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美容専門学校をオフィスビルに改修 エリアの課題解決にも期待

2023.05.01 11:19

 福住(福岡市中央区)は中央区大名に保有する美容専門学校のビルを大規模改修。オフィスビルへとコンバージョン、先月より「プリオ福岡ビル」として運用を開始している。
 「プリオ福岡ビル」は、延床面積3467・75㎡、敷地面積583・14㎡、地上8階建て。平成14年竣工の築21年。福岡市地下鉄空港線「天神」駅徒歩8分、「赤坂」駅徒歩2分に位置する。
 福岡市内といえば、昨今、再開発事業が過熱するエリアとして知られる。2016年には「天神ビッグバン」、2019年からは「博多コネクティッド」と2つの大規模再開発プロジェクトが進行。「プリオ福岡ビル」の周辺では、天神ビッグバンによる再開発が進行中である。
 コンバージョンを行った経緯について、代表取締役社長の河野孝雄氏は「実は、弊社の業務の拡大に伴い、社員数も増えてきていましたので、元々は天神に構える本社の移転用として同ビルを購入させていただきました。3フロア(約360坪程度)を自社利用として、残る5フロアは弊社の本業とシナジー効果が高い企業様に入居していただこうと考えておりました。自社利用予定でありました3フロアには、社員が働きやすい職場環境づくり、お客様をお招きできるショールームなどの構築を考えており、全社員参加で意見を出し、纏めていくという『本社移転プロジェクト』を進めておりました。しかし、2020年1月頃に新型コロナウイルスが蔓延し始めたことで、やむを得ず一旦移転を延期することを決めたそのタイミングで、お取引先企業様から一棟でお貸しいただけないかというお話をいただきましたので、一定期間は一棟貸しをすることを決めたというのが、本当のところです。改修工事を実施するにあたり、専門学校として使用されていたビルをオフィスビルという用途が異なるものに再生させることへの挑戦、並びに省エネ、非接触等ニューノーマル時代へ適応したビルへのリノベーション事業への取組みの観点から、プロジェクトを進めていきました」と話す。
 「プリオ福岡ビル」は設計に約1年半、施工に7カ月を要した。中核となるコンセプトは「ビルの歴史継承」。外壁は全て改修し、木をイメージした街並みにやすらぎを与えるようなデザインを施している。
 内装はLED照明等一般的な省エネに加え、全館バリアフリーの設計、複数の多目的トイレ、非接触型のエレベーターボタン、有害物質を発生させない建材などを導入。今後数十年の経過を見据えて、競争力のあるビルづくりを目指した。
 今後、「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」が福岡の市街地にもたらす影響は大きい。特に天神地区は、容積率の緩和等の優遇措置が施されるボーナス制度を活用するオフィスビル、商業ビルが建替えを控えている。
 この流れを受けて懸念されるのが、賃料相場の飛躍的な上昇だ。新築されるオフィスビルの賃料は坪3万円~3万5000円程度が想定され、「天神ビッグバン」以前の坪2万円前後と比較すると、1・5倍以上にまで上昇する。
 ここまでの大幅な賃料上昇が現実になった場合、入居ができる企業は大手が中心。「天神ビッグバン」に伴う建替えのために一時移転した中小企業にとって、建替え完了後のビルに再入居することは、困難となる可能性も十分に考えられる。
 「天神地域を拠点に営業している弊社としては、天神中心部ではなく周辺部に『天神ビッグバン』以前の賃料程度で入居可能なオフィスを提供することも地域への貢献になるのではないかと考えています。『プリオ福岡ビル』のように、築年数が経過したビルをリノベーションし再生することで地域の発展に貢献し、様々な問題、課題の解決に繋げたいと考えています」。
 「プリオ福岡ビル」は、総合メディカルグループに1棟貸しをする予定という。再開発に伴って発生する地域の課題と需要に、真摯に応えていく姿勢だ。

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