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<インバウンド時代の不動産戦略>サムライズ 「ヤミ民泊」に解決の糸口を与えるゲストハウスが25日にオープン

2016.11.07 11:42

「SAMURAIS HOSTEL ikebukuro」は「ノアの方舟」になるか
 今月25日に「池袋」駅から徒歩10分ほどの場所にゲストハウス「SAMURAIS HOSTEL ikebukuro」がオープンする。サムライズ(東京都渋谷区)がもともと寄宿舎であった建物を賃借し、旅館業法上の簡易宿所に用途変更し運営にあたる。今後展開していくゲストハウス事業の第一弾だ。代表取締役の藤井善英氏は「3年で30棟30コンセプトのゲストハウスの開業」を目標に掲げる。 訪日観光客数の右肩上がりを背景とした施策ともいえるが最大の狙いは「ヤミ民泊の課題を解決すること」だ。
 都市部を中心に相次いでホテル建設が進められているが、増加一途の需要には到底追いつかない。国際観光振興機構(東京都千代田区、通称・日本政府観光局)によると先月30日までに平成28年の訪日観光客数が2000万人を突破したと発表。そうした流れが民泊の増長を押し進めてきた。「民泊物件紹介」を専門に行うビジネスも盛んになっている。彼らは「事前にオーナーから許可を得ることで無断転貸などのトラブルも防げる」と言ってのける。
 対して藤井社長は民泊の最大の問題点として「旅館業法に照らせば、特区以外での民泊営業が違法なのは明らか」とし、こう語る。
 「民泊ビジネスを行っている事業者には、不動産に関する知識に乏しい人が多く見受けられます。オーナー側にとり『ヤミ』状態での貸し出しは、旅館業法に定める宿泊施設としての基準を満たしていないためトラブルや予期せぬ事故などリスクが大きすぎます。不動産業者として、現状の『ヤミ民泊』を推進していくことに疑問・危険を禁じ得ません」
 そこで着手したのが簡易宿所認可を取得したゲストハウスの展開という次第。
 第1号物件となった「SAMURAIS HOSTEL ikebukuro」のコンセプトは、「サムライ・ニンジャ」。城をイメージした内装となっているのが特長で、「宿泊者が身につけることができる鎧もあります」(藤井氏)。訪日外国人を中心に日本での体験を楽しんでもらおうという工夫を感じる。内装には女子美術大学(東京都杉並区)の学生も協力して壁画や空間デザインを担当した。現役美大生が描く「サムライ・ニンジャ」の世界はここだけでしか見ることのできない一品といえる。
 「民泊はホストとゲストが一緒に生活を楽しむことで、リアルな日本(の生活)を実体験ができる点が最大のポイントのはずです。しかし現状の日本の民泊は、そうした原点を満たしていません。当社が展開していくコンセプトのあるゲストハウスでは外国人・日本人双方の宿泊者に楽しんでもらえるような交流型の宿泊施設を目指し、ホテルや民泊との差別化を図っていきたいと思います」(藤井氏)
 ゲストハウス開設・運営を介し、簡易宿所の認可取得やそれを可能にするための建築設備のアドバイスなどの支援も行っていくという。すでにマンションなどの不動産を保有するオーナーからの問い合わせもあるという。
 「ヤミ」の二文字の前に「民泊」に踏み出すことをためらっていたオーナーも多いと聞く。法律順守でコンセプトを持ったゲストハウスが、求められる民泊の「ノアの方舟」になるか注目したい。

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