不動産トピックス

クローズアップ テナントリーシング編

2019.04.09 11:05

 賃貸ビルの経営者にとってパートナーと呼ぶべき存在は入居するテナント企業である。多くの企業に愛され、高稼働を維持し続けるためには、独自のネットワークとノウハウでパートナーを選定してくれる存在が不可欠となる。

ヒトカラメディア 想定した入居企業に「響く」リーシング
 オフィス仲介や空間のプランニング、ビルのバリューアップ、内装工事など、オフィスづくりに関する様々なサービスを提供しているヒトカラメディア(東京都目黒区)。
 同社は昨年、テナントリーシングのマネジメントを行うビルオーナー向けの専門部隊として「企画開発部」を立ち上げた。リーダーを務める野田賀一氏は部署立ち上げの経緯について次のように話す。
 「当社はオフィス仲介から内装の設計、施工までをワンストップで展開しています。オフィスビルは立地や規模、スペックなどによる個別性が高いのですが、企画開発部はスペックに強みを持たないオフィスビルでもバリューアップして早期テナント誘致・賃料単価UPを実現するビル運営のパートナーとしての立ち位置を目指しています」
 ヒトカラメディアではテナントリーシングの強化策として、ビルが立地するエリアのオフィス市場動向を分析。賃料の相場や入居企業層、マーケットの視点から見たビルの現状をリサーチする。その上で、ビルの入居希望者となる可能性のある企業の業種・規模などを想定し、その企業に響くリーシング手段を企画する。
 「テナント募集用の『マイソク』も、単に図面や面積等の概要を記載しただけでは、ビルの魅力はなかなか伝わりません。当社の場合、内装レイアウトのCGパースを掲載し、入居後のイメージを湧きやすくしつつ、ビル周辺のエリア特性やスーパー・コンビニといった利便施設を記したマップ、地域のイベントなど、街の魅力を伝える情報も盛り込んでいます。オーナーのビルに対する想いを紹介することもあり、そのオフィスビルに思わず入居したくなるような魅力を引き出す当社ならではの企画ではないかと思います」(野田氏)
 同社が手掛けた東京・青物横丁のオフィスビル「リードシー南品川ビル(旧:ペガソ21南品川ビル)」のテナントリーシングの事例では、オーナーであるオフィスビルの買い取り・再販を行うコスモスイニシア(東京都港区)へ企画提案を行い、専有部の内装造作費用をオーナーが負担してテナント募集を実施。青物横丁エリアは「品川」駅や羽田空港へのアクセスに優れた環境ではあるものの、オフィス街としての認知は比較的低い。これまで同ビルも空室の解消に苦戦してきたというが、内装の初期費用が不要である点などが功を奏し、同社によるテナント募集が開始された直後に新しい借り手が現れたという。
 着目したのは、「コミュニケーションスペースを設ける企業が増えている」という点である。「リードシー南品川ビル(旧:ペガソ21南品川ビル)」の事例では、床材を使い分けることで仕切りを設けることなく執務空間とコミュニケーションスペースの2つの空間を実現。会議室は壁際に設けるのではなく、あえてデッドスペースが生まれるように配置している。野田氏は「デッドスペースはリラックスのための空間として、ちょっとした休憩などで使用できます」と話す。テナント募集も、近隣エリア内に事務所を構える企業だけではなく、都心部に事務所を置く成長企業もターゲットとして、リーシング活動を展開した。
 「オフィス街としての認知が低い青物横丁エリアだけでのテナント募集では、どうしても入居テナント候補が限られてしまいます。一方で東京の都心は現在オフィスの空室が非常に少なく、成長企業の増床移転ニーズが潜在的にあるものの、新しい入居先を見つけることが困難な現状があります。また、成長速度が早い企業ほど移転の頻度が高くなるため、オフィス移転にあまり費用をかけたくないという意識が働きます。オフィス仲介をメイン事業としている当社だからこそ移転シナリオを想定して、狙ったリーシング企画を立案できることが強みです」(野田氏)
 この事例での成約賃料は坪1万3000円。従来は坪1万円で募集を行っても1年間借り手が見つからなかった所、稼働率と賃料収入のアップに同社は応えた形だ。前述したように東京都心は大型物件を中心にオフィス空室率が空前の低水準となっている。一方で中小規模の既存ビルでは、賃貸オフィス市場の好況から取り残されている物件も少なくないのが現状だ。今回紹介した物件のように、必ずしも一等地のオフィスビルでなくとも工夫次第で空室率を改善することは十分可能である。その実現にはビルに求められるニーズと企業側の最新トレンドを理解することから始まるのだ。

COUNTERWORKS 店舗の短期貸しをサポート
 ポップアップストアのマーケットプレイス「SHOPCOUNTER(ショップカウンター)」を運営するCOUNTERWORKS(東京都目黒区)は、小売店や空きテナントなど、店舗物件の短期貸しに関わる運用業務を受託するサービス「bySC(バイエスシー)」の提供を開始した。
 このサービスでは、立地条件や物件のスペックに応じ短期貸しにおける最適な活用方法を提案。利用希望者からの問い合わせへの対応や、スケジュール管理、内覧や契約などの運営業務を同社が担当する。新サービスでは、テナントビルの収益性改善に課題を抱えるオーナーなどを対象とし、既に東京の表参道や清澄白河では新サービスを活用した事例が展開されている。

PAGE TOPへ