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「管理ロイド」運営のTHIRDがCVCファンドから2.4億円調達 管理業務の「効率化」「差別化」「DX」に関心

2020.08.31 15:44

 不動産管理業務でのテクノロジーの活用に注目が集まっている。近年課題となっていた効率化や、コロナ禍で現場情報の遠隔確認へのニーズが急速に高まった。不動産管理プラットフォームの運営企業が不動産デベロッパーから2・4億円を資金調達するなど、DX推進の期待が強まっている。

 AI不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」を運営するTHIRD(東京都新宿区)は双日商業開発(東京都中央区)を筆頭とし、東急不動産ホールディングス(東京都渋谷区)が取り組む「TFHD Open Innovation Program」、森トラスト(東京都港区)、東京建物(東京都中央区)、阪急阪神不動産(大阪市北区)のCVCファンド「HHP共創ファンド1号投資事業有限責任組合」を引受先とする総額2・4億円の新株予約権付社債を、27日に発行したと発表した。
 THIRDは2015年の創業以来、建築技術コンサルティングを行うコンストラクションマネジメント(CM)を中心に建築・機械・電気工事のコスト削減コンサルタントとして不動産・建築のノウハウを第三者視点でIT化することを通じて、「Clear Deal,Clera World」のビジョンを具現化。2019年には不動産業界/建築業界の非効率な業務を改善し、不動産管理業界のDX推進を後押しするAI不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」を開発。昨年11月の製品版リリースから10カ月で大手不動産管理会社30社を中心に全国で2800棟以上に導入。導入不動産管理会社の中には最大で66%の業務効率化につながった事例もでている。
 またコロナ禍による管理業務効率化や現場情報の遠隔確認ニーズも追い風となった。
 この分野への将来的な需要の高まりも予想される。近年では不動産ストック・インフラの維持管理コストの増大により、日本全国の建物で必要な維持管理費は、現状の修繕費と管理費をベースにすると今後50年間で30兆円不足するという試算もある。今後、効率的な建物の維持管理の実践は課題となってくる。
 THIRDでは今回の資金調達によって引受先各社の「管理ロイド」の導入拡大に資する人材採用に加えて、「管理ロイド」に蓄積されたデータを活用し新たなAIサービスの開発投資を行い、管理業務効率化の加速に寄与していく予定だ。
 このAIサービスについて代表取締役社長の井上惇氏は「『管理ロイド』に蓄積されるデータを活用して、修繕工事などの適正価格を分析するものとなる」と説明する。「管理ロイド」内でサービスを展開していく。加えて、利用企業からのフィードバックやニーズに応じるような、新サービスの開発にも取り組んでいく。
 井上氏は「今回出資していただいた各社をはじめとして、不動産管理業界で関心が強いのは『DX化』による効率化や管理業務の付加価値向上です」としたうえで、「その期待やニーズに応えて、各企業と連携しながら、新しい不動産管理のあり方を創っていきたい」と意欲を示した。今後の動向に注目が集まりそうだ。

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