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<賃貸ビル市場の視点>一進一退の空室率・賃料は今後どうなる?

2022.12.12 10:35

 8日、三鬼商事が「都心5区の空室率が11月末で、2か月連続改善」と配信した。が同時に、「5区の3・3㎡当たりの平均賃料は、前月より0・61%安い2万81円と、28か月連続で下落」とした。
 オフィスビルの賃料動向は、どう捉えたらよいのか!?
 オフィスビル仲介の最大手格:三幸エステートの公開資料は、こう示している。
(1)都心5区の(募集)賃料:11月は坪当たり1万9912円。2か月連続の改善も、上昇幅は25円。
(2)都内23区の賃料:11月は1万8858円。やはり2か月連続改善も、その幅は32円。
 表現を選ばず記せば、発表元は仲介業者。今後の動向を予測・発表する立ち位置にはない。今後の賃料動向を展望する情報とは異なる。がビルオーナーの立場からすれば知りたいのは「この先の見方」。
 ニッセイ基礎研究所のレポート冊子版12月号が、『東京都心オフィス賃料は下落継続。首都圏物流市場は空室率が5・2%に上昇―不動産クォータリー・レビュー2022年第3四半期』と題する主任研究員 吉田資氏のレポートを発信している。冒頭部分でも「オフィス市場は東京Aクラス(延床面積1万坪以上、1フロア面積300坪以上、築15年以内)ビルの成約賃料は、前期(第2四半期)比5・8%下落した」と記されている。レポートを要約すると、こんな具合になる。
(1.)不動産市況を予測するエビデントとなる実質GDP動向:11月に改定した。2022年度1・6%、23年度1・0%、24年度1・6%と予測。直近のピーク(19年4―6月期)を回復するのは24年7―9月期と予測。
(2.)オフィス市況:三幸エステートは第3四半期の都心部Aクラスビルの成約賃料は2万7379円(前期比▲5・8%)に下落し、空室率4・0%(同+0・2%)とした。「複数の新築ビルが空室を抱えて竣工したほか、オフィス戦略の見直しによる集約移転や部分解約に伴い空室が増加している」としている。
(3.)ニッセイ基礎研は9月に、都心部Aクラスビルの賃料見通しを改定した。オフィス需要は「オフィス勤務」と「在宅勤務」を組み合わせた働き方が定着し力強さを欠くなか、空室率は上昇基調で推移すると予測する。また成約賃料は2021年の賃料を100とした場合、22年は93、23年91、26年には88となり2013年の水準まで下落する見通しである。
(4.)東証REIT指数(配当除き)の第3四半期は、6月末比1・1%下落した。構成セクター別ではオフィス▲1・9%、住宅▲1・9%、商業・物流等が▲0・1%となった。
 東京都区部の空室率・賃料相場の推移は、決して客観的に語れるものではない。が各ビル経営者にとり今後を思考する上で、参考にはなろう。(千葉明)

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