不動産トピックス

クローズアップ 簡易宿所取得編

2017.02.06 14:11

 新法が間近に迫るなかで盛り上がりを見せる民泊。一方、関心のあるオーナーからも違法性に懸念の声があがる。加えて、新法で想定される規制も敬遠のされる。そのなかで注目が集まるのは簡易宿所を取得した上での「合法民泊」。この許認可を得る上で強力なパートナーが誕生している。

おもてなしJAPAN 合法民泊で地方創生や遊休不動産の活用手段に
 おもてなしJAPAN(東京都新宿区)では地方創生や遊休不動産を抱えるオーナーへの提案として簡易宿所型民泊を勧めている。同社の設立に携わった代表取締役の土手修氏、専務取締役の佐藤廣之氏は住宅メーカーで建築畑を歩んでいたが、「合法民泊を主流にしていき、業界の適正化を促していきたい」という思いから昨年3月に起業するに至った。
 同社のミッションはふたつある。
 ひとつは簡易宿所を取得した合法的な民泊で、地方創生に貢献していくことだ。地方自治体は訪日観光客を受け入れたいと考えており、実際に観光資源を豊富に持つところも多い。その一方で宿泊施設や外国人観光客受け入れのためのノウハウが少ないのが現状だ。そこで同社では昨年4月に「全国民泊推進ネットワーク協議会」を設立。佐藤氏によれば「多くの地方自治体関係者や学術関係者などにご参加いただき、実際にプロジェクトも進んでいる」とのこと。成果を見るのもそう遠くはなさそうだ。
 そして、もうひとつのミッションが民泊運営に興味を持っているオーナー向けに簡易宿泊所の取得をコンサルティングしている。「難しい」と言われている簡易宿所の取得だが、その理由を佐藤氏は次のように説明する。
 「簡易宿所の取得が難しいのは自治体ごとによって条例や解釈が異なること、加えて保健所の各職員の旅館業法に対する理解も幅があることです。また簡易宿所の許認可を得るには旅館業法のほかにも建築基準法、消防法への知見が必要です。行政書士による簡易宿所取得支援は多くありますが、建築基準法、消防法への知見がないために非常に難しいのが実態です。当社では代表の土手、私が建築畑を歩んできたことから多くのノウハウを持っているとともに、専門にしている方とのコネクションもあります。そのような総合的なノウハウから簡易宿所型民泊物件の拡大に貢献していくことが可能です」
 すでに実績も出しており、渋谷区内のアパートにおいて1部屋を昨年11月25日に、もう1部屋を翌月12日に簡易宿所の許認可を取得。またテナントビルにおいてもワンフロアで許認可を取得することに成功した。
 「保健所の職員にも簡易宿所許認可の業務経験が薄いこともしばしばです。また法律や条例をどのように解釈するかでも、実際の条件は交渉次第となります。このような交渉を可能にするのは、繰り返しになりますが、建築の知識が必須です」(佐藤氏)
 同社ではこの2つのミッションをもとに「適正な民泊の拡大を図っていきたい」とのこと。地方での宿泊施設のプランニングも行っており、佐藤氏は「近日中に大きな発表ができるのでは」とほのめかす。有力な不動産活用の選択肢となるためにも遵法性は欠かせない。今後、この2つのミッションに注目は欠かせない。

堀口ハウス 簡易宿所型民泊のススメ 仲介兼行政書士だからできる民泊コンサルティング
 川崎市を中心に「店舗ヴィレッジ」という屋号で事業用仲介を展開する堀口ハウス(川崎市幸区)。同社が昨年より始めたサービスが民泊物件の仲介サービスだ。
 契機となったのは一昨年のこと。代表取締役の堀口貴宏氏は「私の知人で民泊を行っていた人が大きな利益を出し、2軒目、3軒目と展開を進めていることを知りました。『これは不動産経営のチャンスなのでは』と考え、私自身も情報収集するようになったのがきっかけです」と話す。
 宅地建物取引業を取得していない民泊物件「紹介」サービスは数多くある。が、堀口氏はメーンが事業用仲介であることから宅地建物取引士を有していることはもちろんのこと、さらに行政書士の双方の資格を持っている。同氏がオーナー向けに民泊コンサルティングを行う理由は「不動産経営のメリットの最大化」だ。
 民泊に関心の高いオーナーの間でも「完全に合法的に」という声が大きいのは確かだ。堀口氏は次のように証言する。
 「これまで何度かセミナーを行い、終了後にアンケートをとってきました。オーナーが最も懸念されているのは民泊の稼働率や収益ではありません。『合法的に行うにはどうすればいいか』と『民泊新法の動向』です。オーナー向けに民泊を勧める事業者の多くは利益の点をプッシュしますが、当社ではその先の法律面でのサポートも行います」
 いまだに新築マンションの建設が相次ぐなかで、既存オーナーは当然のことながら、「10年後、20年後、不動産はどうなってしまうのか」という不安がある。民泊は昔ながらの畳の部屋に人気が集まることもあるように、ポイントは立地と内装、そして法律への対応だろう。  「当社では所有の物件で民泊が収益的に現実的か、どのような内装にすればいいか、加えて旅館業法などの法的整合性を取ることも可能です。簡易宿所は旅館業法、建築基準法、消防法にまたがるものであり、行政書士ひとりの力では難しいものがあります。そこで知り合いの1級建築士の協力を得てチームで対応を行っています。これらの総合力でオーナーの懸念を取り除き、不動産経営の選択肢を広げるお手伝いをしていけいければと考えています」(堀口氏)
 民泊新法が成立してもそれを導入するか否かは自治体の判断に任される。簡易宿所取得も決して平易ではないが、不動産のありうる選択肢として押さえておきたい。

アヴァンス行政書士法人 合法民泊が可能か否かウェブで簡易な診断が可能に
 アヴァンス行政書士法人(大阪市中央区)は不動産オーナーや不動産管理会社が保有・運営する不動産が民泊施設として利用できる可能性があるかウェブで簡単に診断できる「民泊診断.com」コンテンツを今月1日よりスタートした。
 実際の民泊許可(認定)には診断内容以外に、消防法、建築基準法、廃棄物処理法等、諸条件があり監督各所と打ち合わせのうえ条件を整えて申請する必要があるが、同コンテンツはその参考として利用することができる。
 現状、民泊の9割以上が簡易宿所の許認可や特区の申請などを得ず、違法民泊が横行している。違法民泊を減らし近隣住民が安心できる適法民泊を普及させていく目的から、手軽に所有する物件において民泊が可能か否かを判断するツールとしてリリースした。
 同法人では大阪市特区民泊の要件や大阪市において民泊稼働率の高い地域など調査した結果等についてのセミナーも開催している。

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