情を体感し、趣のあるラウンジやスパでゆったりとした時間を過ごしてもらえるような造りにした。
名称の「箱根・強羅 佳ら久」は、自然・歴史・文化が豊かな箱根・強羅で、「めでたいこと、佳きことが、久しく続くように」という思いを込めて名付けられた。シンボルマークは、長寿の象徴として縁起が良いとされる亀をモチーフにした日本の伝統的な文様「亀甲紋(きっこうもん)」をアレンジ。日本の伝統や文化を大切にしながら、快適な機能性も兼ね備え、新しい滞在の仕方を提案していきたいという。
 同施設は、オリックス不動産の旅館・ホテル運営の事業ブランド「ORIX HOTELS & RESORTS」の温泉旅館。

日本橋エリアでアート宿泊施設
 BnA(東京都杉並区)は、三井不動産(東京都中央区)と協業し、東京日本橋エリアで「BnA_WALL」を2020年夏にオープンする計画だ。 東京2020オリンピック、パラリンピックに向けインバウンド市場が盛り上がる中、高円寺、秋葉原、京都河原町に続き、「BnA HOTEL」ブランドとして4拠点目の開業となる。
 同ホテルは、SIDE COREやYOSHIROTTENら気鋭のアーティスト、アートディレクター23組と共に宿泊型アート作品26部屋を制作。これまでのBnA HOTELと同様、宿泊売上の一部が作家に還元される独自のシステムを導入し、持続可能なアートシーンの活性化を狙う。 
 また、施設の象徴となる大壁は塗り替え続けられる壁画にする。ストリートアートが育ちにくい日本において、変わり続ける大型壁画をアーティストたちの鍛錬と発信の場にする。地下にはアートファクトリーを設置、アートの制作現場となるとともに、三井不動産と協力し、日本橋エリアにアートを供給する拠点とする。 
 1階のバーは渋谷の音楽カルチャーのハブとなっているSHIBUYA OIRANが運営、アートや音楽好きを中心とした国境を越えたカルチャーシーンの発信地にしていきたいという。

「ヒルトン長崎」11月にオープンへ
 グラバーヒル(長崎県長崎市)では、ヒルトン(米国・バージニア州)と協業で、「ヒルトン長崎」(同)を2021年11月にオープンさせる。
 同ホテルは、MICE施設「出島メッセ長崎」と隣接して建設されるもの。建物設置者は特定目的会社M&H長崎ホテル合同会社、運営会社がグラバーヒル。延床面積2万300㎡、地上11階建て、客室数は200室。レストラン・フィットネスジム・温浴施設・バンケット・チャペル等を併設。国内外のビジネス客はもちろん、観光客へのニーズ獲得を期待している。
 2022年に予定されている九州新幹線長崎ルート開業に伴い新しくなる長崎駅の西側に位置し、長崎駅にも直結。グラバー園や大浦天主堂、稲佐山など様々な観光スポットへのアクセスに最適な場所にある。隣接するMICE施設「出島メッセ長崎」とも連携し、長崎市の交流人口拡大に貢献していきたいという。

PAGE TOPへ