不動産トピックス

第19回不動産ソリューションフェア セミナー・パネルディスカッション再現

2017.12.25 10:06

第19回不動産ソリューションフェア セミナー・パネルディスカッション再現

中小でも高品質なビルを求めるニーズが増大
幅広いテナント層を満足させるオフィスブランドが誕生

東京23区の中小規模オフィスビル市場の現状とテナントニーズの変化
~ビジネスリーダーが求める中規模オフィスビルBIZCOREシリーズ~

 まずは当社の会社概要からご紹介致します。2012年10月、旧興和不動産と旧新日鉄都市開発、この2社が統合し誕生したのが新日鉄興和不動産です。旧興和不動産はビル開発に強みを持ち、旧新日鉄都市開発は住宅開発に強みを持つという2社の統合により、企業としての規模や事業領域が拡大し総合デベロッパーとしての地位を築くこととなりました。ビル事業では、現在72棟の物件を保有しています。物件は都心3区に集中しており、特に港区の比率が非常に高いというのが特徴です。その中に、超高層ビルのブランドとして「インターシティ」シリーズがあります。今回溜池エリアで開業した「赤坂インターシティAIR」シリーズが7棟目となります。  また、新たなオフィスビルブランドとして「BIZCORE(ビズコア)」シリーズを立ち上げ、その第1号案件である「BIZCORE神保町」が11月に竣工しました。この「BIZCORE」シリーズは中規模ハイグレードビルのブランドであり、神保町を皮切りに赤坂見附や築地、渋谷、神田でも今後展開を図っていく考えです。  次に、東京23区の中小規模のオフィスビルの現状についてお話し致します。延床面積5000㎡以下を中小規模、5000㎡以上を大規模と定義した時、棟数の比率はおよそ10:1となります。中小規模のオフィスビルでは築20年以上と20年以下で分別すると、86:14で圧倒的に築20年以上の物件が多い状況です。一方で大規模ビルは55%が築20年未満となっています。また、規模を問わず旧耐震基準建築のオフィス床は、現状で約270万坪あるとされています。相対的に中小規模ビルの方が大規模ビルに比べ築年数が経過した物件が多いことから、建替えの問題が中小規模ビルを中心として顕在化してくるものとみられます。
 では東京23区における新耐震ビルの割合はどうでしょうか。東日本大震災直後の2011年のデータですが、建替えが遅れている地区として、新宿、神田、青山、六本木、大丸有(大手町・丸の内・有楽町)、赤坂、新橋、渋谷、日本橋、京橋、日本橋室町、銀座などが挙げられます。2011年以降は徐々に建替えが進み、新耐震ビルの占める割合は増加していると思われますが、比較的早くからビル開発が進んだエリアで、経年化したビルが多く残っていることが分かります。新規供給については、東京では年間平均18万坪のオフィス床が供給されています。今後の予定では、赤坂・虎ノ門・六本木エリア、品川・浜松町・芝浦エリア、大丸有エリア、日八京エリア(日本橋・八重洲・京橋)において、相当数の再開発ビルの予定が発表されています。東京五輪の終了後も毎年相当な量の床が供給されるとみられます。先に述べた4エリアでの新規供給床の合計は250万坪強となっています。一方、都内の旧耐震ビルの面積は270万坪で、現状で発表されている複合再開発によるSクラスビルが誕生すると、旧耐震のビルが全て置き換わる程度の分量となるのです。中規模ビルの年間の供給量についても見ていきます。中規模ビルの新規供給は年平均で4万坪、都心3区での供給が大変多くなっています。また、大規模再開発が行われるゾーンよりも更に広いゾーンで中規模ビルの建替えが徐々に進んでいるという現状です。近年は新宿や渋谷でも中規模ビルの建替えや新築が進んでいます。
 ここからはテナントニーズを捉えた中小規模オフィスの動向について考えてみたいと思います。森ビルの「東京23区の大規模オフィスビル市場動向調査」によれば、オフィスニーズに関してフロア面積が大きく立地条件の良いビルに移転したいという需要が見えてきます。その理由としては、新しい部署の設置や人員の増強、社員間の交流促進などがあります。こうした傾向はサブプライムローン問題やリーマン・ショック前の比較的景気が良かった時期、「アベノミクス」で景気が上向きになっていた時期にも、同様の傾向が見られました。近年のこうした傾向は、働き方改革や社員のコミュニケーションを円滑にしたいという意識が背景にあるものと思われます。また、ビルの耐震性や賃料、設備のグレード、セキュリティといった意見も根強く存在します。こうしたニーズの応えるのはやはり大規模ビルであり、中小規模ビルはこうした需要に対しどれだけ対応できるかがポイントになるのではないかと思います。