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2018.07.23 12:07

大手ゼネコン初!単独で私募リート運用開始 鹿島建設が踏み切った理由

 ゼネコン大手の鹿島建設(東京都港区)が私募リートを立ち上げた。鹿島プライベートリート投資法人(東京都千代田区)。運用会社は鹿島建設100%子会社である鹿島不動産投資顧問(同)。大手ゼネコン初の単独による私募リート組成ということもあり、注目を集めている。今回なぜ私募リートの組成に踏み切ったのか、まずは鹿島建設サイドに尋ねてみた。

資産規模約250億円でスタート 5年後の1000億円規模目指す
「我々は、総合建設業を主力にビジネスを行っていますが、第二の収益柱として開発事業を育ててきました。不動産開発を40年ほど行ってきたこともあり、それを充実していこうという計画の一環です。これまでも我々はフィービジネスを行ってきましたが、不動産証券化事業においては単発で終わることが多く、永続性を持っていこうと考えました。そうした中で、私募リートを立ち上げるのも一つの方法ではないかと思い、今回スタートさせたのです」と語るのは、鹿島建設の開発事業本部、飯田啓介氏。
 上場(Jリート)か私募リートか。この選択肢については、同社がBtoBの企業ということが決め手となった。Jリートで個人を対象にビジネスを行うより、私募リートにして機関投資家らと対話しながら行う方が「グループとして馴染みやすい」という判断だ。一方、ゼネコン他社について単独でのリート組成は行われていないものの他社と組み、マイナーシェアで上場リート及び私募リートの組成を行っているというのが現況だ。
 「我々は、鹿島不動産投資顧問のスポンサーです。他のリートも含め、鹿島不動産投資顧問に物件を提供していくお手伝いをするということになります。マイナーで行うよりはメジャーで行うことが、我々にとってもいいことだと思います」(飯田氏)
 一方、鹿島不動産投資顧問は、具体的にどのような形で私募リートの運用を進めていくのだろうか。
 「オフィス物件をメインに商業や住宅、ホテルなどを投資対象とする総合型私募リートで、利回りは4%程度を目標にしています。約250億円の規模で始め、5年後には1000億円まで拡大したい。鹿島建設サイドと連携し、現所有物件やこれからの開発案件をリートで買っていきたい」と語る、鹿島不動産投資顧問社長の山本俊行氏。
 対象は、主として首都圏や政令指定都市の物件。ただ鹿島建設の支店もチャンネルとして生かし、購入対象を拡大していきたいと話す。また主たる物件をオフィスに絞っているのは、鹿島建設の強みが出せるフィールドであるからだという。
 資産規模1000億円については、私募リートでは中堅規模だ。市場は非常に活況で、物件が得難い状況にある。私募リート市場も、次第に大きくなっていくであろう。さらに私募リートが鹿島グループに与える影響についてたずねると、「私募リートを運用していく中で、さまざまなフィーをいただきます。弊社にとってのフィービジネスは、業績の数字上にも影響があるのです。またテナントリーシングのように物件を複数もっていることで、お客様の選択肢も広がるといった無形のビジネスチャンスが増えるかもしれません。我々にとっても、期待しているところです」(飯田氏)。
 最後に今後の展望についてたずねると、「我々を信じ、投資した30数社がいらっしゃいます。確実に運営して利回りを確保し、着実に資産規模を大きくし、リスクを分散していきたいです。大事に大事に育てていくことを、目標にしたいと思います」と、鹿島不動産投資顧問取締役の阪西淳史氏は語った。
 「市況がアップダウンしても、我々のリートは確実なリターンを目指していきます。それが、我々に課せられた義務なのでしょう。250億のままでは分散できませんし、スケールメリットが出ません。まずは1000億円を達成したいです。その中で鹿島のポートフォリオが成り立っていけばいい、と思っています」(山本氏)

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