不動産トピックス

クローズアップ 窓廻り編

2017.10.30 10:48

 ビル用の窓製品の進化が著しい。屋内に光を取り入れるだけでなく、高い省エネ性能を発揮する樹脂窓がビル分野への普及を進めようとしている他、IoT技術で高度なセキュリティ機能を有したハイテク窓の開発に着手する動きも顕在化している。

YKK AP ビル分野に樹脂窓 
結露を防ぎ省エネ性能向上、ホテル・低層マンションから
 YKK AP(東京都千代田区)は今月10日に記者説明会を開催し、ビル用樹脂窓「EXIMA37(エクシマ・サンナナ)」と「EXIMA77(エクシマ・ナナナナ)」ならびにビル低層集合住宅向けアルミ樹脂複合窓「エピソードNEO―LB(ネオ・エルビー)」を発売すると発表した。説明会では代表取締役社長の堀秀充氏自ら「ビル分野に向けた新たな樹脂窓製品を開発し高断熱化を進めていく」と意気込みを語った。
 同社は窓製品による省エネ化を実現するべく様々な製品を開発してきたが、2016年の同社出荷実績では40%がアルミ単板サッシ、アルミ複層サッシが58%で、高断熱商品の割合はわずか2%に留まっていた。堀氏は「アルミサッシの最大の強みであるコストを考えながら、2020年までに高断熱商品であるアルミ樹脂複合と樹脂サッシの出荷数を20%まで高めるべく、集合住宅や一般ビル向けに高断熱商品を投入した」と説明する。
 新たに投入した製品の1つ「エピソードNEO―LB」は来年1月から順次販売する。これまでビル集合住宅(マンション)は住戸が隣接し、外気に接する割合が少ないことやコンクリート駆体の高機密性から窓の断熱化が進んでこなかったが、国が集合住宅向けZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)支援策の新たな枠組みが検討される等、窓の高断熱化への要望が加速している。同製品はJIS基準断熱性能でH―5という高い断熱性能を実現した他、窓の結露もアルミ窓と比べて抑制できるのが特長だ。また室内イメージに合わせた窓の内観カラーが選択でき、既存窓を改装して設置することができる。
 もう1つ投入したのはビル用樹脂窓「EXIMA37」と「EXIMA77」だ。今年11月15日から販売を開始する。低炭素化社会の実現に向けて建築物のゼロエネルギー化が求められる中、窓の高断熱化は省エネ効果の高い手法として注目が集まっている。加えて、観光立国化政策や高齢化社会に対応するべくホテルや高齢者施設の供給が増えているが、こうした施設は窓辺の冷気の遮断と、メンテナンスや衛生面から防露性が求められており、同製品で対応する腹づもりだ。JIS基準最高グレードの断熱性能H―6を実現。樹脂の熱伝導率ははアルミの約1400分の1で結露抑制、冷気を遮断し衛生的な空間を確保できる。外気温0度、室内温度20度でシミュレーションした場合、アルミ窓には結露が発生するが、樹脂窓の内側表面温度は10度以上を保ち、結露が発生しない。また、たてすべり出し窓対応は開口を制限し換気時も安全を配慮。清掃時は全開にできるので外側も掃除できる。また、外部ハンドルで窓を全開にできるので非常用進入口としても機能する。
 一方、樹脂窓は防火性の観点からオフィスビルへ採用することが可能なエリアは皆無だ。来年以降に防火仕様の開発を予定しており、ビル分野での樹脂窓の本格的な普及拡大はこれからといえそうだ。 


LIXIL 防犯ベンチャーに出資 IoTを活用「次世代の窓」開業
 LIXIL(東京都千代田区)は今年8月29日に、スマートセキュリティ製品の開発・製造・販売および運営サービスを提供するSecual(東京都渋谷区、以下セキュアル)に総額1億円の出資を行った。今後はセキュアルが有するIoT技術を生かした住宅用の商品を開発していく。
 今回出資したセキュアルは窓やドアからの侵入を検知し、利用者のスマートフォンに即座に通知が届くスマートホームセキュリティサービス「Secual」などを開発し、急成長を遂げているベンチャー企業だ。セキュアルの商品・サービスは、住宅をはじめ国立科学博物館など国内の様々な公共施設に採用されている。
 一方、窓・ドア製品を開発するLIXILは日本の窓・ドアの高性能化を進める戦略を継続して展開しており、断熱性、デザイン性、採光性、眺望性、そして防犯性など、開口部に求められるニーズを多面的に捉え、壁とほぼ同等の断熱性能を実現した「レガリス」など、幅広い製品開発を行っている。
 同社によると「セキュアルに出資することで、両社の関係をより強固なものとし、お互いの強みを生かした新しい窓・ドアの商品企画・開発を、スピードを上げて進めることが可能となります。その第1弾として『次世代の窓』をコンセプトにした住宅向け窓、ならびに周辺機器の開発に着手します」としている。


三協アルミ社 ビル用基幹サッシを刷新
 三協立山・三協アルミ社(富山県高岡市)は今年6月にビル用の基幹サッシ「MTG―70」を刷新し「MTG―70R」として発売を開始。引違い窓などのスライド系窓種に「セーフティハング機構(脱落防止安全機構)」や「樹脂製コーナー部品」を標準装備するとともに、すべり出し窓などのスイング系窓種には「小開口制限アーム」をオプションでご用意するなど、安全・安心機能を充実させた。採風ドアや清掃モード付すべり出し窓などもラインナップしており、利用者の多様なニーズに対応することも可能だ。
 また、隣地との境界が狭い場合や落下防止という安全面の配慮などを希望する利用者のニーズに対応するため、すべり出し窓や突出し窓には有効開口幅を70mmに制限する「小開口制限アーム」を用意するなど、オプション部品も充実している。

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