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コロナ下で危機感抱くPM・BM パンデミック時のBCP対応課題に

2020.07.06 16:35

デジタル化需要で「管理ロイド」引き合い増
 コロナ禍でプロパティマネジメント(PM)やビルマネジメント(BM)が危機感を募らせている。4月7日に緊急事態宣言が発令されて、都道府県をまたいだ移動や外出の自粛が要請された。東日本大震災のような局地的な災害の場合、他の県からの応援で復旧させていくことが可能。しかし全国的に襲ったパンデミックではそれでは不十分だった。そのなかで管理会社向けの業務効率化ツール「管理ロイド」を展開するTHIRD(東京都新宿区)のもとには大手PM・BMからの引き合いが増えている。代表取締役の井上惇氏はこの需要増を「アフターコロナ」に向けての一歩だと見る。

 コロナ禍は世界経済、そして日本経済を暗転させるとともに、ライフスタイルやワークスタイルにも大きな変化をもたらした。
 「巣ごもり需要」という言葉が生まれてウーバーイーツといった宅配サービスは大きく注目を浴びた。働き方も在宅で勤務することが推奨。都内では緊急事態宣言を境に6割の企業がテレワークを実施したと言われている。
 これらは不動産にも影響を及ぼす。たとえばオフィスビルではテレワークの拡大により、オフィス規模縮小の動きが急速に強まる。逆に都心出勤者の自宅が近い郊外主要都市の再評価につながる、という見方もある。
 井上氏はこれらの動きが「不動産管理業のあり方にも大きな変化をもたらしている」と指摘する。そのひとつがBCP対応だ。
 「今回のコロナ禍が過去の災害と異なったのは、その影響が全国的で長期間発生していることです。移動が制限されて各拠点間の連携がとりづらくなったことで、少ない人員のなかで感染対策と業務維持を両立させなければならない状況でした。多くの会社は東日本大震災の時に作成したBCPマニュアルで動いたわけですが、今回のコロナ禍はそのマニュアルを更新しなければならないことを突き付けたわけです」
 実際にポストコロナに向けて、各社は「改革」を進めているようだ。その特徴は「デジタルシフト」。たとえばペーパーレスを実現して社員の負担軽減や作業の迅速化。またシステムを利用して現場と本部の意思疎通のスピードアップだ。日常的に管理会社の業務改革やDX推進を支援する井上氏は「トップダウンで全社的な取り組みになっている企業が多いのでは」とみる。
 そのなかで同社が展開する「管理ロイド」への需要も増す。これはAIを活用したクラウド型の不動産管理業務効率化システムで、現場スタッフは現地の情報を専用アプリで写真や動画、また音声で状況を記録。それをシステム上で報告書の体裁に変換して報告書を出力できる。緊急の場合には、上司や拠点責任者への報告し応急処置の指示を仰いだり、協力会社も利用していれば根本原因解決のための工事見積を即座にとることもできる。物件ごとの報告や不具合、また修繕箇所が共有されるアプリのダッシュボードを通して情報共有ができ、業務効率化や労働生産性の改善につながる。井上氏は「これまでも大手管理会社を中心にご導入をいただいておりましたが、今回のコロナ禍で注目度は一段と増したように感じています。管理ロイドのアプリ自体はその物件に関わっているすべての協力会社に無料で配布可能であるため、緊急時のシステム導入の早さもご評価いただいているようです。」と話す。
 最近ではコロナにも対応するため、「災害報告」の機能も搭載。各物件の被害状況をリアルタイムでダッシュボード上に集約していくことができる。販売開始してからすぐに数千棟の導入が決まったという事からもニーズの高さをうかがえる。
 「これまでのように現場作業のあとオフィスに戻り、紙の報告書に書いて、という作業と比較すると格段に業務効率は改善されます。加えてオーナーへの報告もスピーディーにできますので、管理会社への信頼感向上につなげていくことも期待できます」
 予断を許さないコロナ禍。最新のITツールがアフターコロナ対策の先端を担いそうだ。

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