不動産トピックス

第19回不動産ソリューションフェアセミナー・パネルディスカッション再現

2017.11.06 17:05

第19回不動産ソリューションフェアセミナー・パネルディスカッション再現
テーマ:ここだけは押さえたい!民法改正と賃貸借契約実務

個人保証の場合は極度額の設定が必要に
判例や法理に沿った内容に 特例は契約書の明記が重要
 現在の民法は1896年、明治時代に制定されました。いくつかは改正されましたが、債権法の大幅な改正は制定以来、行われてきませんでした。そのため内容が不明確な箇所もありましたが、今回120年ぶりに大幅な改正がなされました。公布から3年以内には施行されるとのことなので、2020年6月までの間には改正民法が施行・適用されることになります。改正の内容は大きくわけると個人保証の要件ができたり、約款の規定が新しく設けられたり、個人消費者や中小企業の保護を目的とした規定が新設されています。そのほか、消滅時効制度の変更や法定利率の変更などもあります。ここも賃貸借契約に若干関わってくることになります。また瑕疵担保と呼ばれていたものが契約不適合責任という変更も行われました。実務上、最も影響があるのは個人保証についてであると考えています。それ以外では敷金や原状回復義務などの改正があります。これまで明文化されていませんでしたが、これまでの判例などを基にして法理や基準ができあがり、それにしたがって運用されている部分が法律化されたものが多いです。そのため、これまでの判例などに従って運用されている方にとっては、保証以外の部分でただちに影響するものではありませんが、そうでないケースもあると思いますので、解説したいと思います。今回の改正では個人保証人保護を観点にした様々な規定が設けられています。個人根保証契約について極度額の設定がなされました。一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約です。自分が保証している債務の、具体的な金額がまだ決まっていないものについて、個人が保証人となる場合、極度額を設ける必要が出てきます。賃貸借契約でみると、主たる債務者である賃借人の債務(賃料の支払い債務、原状回復義務)について、具体的には契約時にはまだ定まっていません。そのような債務について個人の保証人をつける場合には個人根保証契約に該当すると考えられます。そのため極度額を設定しないといけません。たとえば300万円までを極度額として設定します。テナントが500万円の未払いがあった場合、これまでは保証人にも極度額はなかったため500万円を請求できましたが、極度額設定以後はその額まで、この場合では300万円が限度となります。このとき注意したいのはこれまでと同様に極度額を設定しなかった場合、保証契約自体が無効になり、保証人に対し請求することができなくなります。次に極度額の定め方です。賃貸人としては可能な限り高額な極度額を設定したいと思います。しかし、保証人のなり手がいなくなっても困ります。テナントによっても変わってくると思いますが、相応のリスクに沿った極度額設定が望ましいと考えられます。続いて、敷金についてです。現在の民法では全く規定がありません。そのため敷金の返還などについて訴訟トラブルが多くありました。現時点で判定法理は確立され、今回民法にも反映されることになりました。「賃借人の債務の担保で渡されたもの」が敷金の定義です。返還義務が生じる時についても明文化され、賃貸借契約が終了し賃貸目的物の返還を受けた時、あるいは賃借人が適法に賃借権を譲渡したときです。後者は注意が必要です。賃借権の譲渡は賃貸人の承諾が必要ですが、譲渡がなされた場合には敷金は承継されず、もとの賃借人に戻し、新しい賃借人から敷金を新たにもらう必要があります。もし例外的に敷金を承継するような形にする場合には、書面で明確化する必要があります。敷金の承継については賃貸人の変更についても明文化されています。建物の所有者が変わった場合、賃貸借契約書に限らず、契約の相手方を変えるには相手方の同意が原則必要です。ただ賃貸借に関しては基本建物を貸すだけなので、テナントの同意がなくても承継してきました。今回、それが明文化されています。敷金返還債務も移転します。ただ1点注意したいのは未払いがあった場合です。ここについては明文が規定されていないのですが、過去の判例を見ると前の所有者に残ります。敷金についても、その未払いの分を充当し、残りを新所有者に移転されます。続いて原状回復義務です。トラブルが非常に多かったところですが、基準はある程度明確になり、改正民法において国土交通省のガイドラインや判例法理にほぼ則って明文化されました。事業用では壁、床、天井など全て賃借人の負担になっているケースが多いと思いますが、法律は住宅用に限定していません。そのため今後は契約書で明文化する必要があります。細かいところに目を向けますと、建物が漏水などによって使用ができなくなった場合、賃料を請求できるのかという問題がありました。今回の改正民法ではその部分の割合に応じて「当然に減額される」という明文化がなされています。

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