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鹿島建設が建設中のビル 溶接ロボットを本格適用

2019.02.18 18:02

 鹿島建設(東京都港区)は、「鹿島スマート生産ビジョン」の実現に向けて集中的な実証を進めている「(仮称)鹿島伏見ビル」新築工事において、柱の全周溶接と梁の上向溶接に、汎用可搬型溶接ロボットを本格的に適用した。グループ会社である鹿島クレス(東京都港区)が、溶接ロボット10台と直傭オペレータ8名により、柱10箇所、梁585カ所の溶接作業を安全に、かつ高品質に完了した。  鉄骨造建物の骨組みとなる柱や梁の接合には溶接を用いることが一般的。大地震にも耐えうる高い品質を維持するために溶接技能者には高度な技量が求められる一方、将来予想される人手不足と高齢化により、溶接技能者の確保と作業の効率化・省力化は喫緊の課題となっている。
 先般策定した「鹿島スマート生産ビジョン」では、「作業の半分はロボットと」をコアコンセプトの一つに位置づけ、繰り返しの作業や人では苦渋を伴う作業、自動化により効率や品質にメリットが得られる作業などを対象に、自動化・ロボット化を推進している。
 現場溶接の分野においては、溶接作業そのものが繰り返し作業であること、形状・肉厚の大きい柱の横向溶接や梁下フランジの上向溶接は人にとって負担の大きい作業であることから、コアコンセプトに基づき、溶接ロボットを用いた作業を目指している。
 同工事の現場溶接において、柱・柱接合部の全周溶接と、柱・梁仕口部の下フランジ溶接についてはその全箇所を溶接ロボットにより施工した。
 従来、下フランジの人による溶接は上方からの下向溶接であったが、梁のウェブなどの支障物があるために、作業に時間がかかっていた。今回、溶接ロボットを活用することで、人ではほぼ不可能であった下方からの上向溶接で作業が行え、溶接の品質や性能の向上、鉄骨建方工程の短縮、溶接作業量の平準化、作業員の安全性の向上といったメリットがあった。
 溶接ロボットを活用した高品質な溶接を実現するためには、柱の全周溶接における四隅(曲線部)の溶接処理や、梁の上向溶接における溶接金属の垂れといった課題を克服するとともに、鉄骨製品の製作精度や、許容範囲の建方誤差にも適切に対処する必要がある。こうした課題に対しては単に技術開発だけでなく、溶接ロボットのオペレータの育成・訓練も含めた、トータルな施工システムを構築することで対応する。
 また、今回の現場本格適用に際しては、溶接ロボットによる作業を含む全ての溶接作業を鹿島クレスが担当した。鹿島クレスでは2016年4月に溶接事業部を発足させ、溶接ロボット運用の要となるオペレータの訓練と育成を進めている。
 今後、溶接技能者の確保が難しくなることが予想される中、鹿島グループの連携によって確実な人材の確保と、溶接ロボット技術や施工ノウハウの共有による高品質な溶接を可能にする。またこうして得られた知見の蓄積により、さらなる技術の進化へとつなげる。
 これからも鹿島グループが一丸となり、建築生産プロセスの変革を目指す「鹿島スマート生産ビジョン」の実現に向け、鉄骨溶接ロボットの展開を積極的に推進するとしている。

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