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エストプロデュース 新時代のペット不動産

2018.01.22 10:16

 動物の愛好家は増える一方で、飼育することは躊躇う向きも多き。そのなかで不動産仲介業を展開するエストプロデュース(横浜市中区)は今後、ペット住宅の展開を進めていくため、今月末頃にモデルルームをオープンする予定となっている。飼い主の負担の減少や万が一の時のためのペットの「その後」を守るプランの活用など、これまでのペット住宅から一歩も二歩も抜け出した。

 「飼い猫の数が飼い犬の数を上回った」。こんなニュースが昨年末流れた。ペットフード協会(東京都千代田区)が、年に1回、発表している「全国犬猫飼育調査」の結果である。この統計ではペットを飼わない理由も調査。そこでは「最後まで世話をする自信がない」や「別れがつらい」といった声が聞かれたという。
 「家族の一員」だからこそ、最期まで世話をしたいと思うのが飼い主の心情。その思いを不動産の側からサポートしようという動きがある。
 エストプロデュース(横浜市中区)では今月末、「根岸」駅近くでペット住宅のモデルルームをオープンする。
 ここはもともと代表取締役の菊池信一氏の自宅だったが、ペット住宅展開のプロジェクトのために転居。約1000万円の費用をかけてリノベーションを行った。ペットのための建築に精通している専門家をいれて、犬でも滑らない床や天井にキャットウォークを設置して家猫でも運動不足にならないようにしている。まさにペットと愛好家のためのつくりだ。
 なぜ菊池氏はペット住宅に着目したのか。答えは「ペットが好きだからです」の一言。現在もミニチュアダックスフンドを2頭飼う。「個人的には犬派なんですよ」。ペット好きが高じてのペット住宅。その原点は少年期のある体験だった。
 「子どもの頃、飼っていた犬をフィラリアで亡くした経験があります。ただ何もすることができずに、弱っていくペットの姿を見ていると『なんで何もできないのだろう』という思いが込み上げてきました。それは今でも残っています」(菊池氏)
 ペットと飼い主が快適に生活をし、「なんであの時……」という後悔をひとつでも減らしたい。そのような思いが込められている。
 菊池氏がペット住宅販売のメーンターゲットに据えるのは高齢のペット愛好家だ。先の調査でも70代は犬の飼育数は減っていない。その理由は退職して時間と資金的余裕もあることや子どもが自立したことによって新たな「子ども」を迎え入れたい、という心情的な面もある。また「運動不足解消」という実利的なところもあるようだ。
 が高齢のペット愛好家にとって問題となってくるのは、飼い主がペットより先に亡くなりペットが路頭に迷う可能性があることだ。菊池氏は「飼い主の親族や子どもが引き継げればいいが、それぞれの家庭事情から厳しいケースもある。最悪、保健所に、ということもある」と指摘する。
 そこで同社が展開するペット住宅では様々なアフターサービスを計画している。そのなかでこの高齢者特有の問題を解決するサービスのひとつとして考えられているのが「ペット信託」だ。動物愛護の団体などが展開しているが、飼い主の死後もスタッフや獣医が飼育していくのだという。
 「それ以外にもたとえば、旅行中にペットを預けられるペットホテルとの連携や、ドッグランとの提携なども既に進んでいます。当社はペットの散歩代行やペット介護を行う『CARE PETS』のフランチャイズ店でもあります。これらのサービスを連携させていきながら、快適なペットとの生活を実現させたい」(菊池氏)
 ペット住宅の展開とともに、ペット愛好家同士のコミュニティの形成なども行う方針だ。
 ペットと愛好家のための住宅。その背景には高齢化社会が抱える課題も見え隠れする。住宅の役割は「住む人が快適に生活できること」。「ペットも家族の一員」という認識が広まった現在、ペットのための住宅づくりは隠れたニーズではないだろうか。

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