不動産トピックス

クローズアップ IoT編

2018.12.17 10:49

 施設利用や設備の利便性を高め、不動産運用を効率化する「IoT」。業界での代表格はスマートロックだが、目に見えた進展はまだない。一方、IoTに新たな機能を与えることで管理運用面での利便性を上げようとする試みが登場している。

電縁 トイレIoTを今夏より展開 将来はAI活用で管理面の効率化も
きっかけは行列 混雑緩和を目的に導入
 WEBシステム開発事業をメーンに行う電縁(東京都品川区)は今年夏より、「トイレIoTシステム」の販売を開始した。同社にとって初のIoTのパッケージ商品となる。
 「トイレIoTシステム」とはどのようなものか。ひと言で言えば、トイレ個室の混雑状況が一目でわかるものだ。設置することで利便性の向上を図るとともに、施設管理者にとってもトイレ運用の改善につなげられる。
 どのようなシステムなのだろうか。同社の「トイレIoTシステム」の場合、まずトイレの個室に無線式ドア開閉センサーをつける(写真(1)参照)。そうするとドアが開いていれば「空室」、閉まっていると「使用中」と認識される。その情報を無線でUSBゲートウェイに送信。「STB」という「トイレIoTシステム」のプログラムを組み込んだ機器を通して、各自のパソコンやデジタルサイネージなどに表示される(写真(2)参照)。
 設置に際して特別な工事は必要ない。無線式ドア開閉センサーは両面テープでつけることができる。またソーラーパネルが設置されていて、蛍光灯の光でも充電することができる。開発のきっかけとなったのは企業からの問い合わせだった。セールスマネージャーの篠康文氏はこう話す。
 「大阪の住友電工情報システム様からオフィスのトイレについて相談を受けたのが始まりでした。同社ではトイレの個室が始業から終業まで終日混み合っているという問題をお抱えでした。そこでお客様の要望をお聞きしながら開発したのが、このシステムです」
 住友電工情報システムの担当者は「トイレIoTシステム」導入のメリットについて次のように話している。
 「個室が使用中になってから設定した任意の時間を超過すると、長時間利用であることが色の変化でわかります。長時間使用者へ心理的な牽制が働くように意図されたシステムとなっていて、導入後は混雑度が想定以上に低減しています。あまりにも長時間滞留者には体調が悪くないか声を掛けるなど、管理者が早急に行動することもできます。当社はワンフロアの利用ですが、複数フロアを借りている企業ならば、どの階が空いているかがすぐにわかるためトイレを探して他のフロアに行くことも容易に行えます」
 加えて、システムを利用することによってトイレの利用頻度の記録もとることが可能。
 「現在、トイレ清掃は決まった時間に行われています。『トイレIoTシステム』を利用してたとえばログを解析することによって、ある場所のトイレは利用頻度が高いから清掃回数を増やす必要があるが、他の場所のトイレは利用頻度が低いから清掃回数を減らすことができるなどの判断ができるようになります」(篠氏)。人員不足に悩む管理会社にとってはスタッフの有効活用を促すことができそうだ。
「トイレIoTの利便性を高めたい」AIとの連動で更なる効率化へ
 篠氏は「トイレIoTシステムの展開に注力していく。商業施設やイベント施設など多くの人が利用するような施設ほど、このようなシステムは必要になってくるのではないか」と見込む。特に商業施設やイベント会場など、人が多く集まる場所にはうってつけ。同社の既存のノウハウとの連携も図る。AI(人工知能)への知見や技術力も有している。「トイレIoTシステム」のログに導入していくことで、運用や管理の最適化が図れる。
 企業のオフィスへの導入や引き合いが多くなっているという。ただ篠氏は「将来的には管理会社からの需要も増えていくと思います」と見込む。利用者、管理者双方がメリットを享受することで、ビルに必須な設備になっていくかもしれない。
 同社ではまずはスマートフォンなどのデバイスでも確認できるようになる「クラウド版」のリリースに向け準備する。来年には展開できる公算だ。
 「トイレIoTシステム」導入がビルの価値向上につながるか。今後、機能をどのように深化させていくかにかかっている。

長谷工コーポレーション 西日本が共同実証実験「IoTマンション」実現へ一歩
 長谷工コーポレーション(東京都港区)と西日本電信電話(大阪市中央区、NTT西日本)はICTを活用した次世代型集合住宅「IoTマンション」の実現に向けた共同実証実験を開始する。
 両社はこれまで長谷工グループの「マンション設計・施工・管理・修繕技術」とNTT西日本の「ICT」を組み合わせ、次世代型集合住宅に向けた「IoTマンション」のあるべき姿の共同検討を進めてきた。それが今回の共同実証実験につながった。
 実証実験では長谷工グループが手掛けるマンションエントランスの共同玄関電子錠や宅配BOXなどの共用部設備にNTT西日本のICTを連携させる。具体的には顔認証を利用してマンションエントランス共同玄関電子錠を開錠することや、サイネージにて宅配BOXの着荷の通知を行う。
 実証実験の期間は12月~来年3月末を予定する。実施場所は千葉県市川市にある長谷工所有の社宅を利用する。

エアホスト イッツコム提供サービスと提携
 エアホスト(川崎市宮前区)が提供するクラウドサービス「AirHost PMS」はイッツ・コミュニケーションズ(東京都世田谷区)が提供するスマートホームサービス「インテリジェントホーム」のデバイスである電子錠「スマートロック」の管理システム「Connected Portal」と13日よりAPI連携を開始した。
 「AirHost PMS」は宿泊施設のクラウド型管理ツール。今回のPI連携でこれまでゲストからの予約確定後に主導で設定していたPINコード(暗証番号)発行が「AirHost PMS」から自動発行・更新が可能となった。自動メッセージ、自動部屋割り機能、自動決済機能など、すべての機能に連動している。施設の運営方法やゲストに合わせた鍵の管理、受け渡しを自動化する。

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