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ヒューリック 銀座で耐火木造商業ビルを計画

2019.09.02 15:51

地上12階は貸ビルとして国内最大
 不動産デベロッパーのヒューリック(東京都中央区)は2021年に竣工を予定する「(仮称)銀座8丁目計画」において、地上12階地下1階の木造商業ビルを計画している。延床面積2451㎡、敷地面積251・98㎡。ファサードデザインは隈研吾建築都市事務所で、設計・施工は竹中工務店。
 同社では高齢者・健康、観光、環境の「3つのK」を新規事業領域として推進してきた。環境面では世界や日本で地球温暖化の防止、CO2排出量削減が課題となっている。2015年に採択された「パリ協定」では世界の平均気温上昇を「2度未満」に抑え、「1・5度未満」を目指すもの。日本に対しても2030年までに温室効果ガス排出量を26%削減することが求められている。
 一方、国内でも建築での木材利用に向けた機運が高まっている。先の地球温暖化防止に加えて、日本の森林は樹齢50年以上の伐採期にあるものが多く、その活用が課題となっている。林野庁が国産木材の利用促進を発表。2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(公共建築物等木材利用促進法)が公布・施行。それに伴い民間建築物への活用も積極的に推進されている。
 ヒューリックではこのような潮流に対して、独自に2030年までにCO2排出量の45%を削減(2013年対比)するCO2排出量削減計画を策定。今回の木造商業ビル計画でも「CO2吸収量の増大」や「森の循環」につながることへの効果を見込んでいる。
 今回の計画について執行役員技術環境企画部長の田中延芳氏は「今回の計画では構造だけでなくファサードデザインにも木材を活用しました」と話す。これまで木造建築物は耐火基準をクリアする一方、コストがネックとなり自社使用のビルなどでの利用に限られてきた。同社では継続的に木材利用を進めていく上で「すべてを木材にすることはコストが重くなり、単発で終わってしまう可能性がある」と判断。木材を主としつつ、鉄骨も組み込む。
 テナントビルを木造ビルにすることによるメリットはどうか。環境面では大きな効果が期待できそうだ。常務執行役員開発推進部長の浦谷健史氏は「テナントリーシングや集客面でも大きな効果を望める」とし、「木材を使用することで、従来の鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べて内観はスケルトンでも意匠性に優れたものとなります。テナントは内装工事費用を抑制することができるのでは」と言う。加えて「木材を利用することでリラックス効果など健康面での効果も見込めます」と指摘する。話題性も大きく、集客効果も織り込む。
 同社では今後も継続的に木造建築物の開発を推進していく予定だ。
 「木造建築物の推進は環境面のほかにも地方創生や林業支援など供給サイドのニーズがありました。一方で需要サイドをみると、これまで木材を多く使っていたのは戸建てとなりますが、人口減少や消費者ニーズの変化で使用量には限界があります。高層建築物や大規模建築物などでの利用は需要の掘り起こしの寄与につながると考えています。当社開発物件でも今後、積極的な活用を進めていく予定で、老人ホーム等の新規開発案件での利用も検討しています」(浦谷氏)
 なお「(仮称)銀座8丁目計画」は同社が展開する商業ビルシリーズ「HULIC&New」となる予定だ。

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