不動産トピックス

クローズアップ アクアリウム編

2014.05.05 17:33

 鑑賞魚と聞くと、ゴージャスというイメージがあるかも知れない。しかし最近では癒やしの効果も認識されつつあり、医療施設への設置も増えている。レンタルを中心としたアクアリウム設置サービスを取り上げる。

 ビル内へのアクアリウム設置には様々な理由・メリットがある。一般的なものとしてはゴージャスさの演出や競合物件との差別化などが挙げられるが、もう一つ、「生き物が与えてくれる癒し」という大きなメリットが存在する。
 「高層ビルが増加していますが、コンクリートの建物は何か乾いた印象を与えます。昨今オフィスにアクアリウムを導入する事例が増えているのも、ある種の潤いが求められているからではないでしょうか」と話すのは、アクア環境システムTOJO(東京都品川区)の代表取締役・東城久幸氏。アクアリウムのレンタルやメンテナンス事業を展開する同社ではアクアリウムが与える癒しの効果についても研究をすすめており、医療機関での採用が約35%を占めている。最近では高齢者施設への導入例が増加傾向にあるというのも、癒しの効果を感じさせる。
 レイアウトは生け花の手法などを取り入れ、水中だけでなく水上における演出も得意としている。水槽に再現された滝や上部に植えられた紅葉や桜などは、アクアリウムという枠を超えたアートとしての評価も高い。月1~2回が主流といわれているメンテナンスも毎週実施しており、「創る」だけでなく「維持する」ための業務にも注力する。水槽をはじめとする各種の機器はレンタルを基本としているためいつでも契約変更ができ、室内の模様替えに合わせた水槽レイアウトの変更にも柔軟な対応が可能だ。
 また「TOJOファミリー」と呼ぶフランチャイズ展開もすすめている。魚や水草に関する知識や水槽レイアウト、営業方法などについて8日間の集中研修で学び、独自のライセンスを取得した後にファミリーの一員として開業するシステムで、これまでに約90組が水景デザイナーとして独立。今では北海道から沖縄まで全国各地で活躍している。ビル管理・ビルメンテナンス業務の一環としても活用できそうだ。
 さらに独自技術の開発にも力を入れており、今春には技術的に難しいとされてきたクラゲの飼育法を確立。日本初となるクラゲのアクアリウム「クラゲセラピー」の展開を間もなく開始する予定という。
 「アクアリウムがもつ効果がようやく知られるようになってきたと感じています。今後は癒しの効果をさらに追求するとともに、より多くのビルに普及させていきたいと考えています」(同氏)

 ビルやマンションなどの管理・メンテナス業務を主業とするビルシステム(横浜市中区)。同社では、アクアリウムのリースやメンテナンスも行っている。
 アクアリウムは水槽の中を泳ぐ魚たちを眺めているだけで心が安らぐと、ビルやオフィスへの導入を進める動きは活発化しつつある。アクアリウムはビル内の雰囲気づくりにも一役買うが、内装リフォーム業務も行っている同社ではオフィスやビルの内装にあわせたアクアリウムの提案も行っている。アクアリウムに合わせた内装など、ビル内全体のトータルコーディネートが可能だ。
 しかし実際の導入にはコストや維持管理の手間もかかり、なかなか踏み切れないというのが現状ではないだろうか。そこで同社では、自動販売機の設置とアクアリウムの導入をセットにしたサービスを行っている。
 同サービスは飲料メーカーとのタイアップによって実現したもので、自動販売機の売上をアクアリウムの導入やメンテナンスに充てるため、実質負担はゼロでアクアリウムの設置が可能となった。手軽なバリューアップ手段として、ビルやマンションでの導入が広がりつつあるという。水槽を眺めながら一息入れれば、リフレッシュ効果もさらにアップするかもしれない。

 アクアリウムのリース・レンタルを専門とするアクアリンク(東京都台東区)。同社は水槽の自社製造部門を持つ、唯一の水槽メンテナンス業者だ。
 アクアリウムの設備のなかでもコスト割合の大きい水槽を自社製とすることは導入費用の低廉化にもつながり、あらゆるオーダーにも対応可能などメリットは多い。さらに同社の強みとなっているのが、独自の管理ノウハウだ。
 当然だが、自然界では水替えや清掃はない。同社では生態学の研究に基づき自然とほぼ同じ環境を水槽内に再現。独自の飼育ノウハウとともに、水槽内の環境悪化を最低限に抑えるノウハウを確立した。これにより、一般的には月2~4回は実施する必要があるとされているメンテナンスの頻度は基本的に月1回。さらに同社ではメンテナンス業務を「『清掃』ではなく『アクアリウムを育てる』業務」と位置付けていることからも、意識の違いを感じさせる。頻度の少ないメンテナンスは費用低減につながるとともに、きれいなアクアリウムを保つことも実現しているといっていい。
 こうしたノウハウが評価されたこともあり、葛西臨海水族園などにも納入実績をもっている。またメンテナンスは24時間、365日対応可能というのも特徴的だ。業種によっては深夜でないとメンテナンス時間がとれない場合もある。また緊急時にいつでも駆けつける体制が構築されているのも安心感向上に役立っている。
 同社の営業範囲は関東と関西のみだが、顧客の数は1000件超。平均的な業者の顧客数が200件といわれるなかではトップクラスだ。設置を申し込んでから1カ月以上の予約待ち状態が続いているというのも、同社の技術や管理体制に対する評価といっていいのではないだろうか。

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