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東京都 耐震化推進条例違反物件59棟をHP上で公開 事例を無視するオーナーの言い分とは

2015.07.06 10:23

 東京都は今年2月6日、続いて5月29日、いわゆる耐震化推進条例に基づき耐震診断が義務づけられているにもかかわらず耐震診断を行う「意思」を示していない建築物をホームページ上に公開した。東京都の狙いはさておき、まずは耐震化推進条例についておさらいをしたい。
 東京都では平成24年4月「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」、いわゆる耐震化推進条例を施行した。同条例は東京都が定める特定緊急輸送道路沿道の対象建築物に対して耐震診断の義務を課し、耐震化につなげて建物倒壊による幹線道路の機能不全を防ごうというのが狙い。東京都によると、耐震診断の対象物件は約5000棟。耐震診断に対して過去に例のないほど手厚い助成制度を設けることで、耐震診断を促進している。耐震診断に要した費用が原則全額助成される。つまり無料で耐震診断を受けることが可能というわけだ。にもかかわらず条例開始から3年が経過した現在に至るまで、いまだに「耐震診断」を実施していない建築物が存在している。東京都都市整備局の耐震化推進担当部長の飯泉洋氏によると「条例では平成27年3月末が耐震診断の実施期限になっており、耐震診断をしない場合は建物名称や住所などを公表することになっている」と説明する。東京都の調査では現在まで耐震診断を実施しているのは対象建築物約5000棟のうち約9割。残り1割の約500棟が耐震診断を実施していない。 
 東京都が5月29日までに公表した建築物の合計は59棟。500棟との差異は、各区市町村により耐震診断実施の期限が若干異なるため段階的に公表しているためだ。また東京都は公表する前に必ず公表する旨を通告しており、『公表されるなら診断する』との意思を示した場合は公表を控える方針を取っている。これまでの2回にわたる公表に際して、当初公表の対象となった件数は86棟だったが、東京都の公表直前の説得が奏功し、約3割の27棟は診断する意思を示したため、公表棟数は残りの59棟になった。ちなみに東京都は第3回目の公表を予定しているが、期日は未定。
 では、実際に耐震診断の意思を示さないオーナーとはどのような人物なのか。飯泉氏は「最も多いのは事前通告時にも意思表示ができないケース。例えば大規模マンションの管理組合が挙げられる」と指摘し、「区分所有者の間で話し合いがまとまらないケースが大方で、東京都としてもこれ以上アドバイスやサポートのしようがないのが現状」と困り果てた様相をみせる。また、公表されても問題ないと開き直るオーナーも少なからず存在するという。

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