不動産トピックス

クローズアップ 非破壊検査編

2009.11.23 11:11

 万一の地震の際に備えて、新規テナントの身ならず入居者からも建物の耐震性能が求められるケースが増えている。その中でも、老朽化や施工の時期によって左右されるのがコンクリートの性能だ。従来、躯体からのサンプル採取には過大な負担がかかったが、調査需要の増大にともない様々な新技術が増えている。

日東建設 ハンマーの打撃でコンクリートの劣化を調査
 コンクリート構造物の調査を行っている日東建設(北海道紋別市)は簡便で高精度なコンクリートの非破壊検査装置「コンクリートテスター」を開発、販売している。
 従来、コンクリートの圧縮強度を躯体からサンプルを抜かずに検査するにはシュミットハンマーによる「反発硬度法」があった。しかし、バネの反発を利用したシュミットハンマーによる「反発硬度法」は精度が低いうえ、横向きや逆さで使用すると精度がさらに落ちる、定期的なメンテナンスを行わなければならないなどの難点があった。
 同社の「コンクリートテスター」は、こうしたシュミットハンマーに替わる診断法として開発されたもので、ハンマー内部に衝撃加速計を内蔵しており、コンクリート表面を軽く打撃するだけで圧縮強度の推定と表面の劣化度合いを測定できる。ハンマーの打撃による運動エネルギーは、コンクリートの表面近辺の変形エネルギーに変形されるが、このようなハンマーがコンクリートを押す波形とコンクリートがハンマーを押し戻す挙動をセンサーによって波形として測定し、内部で抵抗を自動計算し、圧縮強度や表面劣化、剥離をそれぞれその場でディスプレイで確認することができる。
 同製品はコンクリートの老朽化が社会問題化するなか、平成21年には経済産業省の「第3回ものづくり日本大賞・特別賞」を受賞、さらに注目を集めている。

ソフトコアリング協会 直径2cm程度のコア採取でコンクリートの強度を調査
 ソフトコアリング協会(東京都千代田区)では従来のコンクリート強度調査法に代わる、小径コアによる調査法の普及を図っている。
 コンクリート構造物の維持保全は社会的な課題であり、耐震補強のための調査需要が増えている。しかし従来、コンクリートの強度を調査するためには直径10cm×長さ20cm程度のコンクリートコアの採取が必要であった。 そのため、従来の調査法では、構造体を痛めてしまう可能性があることに加え、鉄筋などを避けて採取する必要があるため、本来、強度を調査するべき構造体である柱などの部分を避けて袖壁などからサンプルを採取する必要があった。
 これに対して、同協会が提案する「ソフトコアリング」が必要とするコンクリートのサンプルは直径約2cm×4cm程度と極めて小さなもの。
 このような小径コアであっても従来の手法で必要とする大型のサンプルと圧縮強度には相関関係があり、小径コアの圧縮強度に補正係数を乗じて構造物のコンクリート強度を推定する。
 同調査法では、サンプルとして採取するコンクリートコアを小型にした事で、建物全体の強度に影響のある柱や梁などの主要構造物からのコア採取が可能であり、過密配筋でも鉄筋を傷つけにくい。
 また、採取後の補修も容易であり、試験に当たっても試験機を小型化することで現場での強度測定が可能となり、コンクリートの強度調査にかかる工期やコストを低減できるとして、全国で対応可能な会員を増やしている。

グラフテック 構造物の振動を非接触調査 レーザーの反射によるドップラー効果を解析
 グラフテック(横浜市戸塚区)は、鉄道総合技術研究所(東京都国分寺市)と共同でレーザーを用いた構造物の振動測定システム「Uドップラー」を開発、販売している。
 建築物をはじめ高架、橋梁などの大型構造物の固有振動数の測定は、構造物の性能評価とともに地震の際の災害防止に必要となるが、これまで大型構造物の振動測定には、高感度センサを測定対象の構造物に直接取り付ける必要があり、また、その撤去にも多くの時間を要する作業であった。
 そこで、同社はレーザーを照射して大型構造物の常時微動を測定できる構造物診断用非接触診断システム「Uドップラー」を開発。日常時や災害時における構造物の損傷検出などを簡易に行うことを可能とした。
 同製品では、レーザー光が反射する際、測定対象が移動しているとドップラー効果により波長が変化することを利用し、変化を測定することで測定対象の振動を検出する。
 レーザーを用いたことで、センサー本体から数十mの距離にある測定対象の振動測定が可能。センサーを小型化し、システムを一体化した事で持ち運びも容易になり、データの収録、解析もその場で行えるので大型構造物の振動調査を短時間で行うことができる。また、AC電源のない場所でも充電式バッテリーで約8時間の仕様が可能だ。

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