週刊ビル経営・今週の注目記事

毎週月曜日更新

大成 日本とベトナムをWIN-WINの関係に

2017.04.03 14:05

ビルメンテナンス会社の挑戦に注目集まる
 ビルメンテナンス業界は2つの壁に当たっている。就労人口が減る中での人材不足と国内でのビルメン需要が限界に達していることだ。
 そのなかで画期的な取り組みを行っているのが大成(名古屋市中区)だ。同社では2015年5月14日に2019度までの5カ年を対象とした「第6次中期経営計画」を策定。経営戦略のひとつとして「グローバル企業への挑戦(国内で培った強みを活かしたアジアでの事業展開)」を掲げている。この戦略に沿って2015年10月2日付けで香港のビルメンテナンス会社であるRazor Glory Building Maintenance(RG社)の株式を取得し完全子会社化。そして昨年の12月28日にはベトナムのビルメンテナンス会社Care Vietnam Joint Stock Company(CV社)の株式70%の取得に合意し、3月にはベトナム政府より許可が下り、正式譲受となった。東南アジアを中心として体制を強化していくことで、新たな成長戦略を描こうとしている。
 取締役経営企画本部本部長の加藤憲博氏は現在の国内市況について「人口減少となるなかで国内の需要はすでに天井に達しつつあります。加えて人手不足の環境化で就労者も減少傾向の中、国内だけで今後の経営を考えていくことは難しい」と分析して、次のように続けた。
 「そのなかで最初に香港に進出したのは海外戦略の基盤づくりでした。香港は日本と似ていて発展した経済を築いていて、高層ビルがほとんどとなっています。ここをきっかけとして東南アジアへの進出を図り今般、ベトナムへの進出を果たしました」
 ベトナムなど成長性著しい国々への進出を狙う国内ビルメンテナンス会社は多い。特に東南アジア諸国ではビルメンテナンス技術が発展途上であることも多く、日本の高い技術が求められる場面は多い。一方、日本のビルメンテナンス業界としても今後の国内市場の厳しさが増す中、新市場として積極的な海外への展開の動きが見られる。が、加藤氏は「当社のベトナム進出はそれだけではなく、地元のビルメンテナンスサービスの向上にも貢献していきたいと考えています」と話す。
 同社では昨年よりベトナムからの技能実習生を受け入れている。一般的にはビルメンテナンス会社より受け入れ機関となる国内の協同組合に実習生の受入れを要望(人数・性別・年齢・学齢等)、その後、協同組合と繋がりがあるベトナムの送り出し機関に要望が送達され、ベトナム国内で実習生の選定を行う。が、同社では数多くベトナム国内の送り出し機関と直接コネクションを持ち、実習生の選定に同社としても積極的に携わっている。
 「その理由のひとつは当社ではビルメンテナンスをサービス業と考えているからです。私たちが重視しているのは文化などが全く異なるなかで、十分に順応していくことができるかです。そこで実際に当社社員が現地で面接を2回、最終的に決まった人に関してはその家族とも面談を行っています」(加藤氏)
 最終決定から約6カ月~7カ月間はビザの取得に時間がかかるために、この間に日本語教育などを行うことになる。同社がそれ以上に力をかけているのがマナー基礎の習得。「当社で実際に教科書を制作し、日本のマナーや常識、お客様への応対の仕方などを重点的に当社社員を1カ月半派遣し、現地で教育している」と話す加藤氏。その成果もあって、すでに国内で働き始めているベトナム人技能実習生に対して、クライアントからの評判は高いという。
 実習生が日本で働ける期間は3年間。3年後の帰国してからの受け皿確保の意味合いもあり、今回のCV社との提携につながったという。加藤氏は「日本の技術を習得したベトナムの方が現地でのビルメンテナンス技術の向上をけん引していってほしい」と言う。
 市場・人材双方ともに海外への注目が集まっているが、このようなスキームを有している事業者は大成以外には皆無。同業他社からも注目されるモデルとなっていて、加藤氏によれば「既に、コンサルティング業務として数社提供を行っている」とのこと。
 同社の目線は海外展開を通して市場の取り込みだけでなく、人材教育を通じて日本とベトナムのWIN―WINの関係を構築していくことに向いているようだ。

PAGE TOPへ