不動産トピックス

クローズアップ BCP編

2019.03.18 14:09

 BCPへの注目が高まっている。昨年、北海道や近畿エリアで自然災害が発生。東日本大震災から8年が経過したこともあり、企業や行政だけでなくビルオーナー、一般個人の意識も高い。そのなかでBCP対応の新しい試みが生まれてきているようだ。

地震被害等BCP研究会 「BCP白書」発刊、関連情報集積 啓発活動強化へ
 地震被害等BCP研究会(東京都千代田区)は昨年12月31日に「日本BCP白書2018」を発刊した。BCPに関する情報や最新の動向などが記されている。
 同研究会ではこれまでBCPに関するセミナーを定期的に開催。加えて、地震などの災害時のBCPを広く広報していこうと、展示会にも出展している。
 会長の岡野眞氏は今回の白書刊行について「これらの活動をまとめながら、最新のBCP研究についてまとめるとともに企業などの事例や実際に防災や減災で利用できる製品・サービス情報を網羅していくことが有意義だと感じた」と話す。BCPに関連したセミナーは多いものの、情報としては少なかったのが現状だった。
 白書内では岡野氏の実績も掲載。それがBCP住宅というものだ。「全ての建物でのBCP対応が必要だが、現状では大規模ビルや行政の建物など、限定されている」と指摘。
また岡野氏は今後クローズアップされてくるBCP分野もあるという。そのひとつが「病院BCP」だ。「2019年以降は病院BCPがテーマとして大きくなっていくかもしれない。災害時に病院は医療の拠点になるとともに、入院患者の安全を確保していく必要があります。研究会としてもテーマとして今後議論していきたい」と話す。
 「BCPは2001年の米国での同時多発テロ以後、一般でも認知されるようになってきた。ただその後の歩みは災害などが起きると盛り上がって、時間が経過すると下火になるという繰り返し。よりBCPへの意識を高めていけるよう、啓発活動を展開していきたい」
 昨年は関西や北海道が規模の大きい地震に見舞われた。自然災害と切っても切れない関係にある以上、事業継続のためのBCP対応は不可欠だ。

鹿島建設 超大型制震装置を改良
 鹿島建設(東京都港区)は、2013年7月に開発した既存超高層建物用の超大型制震装置TMD「D3SKY(ディースカイ)」を拡張し、地震や経年変化により振動周期が変動するRC(鉄筋コンクリート)造構造物への適用が可能な、セミアクティブ制御(電気制御)式のTMD「D3SKY-RC」を開発した。
 「D3SKY」は、屋上に設置するだけで既存超高層建物の長周期地震動対策が可能な制震技術であるが、RC造構造物に適用した場合、十分な制震効果が得られないという課題があった。TMDは建物の振動周期と同調することで効果を発揮するが、RC造の建物は地震や経年変化によって固有周期が長くなるという性質があるため、建物の振動周期とTMDの設定周期がずれてしまい、制震効果が損なわれるためである。
 こうした中、同社はTMDの周期を対象建物の振動周期に追従するように制御できる、セミアクティブ制御式TMD「D3SKY-RC(Resonance Control)」を開発した。錘の支持材と並行に設置したオイルダンパの抵抗力(減衰係数)を切り替えるだけでTMDの周期を制御する全く新しい支持機構を採用することで、この課題を解決した。
 錘重量40トンの試験体を製作し、鹿島技術研究所(東京都調布市)の高性能3次元振動台「W-DECKER(ダブルデッカー)」を用いた性能確認実験を行い、オイルダンパの減衰係数切り替えによるTMDの周期調整機能、センサやコントローラの所期の性能を確認した。
 新開発の制御アルゴリズムにより、年単位の長期的な周期変動だけではなく、地震動の最中に時々刻々変化する構造物の振動状態に追従し、揺れを効果的に抑制する。風揺れから大地震まで、さまざまなレベルの揺れに有効。方向による周期の違いにも対応するため、建物全方向の揺れを抑制する。
 TMDを設置した場所の情報のみで建物の振動周期を判断するため、それ以外の場所へのセンサやコントローラの設置や配線は不要。また、屋外使用(全天候型)に対応しており、建物屋上や煙突など、様々な場所に設置可能となっている。消費電力は制御時でも150W程度とわずかであり、小型の無停電電源装置(UPS)で停電時にも作動する。なお、万一の断電時にはパッシブ型のTMDに切り替わり、さらに設計想定以上の地震時にも錘の動きを安全に制御する、ソフト・ハード両面のフェイルセーフ機構を内蔵している。

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