当社が「BIZCORE」シリーズを展開するにあたり、あらかじめ選定した各エリアの中小規模ビルに入居する企業へのヒアリングを行ったところ、大企業の子会社や関連子会社、あるいは大企業のオフィスでは手狭で部署単位で事務所を借りている比率が高いということが分かりました。ほかには長年そのエリアに事務所を置く地場の企業、そして新興の企業がそれに続く形となっています。子会社を抱える大企業は、なるべく本社の近くに各社の事務所を置いてグループの風通しを良くしたいと考えます。そのため大企業の移転の際には、その周辺のビルの移転動向にも注視する必要があります。また、地場の企業はエリアに対する思いが人一倍強く、ワンフロアを分割して借りるよりワンフロアを自社で専有したいという気持ちが非常に強い傾向にあります。加えて、企業のブランドイメージや人材採用の観点からも、グレードの高いビルに入居したいという意識を持っています。こうした考えはITを中心としたスタートアップ企業も同様であるといえます。中小規模ビルの建替えは、テナントが求めるグレード感、耐震性、セキュリティといったニーズへの対応が重要になっているのです。テナントニーズは大規模な床、ハイスペック志向が強まってきており、賃料負担力のあるテナントは大規模ビルを志向する傾向にあります。中小ビルを主語として考えると、テナント移転によって起こる二次・三次空室リスクをいかに回避するかが重要です。その一方で、中小規模ビルであっても交通利便性や耐震性、セキュリティ、ビルのグレード感などが、他の中小規模ビルとの対比において相対的に優れていれば、需要は根強いのではないかと当社では分析しています。昨今では、働き方改革や人手不足・人材育成といった問題も経営者にとってこれまで以上に問題意識としては強くなっています。ビルはハードだけではなくソフト面でも工夫をしてアピールできるポイントを持つことが重要であると考えます。
 これらの分析を踏まえた上で企画したのが、当社の「BIZCORE」シリーズです。「周辺のビルよりも、坪2000円高い賃料を取るためにはどのような工夫が必要か」ということを、社内で知恵を出し合いながら生まれました。「BIZCORE」シリーズの特徴は、いくつかのポイントを挙げることができます。まずはデザインです。外観が一目で「BIZCORE」であると認識できるよう、統一したデザインでブランディングしていきたいと考えています。また、ワンフロアを自社で専有をしたいという需要が大きいため、そうした入居企業に対しては基準階のエレベーターホールを入居企業の思いのデザインに変更可能としています。企業の主な移転動機である防災・BCP対策についても、優れた耐震性を確保するとともに備蓄倉庫も用意しています。
 テナントが重要視するセキュリティについては万全の体制を構築するとともに、リフレッシュスペースや屋上庭園など、ビルで働く方々の働きやすさを追求した設備を整えています。細かな取り組みではありますが、入居企業の満足度を高める施策を各項目において着実に行っていくことによって、周辺の同規模ビルより坪2000円高く賃料を頂けるビルを展開していこうというのが、「BIZCORE」シリーズの基本コンセプトです。
 最後に、既存ビルの有効活用、建替えのパターンについてお話しします。経年化したビルの将来を考えた際、大きく4つのパターンに道が分かれると思います。1つ目は、大手デベロッパーによる大規模再開発へ参画するというもの。2つ目は、オフィスからホテル、あるいはマンションなど、立地特性に合わせて用途を変更するというもの。3つ目は、単独もしくは近隣のビルと一緒に建替えるというもの。4つ目は、資産を入れ替えるというものです。4つのパターンにはそれぞれにメリット・デメリットがあると思います。9月末に竣工した「赤坂インターシティAIR」は、先に挙げたパターンの中で1つ目の大規模再開発に該当するプロジェクトです。計画は2004年に「地域を考える会」、2006年に勉強会が設立され、準備組合、都市開発決定を経て今般の竣工となりました。プロジェクト全体を俯瞰すれば13年から14年の年月を擁したことになります。もともとこの地区は中小の既存ビルが林立していた地区で、地権者が大体70名程度になります。それをアジアヘッドクォーター特区、特定都市再生緊急整備地域の指定を頂き、国際競争力強化という大きなテーマを見据えながら計画を進めてきました。ビルはオフィスが主体となっていますが、敷地の半分が緑地になっており、「赤坂インターシティAIR」の大きな特徴でありセールスポイントとなっています。また、緑の庭園の中に飲食スペースを設けました。赤坂というエリアが持つ空気感を大切にしながら、地権者の皆様と10数年をかけ素晴らしい建物ができたと感じています。

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