不動産トピックス

クローズアップ 代替エネルギー活用編

2017.04.24 14:58

 原発事故以降、日本は過度な原発依存から脱し、再生可能エネルギーを中心とする新しいエネルギーの活用に積極的な関心が寄せられるようになった。まだまだ研究途上の分野ではあるものの、近い将来我々の身近な存在になるであろう代替エネルギーに注目する。

三嶋電子 電池いらずの水電池式懐中電灯
 停電時や災害時に手元を明るくするアイテムとして広く知られる懐中電灯。しかし、いざという時に電池が切れていて使用できなかった経験を持つ方も少なくないはずだ。懐中電灯に乾電池をセットした状態で放置すると微量な放電が長時間にわたって続き、乾電池の機能を喪失させてしまう。
 そうした状況に対し、電子部材の製造・販売を行う三嶋電子(東京都千代田区)の檀浦逸克社長自らが、水を燃料とした水電池式の懐中電灯を開発。乾電池式の懐中電灯に替わるアイテムとして販売活動を展開している。
 水で発電する仕組みは、化学の実験でも行われる木炭電池と原理は同じである。木炭に紙マグネシウムを巻き付け、紙を水で湿らせるとマグネシウムが水に含まれる酸素と結びついて酸化マグネシウムに化学変化する。その際に放出された電子が電流となって電気エネルギーを生み出す。三嶋電子が開発した水電池式の懐中電灯は、ケース内の水電池を5秒から10秒間水に浸すだけで電球を点灯させる。水(H2O)を含んでいる液体であれば何でも発電が可能で、水だけではなくお茶やコーヒーさらには海水などでも発電可能だ。同社製の水電池式懐中電灯は連続10日間以上点灯させることができる長寿命が特長で、未使用ならば10年程度放置してもその機能を失うことはない。
 「東日本大震災の発生直後、取引先である大阪の商社からの依頼で、水電池式の置型ライト500台を被災地の宮城県気仙沼市に届けました。被災地ではライフラインが遮断されているため、水は大変貴重です。当社の水電池は川の水など、飲み水以外の液体でも発電することができるため、被災者の方々から大変喜ばれたという報告を受けました」(檀浦氏)
 この経験を生かし壇浦氏は懐中電灯のほか投光器、ライフジャケット、ランタン、警告灯といった様々な製品を水電池式で開発した。使用後は家庭ごみとして分別廃棄ができる環境に優しい水電池式懐中電灯を、既存の乾電池式懐中電灯と併せて常備するよう積極的に企業に呼びかけている。

産業技術総合研究所 排熱を利用する発電装置
 産業技術総合研究所(東京都千代田区)は、工業炉や焼却炉、エンジンなどの排熱から発電できる空冷式のポータブル熱電発電装置を開発した。この発電装置は冷却水を用いず発電でき、複雑な設置工事も必要としない。
 この発電装置は、産業技術総合研究所が独自に開発した800度の高温でも安定して発電する酸化物熱電モジュールと、空冷部分にヒートパイプを用いることで実現。200~800度の熱源があれば発電装置の集熱部を高温の場所にかざすだけで発電できるため、工場や焼却場の排熱から簡単に発電することができる。また、災害時の緊急熱源としても利用することが可能。熱電発電装置の部材は従来の熱電材料に含まれていた有毒な鉛などを含んでおらず、人体に無毒なカルシウム、コバルト、マンガンの酸化物素材で作られ、回転系や引火性の部品もないため安全であり、製造時に消費したエネルギーも約5カ月の発電で回収する。
 一次エネルギーのうち、有効に利用することができるのは30%程度であり、70%近くは排熱として大気中で放出されている。この莫大な排熱に加え、太陽熱や地熱など未利用熱を有効活用するための技術開発が、昨今盛んに行われている。その中で熱電発電は、変換効率が排熱量に依存せず一定で発電できるため、分散した希薄な排熱を用いたい発電の実現に向け期待が寄せられている。また、熱電発電は温度差で発電するため、太陽熱や地熱などの再生可能エネルギーからも発電することができ、省エネルギー・温暖化問題の解決に貢献できるとして、世界中で研究開発が進められている。産業技術総合研究所では今回開発した発電装置の実証試験を行い、工業炉や焼却炉からの排熱回収用や非常用電源として、2年以内の実用化を目指す。さらに、高性能・耐久性・安全性・コスト性に優れた新たな熱電材料と熱電モジュールを開発し、高効率熱電発電技術により、省エネルギーやCO2排出量の削減、新産業創出に貢献するとしている。

日立造船 固体酸化物形の燃料電池 実際の深環境での実証開始
 日立造船(大阪市住之江区)は、業務・産業用固体酸化物形燃料電池(SOFC)発電装置の製品化及び事業化に取り組んでおり、大阪市大正区の同社築港向上での内部試験を経て、2017年度市場導入に向け大阪府・大阪市の公共施設において、産官連携により実際の負荷環境下での実証試験を開始する。同社は先進的な水素プロジェクトの創出を目指す大阪府・大阪市共同の取り組みである「H2Osakaビジョン推進会議」に参画。4000時間以上の連続運転試験などを通じ、運用や信頼性を評価する予定である。
 この業務・産業用固体酸化物形燃料電池発電装置について、同社は市場規模・採算性を考慮し、20~数百kWまでの食品スーパー、コンビニエンスストア、オフィスビル、集合住宅などを対象とした2017年度の市場導入を目標に開発を進める。同社は主力事業であるごみ焼却発電事業をはじめ、風力発電、木質バイオマス発電など再生可能エネルギー分野にも積極的に取り組んでおり、今後はこの装置の燃料多様性を生かし、メタンのみならずバイオ燃料及び水素の適用も視野に入れ、事業化に取り組むとしている。

PAGE TOPへ