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SDGsに取り組むテナント

2020.10.12 14:17

 SDGsやESGへの取り組みは業界を横断して進んでいる。不動産業界でもCO2排出削減などを中心にした施策が見られるが、テナント側も独自に取り組む。またそれを支援する製品なども登場している。

 神奈川県内で和食料理店を展開するきじま(横浜市戸塚区)が6月にオープンさせた「日本料理きじま みなとみらい店」。SDGsを推進する同社にとっての旗艦店となる。
 「活いか姿づくり」をはじめとして海鮮料理をメーンとする同社では3年前よりSDGsを経営や事業運営に取り込んでいる。化学調味料や保存料などの添加物を使用しない食材の利用や、洗剤などに使われる石油由来の合成界面活性剤の撤廃などを実施。「みなとみらい店」ではこれに加えて、建具の「FSC認証」の取得なども行った。
 これらの取り組みを行い始めたきっかけとなったのは事業戦略室長の杵島弘晃氏が入社してからだった。同氏は海外生活の中でオーガニックやSDGsに触れた。
 「大学生当時、北米で『ホールフーズ』というオーガニックの食料品店を知りまして、「オーガニック」や「サステナブル」という概念に衝撃を受けました。以後、徐々に自分のライフスタイルも自然とそのような形になっていきました。一方で私が入社する以前、当社でも『SDGs』については他社と横並びの姿勢でした。ただ飲食を提供する事業を行うものにとして、それを口にするお客様があらゆる面で安心して食事ができるようなものを提供したいと思い、もう一歩踏み込んだ施策ができないかと常々考えていました」
 入社後、旗振り役となって、先程のような実績をつくってきた。その道のりは、社内の説得から始まり、企業理念の変更、そして原材料の刷新など、いずれも容易ではなかったという。
 同社の施策は食材だけでない。「みなとみらい店」に使われた「FSC認証」を取得した建具。国際的な非営利団体である森林管理協議会(Forest Stewardship CouncilR、ドイツ・ボン)が発行する森林認証制度。FSCジャパンの説明によれば「責任ある森林管理から生産される木材とその製品を識別し、それを消費者に届けることで、責任ある森林管理を消費者が支える仕組み」だという。
 「『みなとみらい店』ではフローリング、カウンター、欄間、箸、またタンスなどの家具などで使われている木材で認証を受けています。これらの中には約100年前に使われていたようなアンティークの家具も含まれます。既存の製品で認証を受けるのは珍しいのですが、再生材の利用という観点から認証を受けることが可能です」(杵島氏)
 これらの取り組みを進めるきじま。杵島氏も「SDGsへの取り組みを進めている飲食業界のなかでも、先進的な部類に入るのでは」と自信を見せる。一方で、「この取り組みは決して短期的に利益につながるものではない」とも話す。このことは当初、会社全体で進めていくときに苦労することになった。
 ただ同社がこのような取り組みを進めていくのは老若男女誰もが口にする食事であることから。
 「業界を問わず、日本経済全体がコロナ禍で厳しい状況であることは確かです。しかしながら当社は、このような状況だからこそ持続可能な未来を見据えた取り組みの意義は変わらずに重要であると考え、より一層深めていく所存です」(杵島氏)
 不動産業界でもSDGsへの取り組みはデベロッパー各社が行っている。それと並行するようにテナント側の取り組みも進んでいるようだ。
 飲食業界のSDGsやESGに関する取り組みを目にする機会が多くなっている。そのひとつがカフェなどで使われているストローをプラスチックから紙や草などへの変更だ。このような商品ラインアップも多彩だ。
 そのなかでHAYAMI(相模原市中央区)では昨年4月から草ストロー「HAYAMIの草ストロー」の展開を始めている。
 同社の草ストローはベトナムのレピロニアと呼ばれる草の茎を使用する。代表の大久保夏斗氏によると「同国ではバッグなどの製造の原材料として使われていたもの」だという。ただ、レピロニアの生産を強化したことから、供給過多となっていた。それをストローとして販売していくことを考えた。
 環境性能においても優れている。プラスチックに代わる形で出されているストローのなかには使用後の処分過程で環境に負荷をかける可能性があるものも存在する。同社の草ストローは完全生分解性・自然由来となっていて、「使用後は花壇や庭などに置いていけば自然に還元されていく」(大久保氏)。
 すでにカフェやレストランなどで導入が進んでいる「HAYAMIの草ストロー」。大久保氏は「年内に100店舗での導入を目指したい」と話した。

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