不動産トピックス

今週の一冊

2012.04.09 11:06

被災地の被害状況を克明に追ったデータ集

3/11 平成津波 被害記録と提言「津波と街と建築」
著者:耐震総合安全機構
  出版:テツアドー出版
発行:平成24年2月9日
価格:3700円(税抜)

 平成23年3月11日14時46分に発生した東北地方太平洋沖地震から早くも1年が経過し、震災関連の書籍も多数出版されるようになったが、被災者の境遇や支援者との「絆」をフォーカスしたものが多かった。そうした中で、東日本大震災の津波による建築物の被害を綿密な調査によって分析し、津波に打ち勝つための建築物の設計のあり方について提言をまとめたのが本書である。
 著者は阪神淡路大震災を契機に設立された建築耐震設計者連合の活動を引継いだNPO法人耐震総合安全機構である。東京都の特定緊急輸送道路沿道の耐震診断義務化における都認定の確認団体である。同法人は昨年5月から11月、岩手県から福島県まで全5階に渡る調査を行ってきた。非住宅系建築物や土木構造物の被害について報告するだけでなく、被害を地域として捉え、地形、堤防、町並み、防潮林、津波火災に至るまで検証を試み、今後の減災への提言として、津波で壊れる部分と壊さない部分の適切な配置や津波が建物内をスムーズに流れる形状の建築計画といった、より具体性ある対応策をまとめている。
 被災地の被害状況に対して同情するだけでは本質的な問題の解決には至らない。詳細かつ綿密に被害状況を分析した資料集ともいうべき本書の意義は、災害大国日本における建築や街のあり方に指針を投げかけた点にある。今後起こりうる東海・東南海・南海地震の対策の一助となるにちがいない。


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