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悪化する中東情勢、建設・修繕の見通しは

2026.05.18 12:15

資材は供給調整、工事進まないケースも
「相見積もり」や「スライド条項」の検討を
 イランを中心として中東情勢が悪化するなかで、建築現場でも石油由来の資材不足が顕著となっている。資材メーカーは供給調整を実施。価格も30~80%程度の範囲での値上げを通知しているもようだ。スマート修繕(東京都港区)の黒柳真介・執行役員は「オーナーのコスト増も不可避の情勢。相見積もりやスライド条項の追加などの検討を行ってほしい」と呼びかける。
 米国とイスラエルが2月28日にイラン攻撃を実施して以降、中東情勢は急速に悪化。本校執筆の5月7日現在、米国とイラン双方がホルムズ海峡の封鎖を実施する。情勢改善の動きは見えず、日本も国家備蓄石油の放出や代替調達を進めるが、減少分を補うのは困難とみられる。
 こうした状況下で、不動産・建築関係にも深刻な影響を及ぼしている。インパクトをもたらしたのは、TOTOが4月13日に発表した「ユニットバス・システムバス新規受注停止」だ。4月20日から再開しているものの、業界全体が厳しい環境に見舞われていることがうかがえる一報となった。
 スマート修繕の黒柳氏は修繕工事の状況について「現状、3つのケースが見られる」と指摘する。「1つはすでに資材調達をしており、ギリギリで工事のタイミングが間に合ったケース。2つめは、資材調達のめどがつかずに工事をスタートできていないケース。そして最後が、工事を進めるために足場を組んだところで今回の危機が直撃してしまい、その後の工程の見通しが立たなくなってしまったものだ」。
 「特に足場を組んでしまって、その後の工程の見通しが立たなくなった場合、難しい判断を迫られる。再開できるタイミングを待つことはできるが、足場のレンタル料が毎月かかってくる。いったん足場を解体することも可能だが、『かけただけ』になってしまう。今後の情勢の見通しが立たないことが最大の混乱要因となっている」
 建築にかかわる主要資材の大半は石油由来のものだ。たとえばナフサを主原料にしている資材として、管材(パイプ)や床材・シート、ウレタン防水材やシーリング材など。アスファルトも原油を精製した際の最終残渣だ。さらに塗料・溶剤や、断熱材など。医療用が最優先で確保されるため、建設用に供給される量はさらに限られる。
 こうした状況を受けて資材メーカーは3月中旬頃から供給制限や価格改定の通知を出している。値上げ幅は現行価格から30%以上、最大で80%の値上げとなっており、施主であるオーナー側の負担増は不可避だ。
 見積作成にも変化が見られる。「これまで修繕工事を行う際、見積の期日は3カ月以内が多かったが、直近では『10日~1カ月以内』と期間が大きく短縮されているケースもある」(黒柳氏)。今後の見通しがつかないなかで、資材価格が短期間で値上げとなる可能性もあることが背景にある。同氏は「オーナーのコスト負担が増えることは避けられず、無理に交渉すれば施工会社側が断るのではないか」と指摘する。
 黒柳氏はオーナー側の対策として「従来よりもコストが増えることは仕方ないものの、引き続き、業者同士の競争原理を働かせるためにも相見積もりは重要だ」と強調する。価格競争という意味でも有効だが、それぞれ仕入ルートが異なることも大きな意味をもつ。A社が資材調達が困難で受注できる環境になくても、B社であれば調達でき受注可能であるケースも往々にしてある。
 修繕工事を急いでいる場合には「早めの見積取得を」と勧める。状況の見通しがつかない上、好転する兆しもないことから、様子見をしているとより価格が高くなる可能性も否めないからだ。それに加えて「VE(バリュー・エンジニアリング)も検討すべきだ」とアドバイスする。VEは現状の仕様のグレードなどの見直しを図ってコストダウンを図るもの。原料高騰分をいくらか吸収できる可能性はある。
 「施工業者が受注しやすい環境をつくることも有効だ」と指摘する。そのひとつが「スライド条項」と呼ばれるもの。資材価格が高騰した場合には連動して建築コストが高くなることを契約書に盛り込んだもので、従来は大型開発などで見られるものだった。「こうした条項があることは、施工業者にとっても安心感につながり、見通し不透明感をヘッジした価格ではなく、現況に合わせた価格で見積を出すように促すこともできる」(黒柳氏)。
 修繕を急いでいない場合には状況を「様子見」するという選択肢もあるかもしれない。しかし、黒柳氏は「見通しは本当についていない」と繰り返す。先送りすることは、現在の状況では「修繕コストの増大必至」になりかねないことは考慮するべきだろう。




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