不動産トピックス

ホテル運営会社次の一手を探る

2017.07.24 17:15

ヒューリック×KPE=KHリゾートマネジメント 新たに6軒計画/2020年には10軒体制に

高級旅館の新規出店加速

 ヒューリック(東京都中央区)は高級旅館開発事業を加速させる。総合レジャー事業開発のカトープレジャーグループ(KPG 東京都渋谷区)との協業で「ふふ」ブランドを今後、6カ所にオープンさせる。ヒューリックは既存事業のほか、成長分野が期待できる3k(高齢者・観光・環境)事業に力を入れているが、中でも観光事業は大きな柱になるものとして期待は大きい。

合弁会社が運営 都心近郊で開発
 ヒューリックとKPGはこのほど、高級旅館「ふふ」シリーズ計画の概要を発表した。28年10月開業の「河口湖ふふ」(山梨県南都留郡)を皮切りに、「熱海ふふ 木の間の月」(静岡県熱海市)、「奈良ふふ」(奈良県奈良市)、「京都ふふ」(京都府京都市)、「日光ふふ」(栃木県日光市)、「強羅ふふ」(神奈川県足柄下郡)と20年までに6軒を開業させる。
 両社はすでに三井家別邸をリニューアルした「強羅翠松園」(神奈川県足柄下郡)や「熱海ふふ」(静岡県熱海市)を運営している。ヒューリックが不動産の開発・所有を担当し、KPGが65%、ヒューリックが35%それぞれ出資したKHリゾートマネジメント(東京都渋谷区)が運営するスキームだ。
 両社が手掛ける高級旅館事業は、「スモールラグジュアリーリゾート」と呼ばれ、文字通り10~20室の小規模施設のもので、客単価は5万円以上が主流となる。
 原則として都心から 1・5~2時間程度の距離にある温泉リゾート地を中心に、高級旅館の開発・取得を合わせて10軒程度進めていくという。
 「奈良と京都は例外として、都心近郊というエリアに出店するという原則に即せば、あと3~4軒を開発していきたいと考えています」と、ヒューリックの観光事業を統括する高橋則孝常務は話す。
約300億円を投資ブランド確立目指す
 「労働人口の減少によるオフィス需要の減少」、「シニア人口の増加による旅行マーケットの拡大」、「インバウンドの増加」を背景にヒューリックは、観光事業を成長分野として事業戦略の大きな柱として積極的に展開している。
 同社の観光事業は次の4つが柱だ。
(1) 自社運営
 「THE GATE HOTEL」ブランドを展開する。22年に開業した「THE GATE HOTEL雷門」を皮切りに、28年10月には銀座・有楽町地区に「THE GATE HOTEL東京」(164室予定)、京都市では、立誠小学校跡地に建設する計画。今後は都心部の好立地にある所有ビルの建て替え案件を中心に出店していく。
(2) ホテル投資
 同社が大家として外部の運営会社に委託する。例えば昨年600億円の買収で大きな話題になった「グランドニッコー東京台場」、「東京ベイ舞浜ホテル」「東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾート」がある。
(3) 日本ビューホテルへの出資
 「浅草ビューホテル」などを全国で運営している日本ビューホテルへ26%出資しており、場所によっては日本ビューホテルが運営を担当する。今後はグループ化も視野に入れている。
(4) スモールラグジュアリーリゾート
 カトープレジャーグループとの合弁会社KHリゾートマネジメントを設立し、高級旅館を開発する。
 中でも、1泊5万円~10万円の「スモールラグジュアリーリゾート」は、今後の市場拡大が見込める分野だという。
 「日本ではまだこうしたコンセプトの宿泊施設は少なく、期待は大きい。当社としては1軒あたり約40億円、全部で300億円程度の投資を考えています。当社のポートフォリオの中に増やしていきたいと考えています。節目となる10軒以降はまた、ブランド展開を考えていきたい」(高橋常務)
 目標売上は1棟当たり平均10億円を目標に進めていく。
ロケーションを重視 最高級のもてなしを
 ヒューリックの「スモールラグジュアリーリゾート」ビジネスのパートナーとなるKPGは、高級うどん店「つるとんたん」で知られ、1962年の創業以来、「総合的なレジャー事業開発の実現」をコンセプトに、飲食店だけでなく、ホテル・旅館・リゾート等、様々な企業とのコラボレーションで多くの業態を開発してきた。
 KPGの加藤友康社長は、ヒューリックとの協業によって、「『世界発日本のリゾートの創造』として、トップレベルの高級旅館の運営を目指すことで、旅館運営のノウハウを蓄積し、所有と運営の両面から、成長産業での競合優位な事業ポートフォリオの構築を図る。国内の消費リーダーであるシニア層のニーズや、急増するインバウンドの個人旅行者のニーズの獲得を目指していく」と話す。
 また、「『地』の力、『人』の力、『ソフト』の力が磁場を作り出すと考えています。ロケーションはもちろん、建築、料理、光、音と全てに亘ってこだわりを追求し、細やかなサービスや最高級のおもてなしを提案しています」(加藤社長)。
 そのためにはあえて客室数を少なくし、最高のオペレーションを追求する、これが両社のコンセプトだ。ヒューリックとKPGが取り組む事業は、「スモールラグジュアリーリゾート」という日本ではまだ小さい市場を拡大できるか、宿泊業界でも注目が集まっている。

「奈良ふふ」は高畑町裁判所跡地に
 29年秋を目途に進めている「日光ふふ」は、東武鉄道が所有する日光市田母沢地区に建設する。皇室の静養地として利用されてきた歴史ある土地で、20年まで日光田母沢ホテルとして利用されていた。敷地面積約1万4000㎡にものぼる。 
 施設は、延べ床面積約3000㎡、全室に天然温泉の露天風呂を配置した50㎡以上の総数22室のスイートルーム仕様となるという。
 「熱海ふふ 木の間の月」は、今年10周年を迎える「熱海ふふ」の別館として開業する。地上3階建てで鮨カウンターやプライベートガーデンテラスと温泉を備える。
 一方、「奈良ふふ」は奈良公園の南側にある高畑町裁判所跡地に開業する。庭と茶室を作るほか、木々や庭園と調和するしつらえに奈良県の食材を生かした和食レストランを併設する。デザイン監修は隈研吾建築都市設計事務所が担当する。

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