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働き方改革発信オフィス Trist 誰もが働ける場を創出 地域活性化の足掛けにも

2017.09.11 13:10

 政府の肝いりで進められている「働き方改革」。その背景には人口減少が続くなかで、子育てや介護などをしながら働ける環境の構築が日本経済の持続的発展のため必要という事情がある。そのなかで千葉県の流山では画期的な取り組みが生まれている。誰もが働くことができ、かつ地域の活力を生み出す、その場所とは。

 千葉県流山市のつくばエクスプレス「南流山」駅から徒歩5分ほどの建物に入居するシェアサテライトオフィス「Trist」。昨年開設されたスペースで1年半の運営で稼働率は150%超。育児や介護などで一旦は離職したものの、「これまで築いたキャリアを生かしたい。でも地域コミュニティも大切にしたい」と希望する人たちが毎日、この場所で働いている。
 「子育てをするには地域コミュニティが必須です。しかし、都内に働きに行っていては地域の方と繋がれる時間も機会も少ないのです。働きながら地域コミュニティをつくることはできないのか、そのように考えたのが開設のきっかけです」と話すのは代表の尾崎えり子氏だ。  南流山から「東京」駅までは約40分程度。「このエリアに住んでいる人たちは都内で働いているという人も多い」という。「しかし、子育てや介護などをしながらの通勤は厳しく、離職するケースは少なくありません。地元にはキャリアを生かせる仕事があまりなく、再就職をあきらめる方も多いのです」と尾崎氏は指摘する。その裏側にはこれまで築いてきたキャリアへの未練があることも想像に難くない。
 「現代は『ノマドワーカー』という用語もあるように、パソコンが1台あればどこでも仕事ができる環境です。また企業にとっても人手不足の昨今、子育てや介護で離職してもらいたくない、というのが本音です。地域コミュニティを醸成するイベントやテレワークのスキルをはじめとして業務管理のスキルなどを学んでもらう教育プログラムを充実させることで地域の人材を魅人的にし、雇用を生み出し、企業にサテライトオフィスに入居してもらっています」(尾崎氏)
 この仕組みは地域の人たちが気軽に参加できるようにしているため、コミュニティとして機能しているほか、地域の雇用創出にも貢献しているのだ。
 現在、尾崎氏は「Trist」の幅広い展開を目指す。企業や参加者に大きな負担を強いれば地域の人が学ぶハードルが高くなり、都内企業の入居ハードルも上がる。誰にも利用されない「箱」になる結果を招きかねない。地方公共団体との協力や不動産オーナーの理解は不可欠だ。
 働き方改革が叫ばれる昨今、育児や介護といったライフイベントに遭遇しても働き続けられる体制を整えていくことは時流に沿った取り組みといえる。オーナーにとっても地域活性化を図る点で、このような動きがあることを知っておく必要がある。

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